IF第58話 二人の王子
どうしても言わずにはいられない相手だからだ。
「ユーム王子、お前は彼女に一体何をしてきた? 婚約者なのに関わりたがらないばかりか何も知らないくせに貶め続けた挙げ句に冤罪で婚約破棄。そして今度は新しい婚約者がいるのにシシラに会いに来るとは厚顔無恥にもほどがある」
「だ、黙れ! 僕はもう……」
「後がない。だから恥を知ったうえでシシラに縋るか。恥を通り越して見苦しいにもほどがある。あの聖女といい勝負――いや、あれより酷いかもな」
「な、なんだと!?」
あの聖女とはアビスのことだ。あんな女よりも酷いと言われてユームは屈辱すぎて羞恥と怒りで頭がおかしくなりそうだった。だが、このままでは自分は破滅することも頭の片隅に残っていたため、どうにか屈辱を絶えてガミオに懇願した。
「わ、わ、分かってるんだよそんなことは! 僕はアビスに騙されてシシラを蔑ろにしてしまったってことは! 僕も悪いがもともとはアビスのせいなんだ! シシラに関心を持てなかったのだってアビスの、」
「それ以前からお前が問題児だったとも聞いてるぞ? シシラに何度も正しい注意をされても聞く耳を持っていなかったじゃないか。聖女アビスが学園に入学する以前から」
「あああああああっ!」
ガミオに何度も情けない事実を言われて、ユームは遂に怒り狂った。思わずガミオに掴みかかろうとしたが、寸前に避けられてしまう。その勢いで転んで床に顔をぶつけてしまう始末。そんなユームを助け起こすものは誰もいない。
「うっ、うううう……どうして、こんなことに……!」
「全部自業自得だろう。お前がシシラと向き合っていれば今の状況にはならなかった。それだけだ。お前が今すべきことはこの国のお前に対する処分を受け入れるだけ」
「シシラがいれば……!」
「シシラに縋っても無駄だ。彼女は我が国の聖女となった。この国での発言力はもう無い。そんなことも分からないのか?」
「…………!?」
聖女とはいえシシラはバッファロード王国の人間となった。ジュンメウキ王国側からすればそれだけで他国の人間というわけだ。そんな者がジュンメウキ王国の王家の政に口を挟む資格はない。ただ、そんなことすらユームはガミオに言われるまで分かっていなかった。
「とっとと失せろ。もう二度とシシラに関わるな」
「ち、畜生! 畜生ぉぉぉぉぉ!」
ユームは憎悪のこもった目でガミオを睨みつけた後、とても王子とは思えない足取りでその場を去っていった。その先でユームを咎めるような声も聞こえてきたため、どうやら強行してここまで来たらしい。
「……部屋に軟禁されてもここまで来るとは、この王宮は見張りの兵士も用意できないほど人でが足りていないのか」
「悪魔騒ぎで負傷者が大勢いますから仕方ないのでしょう」
ユームの行動にガミオとギューキは呆れてしまう。
しかし、この後のユームが取り返しのつかない行動に出ることまでは誰も予想しなかった。ユームが最後の戦いの火種を起こしてしまうという愚かすぎる行動に出るだなんて。




