IF第51話 王子の違い
ジュンメウキ王国王宮の医務室に連れて行かれたシシラはベッドに寝かせられた後すぐに治療されるはずだったが、回復魔法を行える者が側にいなかった。医師たちの殆どが悪魔たちとの戦いで負傷した兵士たちの治療に向かっていたからだ。当然回復ポーションもほとんど使われてしまっていた。
そんなことは分かって入るガミオだったが、それでもどうにかしようともがいていた。
「回復魔法を使える者はいないのか!? いなければ俺が探す!」
「殿下! 殿下も休んでください! 貴方も経って歩けるのがやっとでしょう!」
「シシラは意識を失うまで疲弊しているんだぞ! 彼女が死んだら俺は……!」
ギューキに宥められるもガミオはそこで蹲ってしまう。彼もまた戦いで体力を疲弊しきっていた。倒れそうになるのも仕方がない。
「くそ……こんなところで彼女を助けられないのか……!」
意識を失ったシシラの顔色は悪い。相当の力を失った証だ。彼女の横で力がつきかけている我が身の無力さを噛みしめるガミオだったが、医務室から二人の少年が駆け込んできたことで状況は変わる。
「ガミオ殿下! シシラ様は僕達が助けます! 僕は回復魔法ができるんです!」
「俺も回復ポーションを持ってきました! 付け焼き刃にしかなりませんが無いよりマシです!」
回復魔法を使えると言ったのはフォティン・ローチ、回復ポーションを両手に持てるだけ持っているのはタイーガ・オルフノク。この二人は学園でユーム・ジュンメウキの側近をしていた者たちだった。ユームよりもずっとまともな人格だったのをガミオは覚えている。
「君たちは……頼む! シシラを助けてくれ!」
「「はいっ!」」
フォティンはシシラに回復魔法を掛けて、タイーガは回復ポーションをシシラに無理やり飲ませた。彼らの努力が実ったのか、シシラの意識は戻らないままだが顔色はだいぶ良くなった。
「シシラ……なんとか助かったのか?」
「シシラ様のお命はおそらく大丈夫でしょう。後は数日くらいは休んでいれば自然に起きると思います」
「そうか……よかった」
ガミオはシシラが助かると聞いて心底安堵した。そして、床に腰を下ろして自らも少し休むことにした。そんなガミオにタイーガは最後のポーションを差し出した。
「ガミオ殿下、どうぞ使ってください。隣国の王子でありながら我が国を救ってくださった貴方には感謝してもしきれません」
「いいや、それはギューキに飲ませてやってくれ。俺とシシラを支えるために俺よりも苦労しているのは間違いないからな」
「え? 殿下!?」
ギューキは驚いた。確かに彼も疲弊しているが、ガミオが自らを差し置いて側近を優先して回復するように言うのだ。それにどう見てもガミオの方が疲弊しているのに。
「驚くなギューキ。側近のお前の体力が万全ならいつでも俺とシシラを守れるだろう。俺は寝るからしっかり回復してくれ」
ガミオはそう言うと床で横になってしまった。一国の王子とは思えない言動と行為に医務室にいる誰もが驚いた。
「……ユーム王子とは大違いですね。自分よりもシシラ様や側近を思いやるなんて」
「しかも、非常事態とは言え王子が堂々と床で寝る。うちの国の王子に見習わせたいもんだ」
ユームの側近だった二人はこの場にいないユーム対して苛立つ。何故なら、ユームは王子でありながら戦わずに王宮から逃げ出していたからだ。




