第40話 戦うために
魔物化したガニバケの襲撃から三日後、シシラ達は改めてジュンメウキ王国に向かう準備を整えていた。
「シシラ。君の意思を尊重するが、本当にいいのか? 元学園長ガニバケが襲撃してからまだ三日しか立っていないんだぞ?」
人間に戻ったガニバケはバッファロード王国の騎士団が預かって厳しく問い詰めていた。だが、肝心のガニバケは魔物化した時のことを覚えていなかった。そもそも、シシラに危害を加えようとしたこともバッファロード王国にいたのかも分からないという。ただ、シシラに対する悪意は否定しなかったため、未だに取調べされている最中なのだ。
「ガニバケはシシラ様に対する悪意を隠そうともしていません。あれで学園長だったなんて信じられませんよ」
「我々が向かうジュンメウキ王国からあのような輩が現れる……シシラ、やはり君がジュンメウキ王国に向かうのは危険なのではないか? もう少し様子を見てからでも遅くはないと思うが……」
(父上が連絡用魔道具でジュンメウキ王国側に問い合わせてもガニバケのことは何も知らないというばかりだったという。嫌な予感しかしない。シシラを行かせるのは危険すぎる)
ガミオとギューキはシシラを心配してジュンメウキ王国に向かうのをもう少し待つように口を揃える。心の底では、あの国に行かないことを望んでいた。しかし、シシラは彼らとは違った考え方をしていた。
「……私は行きます。むしろ行かねばなりません」
「シシラ!?」
「ガニバケ氏は善良とは言い難い人でしたが魔物になるような人でもありません。何か別の何かが意図的に……それも私に向けて悪意を持ってなにかしたのは明らかです」
「それならば、ジュンメウキ王国に行ったら危険そのものではないか!」
「学園長――ガニバケさんはこの国まで来たんですよ? つまりどこにいても危険が迫りくるだけです。それならばいっそのこと元凶と戦って安全安心を掴んだほうが得策ではないかと考えたのです」
「「!!」」
つまりシシラの考えは、ガニバケを魔物化してシシラを襲撃させた元凶を見つけ出して危険をなくしてしまおうというものだ。バッファロード王国でシシラを守り続けようというガミオ達の考えとは全く逆だ。
「おそらく敵はジュンメウキ王国にいる。御理解いただけましたか?」
「……そうか、分かった。それならば俺達も覚悟を決めよう。君を守るために」
「私はガミオ殿下についていくだけです。無論、他の皆も同じです」
シシラとガミオ、そしてギューキ達も元凶と戦うことを決意した。
「……シシラ、君はとても強くなったな。あの国にいた頃よりも心が強くなったと思うよ」
「私の心が強くなれたのはガミオ殿下――シュバリア様のおかげですわ」
「俺のおかげ?」
「あの頃の私に寄り添って味方してくれた貴方がいてくれなければ、学園でアビスに反旗を翻すような真似なんてできませんでした。あの時の貴方が声を上げてくれたから……」
シシラの脳裏に浮かぶのは、あの体育館でガミオが学園長とユーム王子に反論のために声を上げたシュバリアの姿があった。そしてガミオも気づく。思えばシシラが誰のために体育館で魔法を使ったのかを。
「お、俺はきっかけに過ぎないよ」
「それでも、そのきっかけが私を強くしてくれたのです」
「……っ」
ガミオは照れくさくなって顔を赤らめる。そんな彼の顔をシシラは嬉しそうに見つめる。そんな二人の様子をギューキ達は出発の時間まで微笑ましく見つめるのであった。




