第39話 VS元学園長(変異体)
ガニバケだった怪物との戦いが始まった。ガミオの指示で、騎士たちは四本の巨大なハサミによる攻撃を剣と盾で対応し、魔法使いが魔法で攻撃するという戦法になった。勿論、ガミオとシシラも戦いに参加する。
「援護します! 【ライトバフ】!」
「【ライトニングソード】!」
「【メテオアロー】!」
ガミオ達が剣を振るい魔法を放ち、シシラが支援魔法でガミオたちを強化する。シシラの支援魔法のお陰で怪物は前進するどころか後退してしまう。だが、怪物は劣勢になった途端に戦法を変えた。
「この感じ、まさか! 皆さん、下がってくだ、」
「ア……【アイ、アン……バレット】……」
「「「「「っっ!!??」」」」」
怪物のハサミから鉄の塊が飛び出してきたのだ。学園長だった頃のガニバケの魔法攻撃だ。誰もが予想しなかった攻撃のせいで新たに負傷者が出てしまった。
「う、うああああ!!」
「くそっ! ゲホゲホ!」
「シシラ! 負傷者の治療を優先してくれ!」
「はい! 【ライトヒール】!」
シシラが回復に専念してガミオ達の戦力が半減してしまった。その機を逃さないとばかりに怪物が再び魔法を放とうとしていた。
「【アイ、アン……バレット】」
「いけない! 【ライトウォール】!」
今度はシシラの光魔法の障壁で怪物の魔法攻撃を防いだ。ただ、光の障壁は攻撃を防いだものの大きくひび割れてしまっていた。
「シシラの魔法の壁が……なんて化物だ!」
「殿下! ここは負傷者を置いて一度逃げるというのは、」
「ならん! 仲間を置いていけるわけがあるか! もうすぐ王宮からの援軍が来る。それまで持ちこたえるんだ!」
「しかし、我々がいくら攻撃しても目立ったダメージは見えませんよ!」
ギューキの言う通り、怪物は硬い甲羅に覆われていることもあって剣と魔法による攻撃を受けているのにびくともしない様子だった。そのことはガミオも分かっているのだが、立って歩けないほどの負傷者もいるため引くわけには行かない。しかし、ガミオは王族でありシシラは聖女、重要な立場にいる人物が犠牲になるわけにもいかないのも頭では分かっているのだ。
(シシラを失うくらいなら……だが、ともに戦う仲間を見捨てるなんて……)
「ガミオ殿下、私が前に出て戦います!」
「シシラ!? 何を言うんだ!」
「学園長があんな姿になったのは先程感じ取った異質な魔力が原因だと思います。その魔力を消し去れば元の姿に戻せるかもしれません!」
「!」
シシラの発言でガミオは思い出した。シシラには魔法を打ち消す事ができる魔法が使える。それならば魔力を消すことも造作もないはずだ。
「ただ、私の魔法をぶつけるためには懐にまで近づく必要があります。そこで、皆さんに援護していただきたいのです」
「かなり危険な行為ではないか! 容認できん!」
「ですが、このままでは誰も助かりません!」
確かに今のままでは不利だった。シシラの光の壁は破壊されるのも時間の問題、逃げるにしてもシシラを狙っているなら追いかけてくるだろう。ここで怪物をなんとかしてしまったほうがいい。こんな状況では、シシラの作戦は有効に聞こえてしまうがガミオはシシラを危険に晒したくはなかった。
ただ、シシラの決意は強かった。
「ガミオ殿下、今の私はこの国の聖女です。聖女の使命を果たすためにも戦いたいのです!」
「……分かった、君と一緒に俺も行こう。皆、作戦は分かったな!」
「殿下! シシラ様! 私も一緒に行きます!」
作戦は決まった。その直後、光の壁が砕かれた。怪物が再び迫りくるが、シシラとガミオとギューキの三人が怪物に向かっていく。
「行きましょう!」
「ああ! 皆、援護を頼むぞ!」
「殿下たちは私が守ります!」
作戦通り、三人が怪物の懐に向かい、残った者たちが負傷者の側で魔法による援護をする。怪物も意図に気づいたのか三人を狙おうとするが邪魔が入って上手くいかない。
そして、遂にシシラ達が怪物のすぐ側までたどり着いた。
「【ライトディスペル】!」
「キ、キ、キシャアァアアァアアァアアッ!!??」
シシラの光魔法による強制魔法解除、それを魔力を消すことに特化する形で打ち続けると怪物は苦しみだした。怪物の体を覆う蟹の甲羅が剥がれていき、本体も小さくなっていく。遂には、人間の姿のガニバケに戻った。
「ハァハァ……なんとか上手くいったようですね……」
「ああ……人間の姿のあの男の姿だ……まだ油断はできんが……」
「とりあえず、拘束しましょう……思ったよりも早く援軍が来たようですし……」
ギューキの視線の先には王宮から駆けつけてきた騎士団の姿があった。




