第18話 追放を望む
「お父様――いえ、アリゲイタ公爵。私は妹に、この家に蔑ろにされて都合のいいように利用されてきました。ですが、もうそんな立場はもう辞めさせていただきたいのです。国外に出ますのでどうか追放してください」
「ふざけるな! 我が家に生まれておきながら我が家に尽くさない道を行くなど許さんぞ!」
「そうよ。私もお前は追放されるべきだと思うけど、願って追放されたがるなら話は別よ。アビスに尽くしなさい」
反抗した彼女に怒りを露にする公爵は更に怒気を強める。公爵夫人も追従して顔を険しくする。
そんな公爵夫妻に対して、シシラについてきたシュバリアは呆れと怒りを同時に感じた。
「事前に聞いてはいたが……なんという公爵夫妻だ。実の娘を心配して労るどころか罵倒し蔑むとはな」
「む? なんだ貴様は?」
「俺はシュバリア・カイマ。バッファロード王国の留学生の魔術師。シシラの親友で、彼女を我が国に連れて行こうと思っている」
「何? シシラを?」
留学生がシシラを連れて行くと聞いて公爵は眉間に皺を寄せた顔でシュバリアにも敵意を向ける。仮にも『娘』を連れて行かれるのはいい気がしないのもあるが、出来損ないと言ってもシシラにはまだ利用価値があると思っているのだ。
「嫌だわこの娘。退学しただけでなく男を連れて戻ってくるなんて卑しいこと」
「交友関係も酷いというのか、留学生に色目を使うとは。やはり私自ら厳しく痛い躾が必要のようだな!」
公爵から魔力のオーラが放たれて、その手前で水の槍が形成されていく。公爵がシシラとシュバリアに向けて魔法を放とうとしているのだ。
「水の魔法か」
「【アクアランス】!」
「【ライトニング】!」
「「!?」」
水の槍がシシラとシュバリアに放たれる直前、シュバリアも魔法を使った。シュバリアの魔法は雷そのもの。魔法の雷が一瞬で水の槍を消し飛ばしてしまった。
「わ、私の魔法を一瞬で……雷の属性だとしてもこの威力は……!?」
「俺の魔法はシシラの魔法で強化されてもいる。もともとの実力にシシラの光属性の魔法の力も重なってるおかげで少しの魔力でこの威力なんだ。公爵、貴方の力では俺はどうすることもできないぞ」
「う、嘘よ! そんな娘の強化魔法程度が役立つなんて……!?」
「事実だ。実際に俺は十分の一程度の魔力しか込めていない。残りの九割はシシラのものだ」
「馬鹿な! その娘にそこまでの魔力量が!?」
驚愕する公爵夫妻の顔を見てシュバリアは呆れた。まるでシシラが全く魔法を使えないと思っている様子が信じられないのだ。
「貴方がたは本当にシシラのことを見ていないのだな。光属性の魔法であることもそうだがシシラは魔法の技術も相当なものだというのに」
「そ、そんな馬鹿なことがあるか! アビスに比べればシシラなど……!」
「そうよ! アビスは聖女! シシラなんて比べる価値もないわ!」
「アビスと比べる価値もないなら私を追放してくれればいいでしょう。それだけでいいじゃないですか」
「「っ!?」」
比べる価値もないなら追放すればいい。シシラはもう一度そう口にしたが、公爵は譲らなかった。




