第九箱 黒い機体には艶消しをかけると見栄えがいい
九箱目!完成!今の目標は一か月間!毎日投稿!頑張ります!
ではどうぞ!
違法奴隷商会を壊滅させるために傭兵ギルドと共に敵の本拠地であるザバンジル村へとやって来たクォンタムたちであったが。
そこには復讐に燃えるゾーニ軍五将軍シャバルが待ち構えていた。
彼の左腕は魔装具に飲まれて異形と化し、ドナウの子分であるハンがその餌食となった。
悲しむ暇もなく彼らは戦いへ挑まなければならなかった。
〇
「見ろ!この左腕はここにいる奴らの血肉によって完成した!白い鎧の戦士!貴様を殺す為だけに私はこの力を得たのだ!!」
仲間たちを抱えるクォンタムに容赦なく巨大な左腕が襲い掛かる。
クォンタムは抱えていた仲間たちを自分の後方へ投げ飛ばした。
「ドナウさんたちはまずその妖精さんをシアルさんのところに!!」
助けた妖精の安全確保を促すとレーザーブラスターを左手の怪物へ構えた。
そして襲い来る異形の手を打ち抜いた。、
小指の部分がはじけ飛ぶが構わず突っ込んでくる。
それをかわすと左手は地面に突き刺さったまま動かなくなる。
その隙に距離を取ろうとすると。
『敵性反応、地下カラ接近』
次は地面から何本もの触手が飛び出してきた。
クォンタムはスラスターを使って後ろに飛ぶ。
触手たちは執拗にそれを追う。
「変形自在ってわけかい!」
ブラスターと頭部のマシンバレルで撃ち落とすも次々生えてくる。
スラスターは止まりはしないもののこのままでは追いつかれる。
その時、空中から轟音と共に一直線の光が地面に突き刺さったままの左腕に叩き込まれた。
打ち込まれた部分が爆ぜ、クォンタムを追っていた触手たちは力なくしぼんだ。
この光、メロのレールガンである。
「なるほど本体と別れて行動はできないと。ありがとうメロさん!」
札り腕を吹き飛ばされたシャバルがキッと空を睨む!
「何かいる!あんなところからこれほどの威力の技を?何のスキルだ?」
メロは次にシャバルの本体へ向かってレールガンを連射する。
「ちぃっ!」
シャバルは肉の左腕の肉を固めて肉の盾を作りその狙撃を防ぐがその結果クォンタムまでのリーチが確保できなくなる。
妖精をシアルに預け、戻ってきたドナウがそれを見てウッドペッカーを取り出して肉の盾の裏側からシャバルに向かって引き金を引いた!
「よくもハンをおおお!」
「こちらからもか!」
シャバルは赤雷の剣を右手で抜くと雷撃を盾状に展開し、ウッドペッカーの弾丸を防ぐ。
左右に防御を割かなければならない状況はシャバルの前方をがら空きにした。
クォンタムはシャバルのリーチの外からブラスターを構える。
それを見たシャバルは怒号を上げた。
「なめるなああああああ!!」
先ほど吹き飛ばされた部分から凄まじい速度で左腕が再生された。
その掌にエネルギーの塊のようなものが形成される。
そしてそれを高く掲げ全方位に放った!
全員が回避行動をとる。
『きゃああああ!?』
「メロさん!」
『大丈夫!でもレールガンがやられた!』
「シアルさんのところへ!予備があります!…これで一時的に援護もきえたな。他の皆は?」
ズグゴとチョウは渡しておいたシールドを張ってさっきの攻撃をしのいでいた。
ドナウは…。
「うおらああああ!」
もうすでにレーザークレイモアでシャバルに切りかかっていた!
「あのバカが!ちょっとは相手の出方を伺わんか!!」
クォンタムとズグゴが援護に走るが間に合わない。
クレイモアはシャバルの赤雷の剣で受け止められていた。
「ぐぬぅっ!?なんという威力!赤雷の剣でも受け止めきれん!?」
「だらあぁっ!!」
ドナウは力任せにクレイモアを振りぬいてシャバルを吹き飛ばした!
シャバルはそのまま民家へと突っ込んだ!
その時、赤雷の剣が零れ落ちた。
「今奴は何故左腕を使わなんだ?」
左腕を見てみると先ほどまで閃光を発していた部分がしぼんでいる。
そしてそのまま霧散してしまった。
「なるほどな。あの攻撃はあっちにも相当リスクがあったか」
『解析完了』
「お、やっとか!」
『魔装具:不明、能力:不明、脅威判定:不明。使用者ノ心臓ヲ『コア』トシテイルヨウデス。赤甲冑ガ生命活動ヲ停止シナイ限リ無力化ハ不可能』
「まさに一心同体ってやつだな。…出てきたか」
瓦礫の中からゆっくりと赤甲冑が姿を現した。
先ほどまであれだけ大きかった腕も今では本来の左腕程にしぼんでいた。
「大分スマートになったな。で、どうする?今だに五対一だ。頼みの左腕もそんなに絞んじまったら」
「いや、コレでいいのさ。お前らのおかげで無駄な肉をそぎ落とすことができた」
「なに?」
「こいつの本来の力はな。生物の筋肉と生命エネルギーを取り込んで圧縮し、最強の肉体を作り上げるというものだ。今回は少し多く喰らい過ぎて贅肉が付いてしまったのさ。だがこれで最強の左腕が完成した!!」
高々と天に左腕を掲げて地面へと叩き下ろす!
その一撃は体が宙に浮いたと錯覚させるほどに村全体の地面を陥没させた!!」
「なっ!?」
全員の足が地面から離れて無防備になってしまう!
〇
シャバルが発生させた地響きはシアルの方にまで響いていた
「きゃあ!?」
「シアルちゃん!まだ!?」
「はい!できました!」
「うっし!じゃあ、行ってくるね!」
「まって!」
メロを止めたのは助けた黒い妖精だった。
「何で…あんなのと戦えるの?貴方も私と同じ妖精なのに…」
メロはその言葉に少し頭をひねると。
「あんた、戦いたいの?」
「…」
「兄弟の敵をとりたいんでしょうけどやめときなさい。アンタは今恐怖に支配されてる。ただの足手まといにしかならない」
「そ、それは…」
「恐怖をコントロールする方法は二つ、場数を踏んで慣れることと恐怖を超える何かを自分の心に持つこと。あたしは前者ね。アンタがこの場で恐怖を克服できるとしたら後者になることだけね。あたしからのアドバイスはそれくらいよ」
「恐怖を超える何か…私の中にあるのは…」
メロはフルブースターに再搭乗するとまた空へと飛び立っていった。
「えーと、大丈夫ですよ!クォンタム様たちがきっとお兄さんの敵を討ってくれます!」
彼女の言葉は黒い妖精の少女の耳には入っていなかった。
ただひとりごとを呟いていた。そして…。
「あの。お願いがあります…」
「ひゃい!?」
黒い妖精がシアルにしたお願いとは?
〇
「フハハハハ!この左手でお前の首をもぎ取ってくれるわ!」
空中で無防備なクォンタムへシャバルが突進する!
だがシャバルの右腕に何かが巻き付いた。
ドナウのチェーンである。
「捕まえた!」
「ええい!鬱陶しい!」
シャバルは右腕に巻きつたチェーンを左腕で掴むと力任せに引っ張る!
ドナウの体はそのチェーンに引っ張られクォンタムへと弾き飛ばされた!
「ドナウさん!!」
空中で何とかキャッチするがシャバルの追撃が迫る!
ドナウはクォンタムに支えられながらウッドペッカーをシャバルへ放つ!
それに合わせてクォンタムも頭部マシンガンで牽制を入れるがシャバルの左手はそれらを全て弾き飛ばしてしまう。
「何だあの左手、人の動きじゃねぇぞ!クォンタム投げろ!」
クォンタムは地面に両足がついたと同時にまるで槍投げのようにドナウをシャバルの方へと投げ飛ばした。
ウッドペッカーでけん制を入れつつレーザークレイモアを相手に投げつけた!
「はっ!やけくそのようだな。剣を投げつけるとは!」
先ほどと同じく弾丸を全て弾き飛ばし、投げつけられた剣は軽々とかわす。
空振りかに思えた剣飛ばしだがそれはそれは前に注意を引くためであった。
すでにシャバルの背後には魔戦斧『グラビ』を振りかぶったズグゴがいたのだ!
「潰れろ!!」
魔戦斧グラビは叩きつけた相手の周囲の重力を数倍にする力を持っていた!
左手で受け止められたはいいが体の重さが数倍になり身動きが取れない!?
「やれいドナウ!!」
「あいよ!!」
ドナウは二本のエレメントナイフ抜いてシャバルの首を狙う!!
シャバルの首がナイフの間合いに入る。
「武道・極!!」
シャバルがスキル名を唱えた瞬間にズグゴの体がつぶれたカエルのように地面にたたきつけられた!
「ぐあっ!?」
そしてシャバルは持っていた斧を離して裏拳をドナウの顔面に叩き込んだ!!
「がっ!?」
ドナウは弾き飛ばされ地面に転がる。
「お頭!オヤジぃ!?」
「ど、ドナウ」
ドナウは意識を失ってはいたが体はピクピクと動いていた。まだ息はある。
「ふん、俺に魔装具で挑むなど愚の骨頂。俺の武道・極の前ではどんな武器も思いのままよ」
「ぐ、なんというスキルっ…!」
「お前らは後回しだ。せいぜいそこで地べたに這いつくばっていろ」
その時であった。レールガンの弾が再びシャバルを襲った!
が、それも軽々と左手に受け止められていた…。
「狙撃手。まだ生きていたか。まあいい、どうせそれも俺にはもう効かん」
シャバルはクォンタムの方を向く。
「やっと一対一だ」
「出来れば二度と会いたくはなかったがな」
クォンタムの手にはあるものが握られていた。
それはエネルギーグローブだ。倒れているドナウから拝借したようだ。
凸型エネルギーシールド発生装置だけを剥がしてマニュピレーターにつけなおす。
「なるほど徒手空拳か。まあいい判断だな」
「メロさんは皆を回収してメディカルポッドへ。俺はこいつを仕留めます!」
「…わかったわ!」
メロはすぐさまクォンタムを除く全員を風のスキルで持ち上げて空中で回収し、シアルの下へ急いだ。
「なんだ?同型のゴーレムがいたのか?」
「まぁ、そんなとこだ」
「どうでもいいか。俺の狙いはお前だけだ!」
シャバルは黒い左腕に力を込めて殴り掛かってきた!
瞬間、クォンタムのエネルギーナックルがシャバルの腹部にカウンターが叩き込まれる!
「ぐふっ!?」
シャバルは後ずさりしながらもまた体を起こして左腕を放とうとするが。
次はアッパーカットを顔面に叩き込まれた!
「あがっ!?そ、そうか。貴様ぁ、他の仲間を利用して俺の動きを…」
「一度闘ってるからそりゃ分かるか。けどそれだけじゃない!」
「なにをぉ!!」
凄まじい速度で繰り出される左腕の攻撃だがクォンタムは軽々とかわしていく。
「アンタが凄いのは左腕だけさ!それ以外のアンタの体が左腕に振り回されてんだ!だから左腕のデータさえ覚えてしまえば!」
大ぶりの一発にクロスカウンターがさく裂した!
「こうなるんだよ!」
左顔面に電磁シールドがめり込む。だがシャバルの眼はまだ死んでいない!
「っ!?」
飛退こうとしたがクロスカウンターで交差した腕に触手が巻きつき左掌はクォンタムの顔面を捉えた!
「捕まえたぁ!!」
シャバルは両腕でクォンタムの首を体から引き抜こうとする。
ギチギチと首の根元が嫌な音を立てる。
右腕は相手に触手に絡めとられているし、スラスターもなぜか出力が上がらない。
ならばエネルギーを左拳に集約して電磁シールドナックルを叩き込むしかない。
だがこの距離で仕留められるのか?
「これでおわりだぁ!」
シャバルが首を一気に引き抜こうと力を込めようとした瞬間。
音もなく、巻き取っていたクォンタムの右腕もろとも彼の両腕が切断された。
「へぇえ?」
間抜けな声と一緒にゆっくりと体がクォンタムから離れていく。そして。
「消えろ…!」
クォンタムのエネルギーをこれでもかというくらい集約されたシールドナックルを叩き込まれ空の彼方へと吹き飛ばされた。
『味方機ノ反応アリ』
シャバルを見送った後、周囲をスキャンしているとクォンタムを助けた者の姿が現れた。
クォンタム・アズラーイルである。
コックピットが空き、パイロットが姿を現した。
「君は…」
黒い妖精がそこに立っていた。
つづく




