第七箱 パーツはカチリというまではめ込むべし
どうも海人藤カロです!
今回で七箱目になりました!毎日投稿もコレで一週間!何とか続けられてます!ではお楽しみください!
今回はドナウの話が多めです!
傭兵兼盗賊団サルトゥアクラーヌと協力して違法奴隷商の罠を打ち破ったクォンタムたち。
次の目的は奴隷商会の壊滅。
その功績を手見上げに王都へ向かうという計画となった。
まずはドナウ達のケガを治すために作っておいたメディカルポッドを使った。
ただ数時間、中の溶液に入るだけで傷が治ることに皆驚いていた。
そして翌日、全回!出発したのだった。
〇
クォンタム一行はまず賞金首たちの死体を持って近くの街の傭兵ギルドへ向かっていた。
賞金を貰う手続きをするためだ。
クォンタムもフルブースターから初代へとフォルムを戻していた。
「頭はつぶれちまったから毛髪と歯と目玉しか証拠品がないのは問題だな。スキルを武器にしてる賞金首はちゃんと頭をもっていかないと討伐されたとみなされにくい」
「えーじゃあ俺の死神もダメか」
「いや、死神の方はその鎌持っていけば十分証拠になるだろ」
「そっかなら安心だ」
「それよりさ!その腰の剣、もしくは後ろについてるボウガンみたいなやつ!触らしてくれよ!」
「だめだってば!」
「じゃあ、あの大筒!チェーンのついたトゲの玉!光の壁が出る奴!あのデカくて空飛べるやつ!どれでもいいからさぁー!!」
ぐいぐいとクォンタムのマントを引っ張るドナウ。
その様子を後ろからシアルとドナウの子分たちがじとーッとした目で見ていた。
「なんか。近すぎない?」
「ああ、お頭は武器が大好きだがあれはそれだけではないような…」
「クォンタム様もドナウさんに対してはフランクな口調になるし!」
「「確かに!」」
「いやでも、あの登場は男でも惚れちゃうぜ」
「だとしても!先日会ったばっかりじゃない!!」
「姐さんずっと男日照りだったからなぁ。俺達のことは男とは見てくれねぇし」
「な。まぁ負けて子分になったんだから当然だけど。やっといい人を見つけたって感じじゃね?」
シアルはふくれっ面のままで前を歩く二人の間に割り込んだ。
「ドナウさん!傭兵ギルドがある街はまだなのですか!私早く奴隷商会を壊滅させたいのですけれど!!」
「ああ、もうすぐだよ。あ!見えてきた」
クォンタム一行の眼に村の入り口が見えてきた。
「サミラスだ。ここにあたしら傭兵のギルドがある。」
シアルのウォーデンホルセ村よりはデカいし活気もあるが。
「何だこの野郎やんのか!!」
「上等だ!演習場に来い!ズタズタにしてやるぜ!」
「コラ亭主!酒はまだか!!」
「うるせー!こっちは満席で手いっぱいなんだよ!文句あるなら帰んな!!」
所々で怒号と騒音が・・・。
「ドナウさんこれは…」
「あっはっは!傭兵つってもほとんどチンピラが集まった自警団みたいなもんだからな!フェイデラ国の中でも治安は悪い方だと思うぜ!でもここにいる連中はガラは悪いが外道じゃねぇから安心しな!」
騒がしい村の中を進み、一番大きな建物の前に来た。
ここが傭兵ギルドの建物である。
大きな入り口を開けて中に入ると一階はに酒場と食堂、そして傭兵への依頼受注の受付、依頼書が張られた掲示板があった。
ギルドの中もなかなかににぎやかであった。
ドナウはクォンタムたちを連れて受付へ。
「おう、ジャック!オヤジいるか?」
「ああ、ドナウか!無事だったんだな!!」
「へ?」
「お前が受けた依頼、奴隷商会の罠だったって!」
「なんで知ってんだよ?」
「最近入った受付の新人だよ。アイツが奴隷商会の奴らに買収されてたのを親父が気づいてな。今そいつから事情聴取してんだ。オヤジ直々にな」
「気づいたって…。『読心』のスキル持ちでも使ったのか?」
「街の中にあるエロい女たちと酒が飲める店あるだろ」
「あのバカ高いとこか!」
「そこで羽振り良く酒飲んでた時に嬢にぽろっとこぼしちまったんだと。あの店に情報収集の為にオヤジの女が何人か潜ってるからな。そっからオヤジの耳に入っちまったんだ」
「ってことは今は…」
「ブチギレで尋問してるよ。いや、拷問か。俺も止めてぇんだけど怖くて!!お前なら止められるか?」
「止めるしかねぇ。オヤジに無駄な殺しさせられねぇだろ」
「クォンタム、お前ら、ちょっと下で待っててくれ」
ドナウは皆を残して二階のギルド長の部屋へ。
受付のジャックは安堵した息を漏らすと珍しそうにクォンタムを見た
「アンタはドナウの盗賊団の新メンバーかい?」
「いや、旅の同中に知り合ってここまで来てしまったんだ」
「そうか。そりゃそうだよな。アイツが仲間なんて増やすわけねェか」
「ドナウさんの事、なにかしってるんですか?」
「おや、女の子もいたのか。こんなところに珍しい。アンタはこっちの旦那の連れかい?」
「はい!シアルと申します。クォンタム様の『パートナー』です!」
「それで、ドナウさんの事は…」
「ドナウがギルドに来たのは15年前だ。まだあいつが10歳の頃さ。違法奴隷商にさらわれて売られそうになっていたところをまだギルド長になる前のオヤジが助け出したんだ…」
ジャックは色々と教えてくれた。
ドナウはギルド長に鍛えられて育ったこと、17の時に傭兵ギルド内の元奴隷だけで組んだ盗賊団サルトゥアクラーヌを立ち上げたこと、そしてもうそのメンバーがドナウとハンとチョウしか残っていないこと。
ハンとチョウもドナウの武勇伝を色々と話してくれた。
「ドナウさん。色々あったんですね」
「そうだな。ドナウに比べればただ放置されて寝ていた私なんて楽なもんですよ」
と、ドナウの過去を聞いて酒場で席に座って少ししんみりしていた。
「にしても違法奴隷とかそういった仕事って国の軍隊やらは動かないのか?」
「今はゾーニ国との戦争でてんやわんやしてるしね。だからこんな荒くれ共がいる傭兵ギルドにもいろんな仕事が回ってくるんです」
「傭兵って戦争には参加しないんですか?」
「ははは、他の傭兵ギルドはそうでしょうけどここにいる連中は協調性がゼロ。なので戦争には呼ばれません。まぁある程度協調性のあった奴はみんGOPに引き抜かれちゃいましたがね。ここに残ってんのは選りすぐりの荒くれってわけです」
「それならドナウさんもGOPに引き抜かれるんじゃ?」
「お頭は戦争よりも違法奴隷商を潰す方を優先してんだ。折角平和になってもあいつらが残ってたら台無しだって。自分がフェイデラ国の中を掃除する!だから外はアンタらGOPの仕事だってスカウトしに来たGOPの幹部に啖呵切ってたからな!」
と、そんな話をしていると。
「おいおい、こんなとこにカワイイお嬢ちゃんがいるじゃねぇか!ちょっとお酌してくれねぇか!」
スキンヘッドの大男が話しかけてきた。
「おい!まてよボウル!そいつはお頭の客だ!」
「あん!?あのえこひいき女の客ぅ?だったらなおさら奪ってやりたくなるぜ!」
(そうだった!こいつギルド長に可愛がられてるドナウの事を目の敵にしてたんだ!)
だがボウルの伸ばした手をクォンタムの手が掴んで止めていた。
「あぁ!?なんだ仮面やろう!?文句でもあんのか!」
「マジでもうやめろって!クォンタムさん!一応そいつうちの貴重な戦力で…」
「つまり、戦える程度には生かしておけばいいんですね」
「なにぃ!!デカい口叩きやがって!なめんなよこら!」
ボウルがクォンタムへと殴り掛かった。
〇
他の皆がジャックにドナウの話を聞いていた頃。
ドナウはギルド長をなだめていた。
長く白いひげと髪を蓄えた身長二メートル以上のムキムキのおじいちゃんが鼻息を荒げていた。
部屋の真ん中にはロープで逆さづりにされてボコボコにされている人物が。
恐らく今回買収された受付だろう。
「な、もう気が済んだだろ!」
「ぬぐぅ!ワシの娘を罠にはめて再び奴隷に堕とそうとするなど!万死に値する!が、今回は
ここまでにしておいてやろう」
「あ、ありがと、ございます」
男は雑に床へ降ろされると他の職員に抱えられてギルド長の部屋から連れ出された。
落ち着いたギルド長は椅子に腰かけてため息をついた。
「なんにせよ無事でよかった。クォンタムとやらには後で礼を言わねばな」
「それよりも、オヤジに知らせがあってきたんだ。まずはこいつら」
ドナウは次元倉庫の中から爆発男の遺骸とクォンタムから預かっていた『ソウルテイカー』を取り出し、手配書と共にみせた
「おお、こいつがあの『爆発魔ジャスティ』か。ここまでになっちまうと証明は難しそうだが何とか国とかけあってみよう。こっちの『死神』は魔装具があるから討伐の証としては十分だ。先にギルドの方で懸賞金をだしておこう」
「ありがとよオヤジ!んでつぎはこれだ」
ドナウはフェイデラ国の地図を机の上に広げた。
そして地図上に奴隷商会の拠点が書き記されていた。
「ここに奴隷商会が…」
「死神からの情報だから確かだと思う」
「まさか王都のこんな近くに…。よし!野郎ども引き連れて潰しに行くぞ!!」
「さすがオヤジ!そうこなくっちゃ!!」
「GOPにも連絡しておこう。壊滅できれば報奨金もたんまりよ!準備の時間を考慮して出発は明日の早朝だ!」
ギルド長とドナウは傭兵たちに違法奴隷商殲滅のクエストを伝えようと下へ降りた。
そこで死屍累々の山を目撃した。
「な」
「なんじゃこりゃあああ!?」
「今現在のうちの主力が…」
「クォンタム!お前何やった!?」
「いやー、なんか一人電撃で気絶させたら一斉に飛び掛かってきて…。こんなことに」
「おまえなああああ!!」
ドナウがクォンタムの襟をつかんでがくがくと揺さぶる。
「二、三日すれば目を覚ましますからぁあばばばば!?」
違法奴隷商会の壊滅。うまく行くのだろうか?
〇
その夜。傭兵ギルドの標的となっている違法奴隷商会の本拠地『ザバンジル村』。
その商会用の会議室では。
「ちっ、あのギルド長の娘を仕留め損ねたうえに全滅とは」
「せっかく雇った凄腕の賞金首が二人いたのではなかったのか?」
「奴らからこちらの情報が流れたとすればズグゴの傭兵ギルドが攻め込んでくるぞ」
「ちいっ!あの忌々しい老いぼれが!」
「まぁまぁ、騒ぐな。こちらもちゃんと手を用意してある。お入りください」
会議室の扉を開けて入ってきたのは赤い鎧を見に纏った男。
しかし左腕の鎧だけが黒かった。
「この男は・・・」
男は兜を外して商会の幹部たちに挨拶する。
金髪の顔立ちのいい男。
「ゾーニ軍将軍。シャバル・クワト」
「なっ!?おい!こんな奴を引き入れればGOPまで本格的に敵に回すことに!!」
「ふふふ、大丈夫じゃ。今回の襲撃は彼らが食い止めてくれるそうだ。その隙に我々はゾーニ国へ移り、新たな商売を始めるのさ。戦争に乗じてフェイデラ国の民を奴隷にして労働力としてゾーニ軍へ売りつけるな。今までのフェイデラ国の好事家を相手にするよりさらに大きな金が手に入る!で、よろしいのですよね?」
「ああ、その通りだ」
その言葉に幹部たちが歓喜する。
「ゾーニ国までちゃんと運んでやる。左腕の腹の中でな」
「は?」
その言葉に幹部全員の思考が固まる。
左腕が不気味に蠢きだし、いくつもの触手が噴き出した!
悲鳴を上げて逃げ回る幹部たちを次々にとらえて飲み込んでいく。
数分後には会議室は静まり返っていた…。
「兵士、奴隷、住民合わせて2000人ほどか。食いがいがある。傭兵ギルドの連中を足せばさらに力を増せる。そしてその後にあの白い奴を見つけ出して…殺す!!」
シャバルの復讐の炎がクォンタムたちの行く手に待ち構えていた。
つづく。