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アタシはジャスティン!!

はぁい。ジャスティンよ。あれから作戦のための情報収集と準備を始めてるわ。

新入生が第二王子派の被害に遭わないように、早めの決行が良いだろうという事で、大急ぎで準備をしているわ。


当初の会議では、罪悪感・引け目=弱み を持たせるって言う話だったんだけど、それはアタシ的に嫌だったのよねぇ。そもそも取り巻き令嬢達の、相手が強く言えないような状況に追い込んでコントロールするっていうやり口が嫌いだから、同列になりたくなかったし。


そこで、方向性を変更して、少数派マイノリティな趣味にハマって貰って、なおかつそこで、心を満たして満足してもらおうって言う作戦に変更になったわ。


あまり仲間のいないマイナーな趣味だと、同じ趣味を持つ人間がいれば、下級貴族だろうと平民だろうと、大事にしないかしら? 仲間意識が生まれないかしら?

そこから、横暴さも減っていけば良いなーっていう希望を込めてみたわ。


あと、マイナー民って、語れる相手がいない&大多数の人間に良さを理解して貰えない切なさから、弱みとまでは行かなくても、なんとなーく肩身が狭くなるのよ。わかるかしら? この感覚。

大手を振って公表できるようなメジャーな趣味を持った人間と比べて、ちょっとコソコソと挙動不審になるのよ!!


正直、前世のアタシ、乙女ゲームのジャスティン様の沼に沈んだ時、枕カバーを購入したり添い寝シーツを揃えたりしてる事を、周囲の人間には言えなくて、どこかで趣味がバレやしないかとヒヤヒヤしながら過ごしたわ!! 

でも、その趣味で心が満たされているのは間違いないの!!

大きな声で語れなくても、人様に公表できなくても、その趣味に、沼に浸かっている間は幸せなのよ!!


だから、少数派になって貰って肩身が狭くなりつつも、幸せになって貰おうって作戦よ。


「で、具体的にどうするんだ? あ、そのファイルは右の棚だ」


「お父様ってば、息子を当然のように使うようになって来たわね」


今日も雑用をさせられながら近況報告をすると、お父様は書類から顔も上げずに返事を返してきたわ。


「毎週入り浸っていたら、そうなる。で、どうするんだ?」


「とりあえず、チャラ男には女装趣味にハマってもらうわ。着々と誘い込んでいるわよぉ」


「はぁ?」


「それもゴスロリ系ね。眼帯があるから、まずはそこから入って貰って、その内、白とピンクのフリルの付いた眼帯をつけて貰って、甘ロリに誘い込むのもいいわね。垂れ目で甘い顔立ちだから、そっちも似合うと思うわ」


そこまで説明すると、お父様は頭を抱えた。なによ、問題ある?

なんで補佐官達も、困惑顔なのよ。


「まて、待ってくれ。どうしてそうなった」


「だってチャラ男が一番女癖が悪いんだもの」


ゲームの設定でも、女性不信をこじらせて寄ってくる女の子達を内心(さげす)んでいるから、物のようにポイ捨てすんのよ、あのチャラ男は。

女性を感情ある一人の人間として見てないのよね。


で、中立派の子達に調べてもらったら、ゲームより酷くなっているけど、やっぱり女性不信、女性軽視の気があるのよねぇ。


「だから、女装趣味になって貰おうってなったのよ」


「だから、その展開が分らんと言っているんだ」


「彼、ナルシスト気味でもあるのよ。って言うより、あれは絶対ナルシストね。そんな男が、蔑んでいる女子よりも、より可愛く、より女性らしくなれたら、優越感に浸れるんじゃないかしら? って思ったのよ。『お前らより、俺の方が可愛い。女のお前らより女の子らしい服を着こなせる』って」


「そう、上手く行くか?」


「でも上手く行ったら、なんとなく女癖も改善しそうな感じがしない? だって自分の方が可愛いんだもの」


「う~ん。でも可愛くなるか? 甘い顔立ちといえども男だぞ?」


「そこはあまり心配してないわ。だって彼ナルシストだもの、元が大好きな自分の顔立ちなんだから、彼にとっては好みの女性になるわよ」


乙女ゲームの攻略対象だけあって、整った顔立ち。それも垂れ目で甘い顔立ちだから、ジャスティン様と比べて、中性的な雰囲気のキャラデザ・・・じゃなかった顔立ちしてるのよ。

そこに、前世のコスプレイヤーのメイク動画や、ドラッグクイーンのメイク動画の知識を持ったアタシの技術をもってすれば、美少女化間違いなしよ!!

まぁ、チャラ男にメイクを伝授するのは、チャラ男を沼に引きずり込む担当の人間だけど、前世知識によるアドバイスは担当者にしておいたわ。


後は、チャラ男のスペックの高さから、自身でメキメキ技術を上げていくだろうから心配ないわ。

その内に技術を極めて、その世界の頂点に立てるわよきっと。


「第二王子はどうするんだ?」


「いろいろ考えてはいるんだけどぉ。ラノベヲタクになって貰おうかしら? っていう案が出てはいるんだけどぉ・・・」


前世でも、ラノベ好きは増えてきていたけど、それでもやっぱり少数派っていうか、あまり周囲にラノベ好きを公表できないって人は多かったわ。


そして、この世界だと余計に難しいでしょうね。SNSやネットがない分、語り合える仲間を探すのも難しいから、余計にアングラに引きこもるわ。

ちなみに、この世界に前世で言うラノベ系の読み物はある。ただし、正規の出版物ではなく自費出版みたいな形で売られている。

あまり、評価はされていない。とくに貴族は、ラノベどころか恋愛小説ですら好きだと大っぴらに言い出せない雰囲気があるのよね。

だからお茶会の席に紛れて、恋愛小説が違法取引される武器か薬物みたいな扱い方で、やり取りされてるわ。


で、第二王子だけど、調べてもらった結果、ゲームの設定と同じく出来の良い兄と比較され続けた結果、こじらせてるみたいね。

無能感や劣等感が強いから、余計に弱い立場の人間にマウントを取って心を満たそうとしてるみたい。


だから、劣等感を持った主人公が成り上がる系の作品で、代わりに心を満たしてもらって、さらに作品に情操教育もしてもらって、他人への実害を減らして貰えないかしら? って安直に考えたんだけど・・・


ここで問題が一つ。


第二王子、本読める?


あの、みんなが矯正するのに匙を投げた、第二王子よ?

教育をさぼり続けてきた第二王子よ?

ちゃんと本を一冊読む集中力があるかしら?

それに、本当にラノベが第二王子の問題行動を減らせるかしら? だって第二王子よ?


だからイマイチ案としては弱いのよねぇ。


「まぁ、なんだ。成功するかどうかは分らんが、何も試さないよりは良いんじゃないか? 他にいい方法も見つかってないことだしなぁ」


そうして、中立派プレゼンツの第二王子達をアングラ趣味に引きずり込もう作戦が開始したわ。


結果、卒業までの一年の間に第二王子派閥から、様々な分野で『神』と称され尊敬される逸材が誕生したわ。


元々才能を持った高スペック男子達だったから、沼にハマるとメキメキと頭角を現していったわね。

そして、極めて行くに連れて、趣味に没頭していってくれたから、平和になったわ。

あと、第二王子派閥にいた、甘い汁を吸おうと群がっていた子息達は、次々と攻略対象達に捕まって、沼に引きずり込まれて行ったから、それぞれのマイナー趣味の人口が増えたわ。語り合える仲間が増えて良かったわね。


ちなみに第二王子は、何がどうなってそう転んだのか分からないんだけど、モンスターを可愛くデフォルトしたデザインのヌイグルミ作家になったわ。可愛らしいモンスターフィギュアの原型師もやってるみたいね。おおっぴらにはせず、仮面作家しているみたいだけど、かなり人気よ。


聞いた話によると、第二王子がラノベに興味を持つようにって、ラノベ作品の冒頭を絵本風のイラストにした物が、本と一緒に用意されていたみたいよ。

絵本レベルじゃないと、理解できないと思われた第二王子って・・・。


多分だけど、そのイラストに可愛くデフォルメされた、モンスターが描かれていたんじゃないかしら。分からないけど。

きっとイラストみたいに可愛いモンスターを頭にのせたり、抱きしめたりしたかったのね。

第二王子ってば思っていたより、かなり精神的ストレスがあったのかしら? 癒されたかったのね。フワフワした可愛い生き物に。ヌイグルミセラピーっていうのが有るのか知らないけど、結果オーライよ。

可愛いヌイグルミに囲まれて癒されたのか、性格もだいぶ丸くなったわ。


最終的にゲームとはかけ離れた学院生活だったけど、全員無事に卒業を迎えられて良かったわ。


その後の事だけど、アタシは卒業と同時に騎士団に入団したわ。入り浸っていたから、顔なじみも多くて結構快適に過ごしているわ。


取り巻き令嬢達は、卒業後、社交の場で総スカンに有っているみたいね。お茶会に中々誘われないらしいわ。まぁ、そうなるわよね。在学中の行いがあんまりだったもの。


これが一番びっくりなんだけど、公爵令嬢とヒロインは卒業後に二人そろって姿を消したわ。

公爵家が必死で探したけど、見つからないんですって。


まぁ、私は元中立派のメンバー達からの情報で知ってるんだけど。


二人は西の隣国のさらに隣の国で、4人でカフェを始めたわ。

え? あとの二人は誰かって?

元中立派の男子二人よ。たしかに結婚するなら中立派の子がおススメとは思ったけど・・・

まぁ、あの子達が幸せそうならいいわ。


さて、アタシは最強のオネェ騎士団長でも目指して、頑張りましょうかね。

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