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ダスト  作者: るりはる
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部活動記録021〈喪失〉

  「大丈夫かい?」

  優太さんが優しく問いかけてくれた。

  「何か嫌な夢でも見たかい?」

  額を拭うと汗でびっしょりだった。

  「それがですね、、、」

  僕はいまさっき見た夢をありのまま伝えた。

  それを聞いた優太さんの顔つきが強ばった。

  「それは大変だ!今すぐ戻るよ!」

  そう言い、腕を掴まれ車に乗り込んだ。

  向かった先は影の自宅ではなく、学校であった。

  雨はまだ強く降っていた。

  時刻は午後11時。

  もちろんこの時間帯に学校が空いてるはずはないと思っていたが、なぜか生徒玄関は空いていた。

  そこには宮野先生、コロン、うつり、里中、そして光もいた。

  「影君!どこに行ったかと思ってたら優太さんのとこだったのね。そうなら言ってくれたらよかったのに」

  「なんで光達がいるんですか?」

  青柳が居ないことから『ハートドロップ』ではなく、『ダスト』関係と思われたが、光がいることでそれは有り得なかった。

  「心配するな偽騰。青柳が居ないのは、ただ単に連絡がつかないだけだ。それと優太、こんな時間になんだ?」

  「ごめんね宮野。影君が不思議な夢を見たって言ってね」

  そして僕はさっき優太さんに説明した通りのことを話した。

  やはり宮野先生の表情は強ばった。

  光と里中は冗談のように思ってるようだが、『ダスト』を深く知っているうつりとコロンは目を大きく見開き驚いているようだった。

  「先輩、それって本当ですか?本当に明日なんですか!?」

  肩を捕まれ前後に揺らされた。

  「あぁ、確かに明日の日付で街が燃えていた。」

  「・・・ならもう・・・手遅れかも」

  うつりが袖を引っ張り震えていた。

  コロンはそれを見て手を握っている。

  コロンの手も震えていた。

  「先生、そして優太さん。なにかまずいんでしょうか?」

  優太さんは「ふぅ」と深く息を吐き、

  「君の『フレア』の人物が見た夢は正夢になってしまう。過去の文献から見てこれはわかっている事だ。」

  つまりあと24時間までにこの街は火の海と化する。

  「頼む影君、他になにか手がかりになりそうなことは無かったかい?」

  必死に思い出そうとしても、その事が強く残っていて、あまり思い出せなかった。

  街並み、時間、人。

  「あ、神谷がいた。」

  僕の家の前、僕の前に神谷が表れ一言いった時、

  遠くの方で爆発があった。

  「神谷ってあの「神谷信哉」かい?」

  コクリと頷いた。

  他に思い出したことを伝えた。

  そしてすぐに家に戻り、爆発があった方を探す。

  そこにはきっと爆弾のようなものがあるはず、それを取り除けば火の海になることはないと思ったからだ。

  気づけば日付が変わっていた。

  だが、そんなこととお構い無しに爆弾らしきものを探した。

  1時間ほど探したが一向にそれらしき物は見つからない。

  そこで1度解散し、また後日集まることになった。

  優太さんは念の為僕の家に泊まることになった。

  スマホにメールが届く。充からだった。

  「さぁ、影。勝負だ」

  読み終えた時、先程までいた方から大きな爆発音がした。

  その方向に家を飛び出す。

  家の前には神谷がいた。

  「この勝負に君が勝つことはない。」

  優太さんが家から勢いよく飛び出した。

  すぐに神谷を捕らえようとしたがかわし、遠くへ逃げてしまった。

  僕は119番をしようとしたが頭の中に誰かが話しかけてきた。

  〈お前は誰だ?〉

  1度聞いたことのある声だった。

  〈逃げてきたお前はあいつに勝てない。〉

  《そんなのやってみなきゃわかんないだろうが!》

  〈全てから逃げて忘れたお前には無理だ。〉

  《逃げてきた?いつ俺が逃げた!》

  〈あの時、あの火災の日から今までずっと逃げてきただろ!〉

  《あれは逃げたんじゃない!俺は逃げてなんか居ない!》

  〈ならばなぜ俺を忘れている?〉

  《お前なんか初めから知らない!消えろ》

  その言葉でやつの声は聞こえなくなった。

  それと同時に喪失感もあった。

  なぜか涙が流れた。

  だが今はそれどころじゃない。

  スマホを拾い上げ119番にかける。

  その間に優太さんが近隣住民に呼びかけてくれていて、大勢の人が家から飛び出し避難して行った。

  その間も火事は広がっていく。

  「こんなもんだったの?影」

  振り向くと充がいた。

  「こんな奴に憧れていたなんて僕は恥ずかしいよ。もう君は弱いんだ。いつまでも逃げているから」

  その時、僕は思い出した。

  火災があったあの日、僕は僕の中から大事な感情を捨てた。

  それはもう手に戻らないもの。手に入れられないもの。

  1度捨てたら人間は弱くなる。

  分かってるはずなのにあの時は分かっていなかった。

  その場に膝から崩れ落ちた。

  「じゃあね、偽騰」

  また失ってしまった。

  「これじゃ()()()と同じじゃないか」

  僕が捨てたもの

  それは『友』だった。

  そう、あの日僕は充と友達の縁を切り、その日までの楽しかった記憶をなくした。

  だから僕は弱いままなんだ。

  僕は過去を振り返らないから弱いんじゃない。

  ()()()()()()から弱いんだ。


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