部活動記録019〈終焉のファンファーレ〉
「なんの事かな?ついさっきここに来たんだよ」
時は動き出した。
だが、そこでいつもよりも遅く感じる。
「君の考えることは単純で嬉しいよ。」
背中に寒気が走る。
風が横切り、森が鳴く。
空はさらに黒く染まり涙を垂らす。
「何故こんなことになっている?教えろ」
神谷の顔つきが大きく変り、恐ろしいオーラを放つ。
「これは君が起こしたことだよ?」
訳が分からなかった。
僕がこの異常事態を起こしたと言っているようだが、そんなことをした記憶が無い。
「君の能力は強大すぎる。その故扱いが非常に難しく、それ自身が主を選ぶ。そこがほかの能力との大きい違いであり、伝説たる由縁なんだよ。」
「それがこの状況となんの関係があるんだよ」
神谷は怒りをあらわにした。
オーラもそれと比例し、赤黒く染め上がり鬼の形をしている。
「これはオーラを見るだけだろ?」
雨がいっそう強くなった。
「君は今までどんな経験をしたのかな?里中くんの時、教授が学校に来た時のこと、君の身に何があったのかな?」
里中?姉さん?
全く関係ないように感じたが、すぐにわかった。
「能力の暴走がおこったときはただ記憶が飛んだだけだ。」
「なら、教えてあげるよ。その身をもって、ね」
その言葉を聞いた時、また視界が白くなり意識が遠くなっていく。
・・・・・・・・・
目を覚ました時、また家にいた。
いつも通りの朝であった。
外には登校してる学生や通勤の社会人達が歩いている。
ただ、季節が少しおかしかった。
街路樹の葉が枯れ落ち、木の幹や枝が全て見えてるはずなのにそこには色鮮やかなピンク色に染ったソメイヨシノが並んでいた。
学生の持っているはずのカバンはとても薄かった。
制服に着替え、学校へ向かうと光が待ち構えていた。
「影君!危うく遅刻でしたよ?」
いつも通りの光ががいた。
「もうすぐ卒業しちゃうんだからもっとしっかりしなきゃダメですよ?」
卒業?
まだ紅学祭も終わってないのに
「何言ってるだ?まだまだ先だろ?」
光は呆れているようだった。
「もう一週間切ってますよ?部室の片付けを明後日までにしなくちゃいけないんですから、先行ってますね」
そう言って小走りで部室へと行ってしまった。
「もうわかったかい?」
声の方を向くと神谷がいた。
「君の暴走時の能力は『タイムスリップ』君だけが先の未来へ行ってしまう。」
衝撃のあまり動けずにいた。
重い口を動かした。
「じゃあ何故神谷、お前もいる?」
「それは五月雨くんが君に接触したからさ」
五月雨という名前はタイムスリップする前に調べていた。
だが、接触した覚えがなかった。
「関わってるんだよ。覚えてないだけで、」
忘れるはずがない。
関わりが少ないため、忘れることは無い。
『ダスト』がないかぎり。
それでも『忘却』をもってるものはまだ現れてないはず。
「覚えてないかな?僕が言ったこと」
神谷が言ったこと?
今に関係あるは……
一つだけある。
けど、それならば今までのことが全て間違っていることになる。
「神谷、、、お前の『ダスト』ってもしや」
嘲笑いならかこちらを見ている。
「そうだよ。僕の能力はその『忘却』なんだよ。君たちは思い違いをしていたんだよ。」
風は吹く、桜を散らしながら。
虫は鳴く、他の虫に話しかけるように。
何も変わらない日常、平凡な日々。
なのにその一言にその日常が音を立てて壊された。
これから始まる、終焉を知らせるように。




