部活動記録013《紅と乱舞と“蘭”》
紅蘭大火災
この町、紅蘭市ができる前の話
この町は11年前のある大事件がきっかけで『紅蘭』という名前に変わったのである。
紅蘭市の前は芽乃古市といい、アイヌ語で女の子、娘という意味がある。
そこの土地神が小さな女の子でいろんなところで悪戯をしてたらしく、それに恐れたアイヌの人々が毎年、少女を生け贄に捧げていたことからその名がついた。
あらゆる加工工場があり、海や川の方が栄えており内側は今ほど活気づいてはいなかった。
ところがある日、一人の少年によって火の街と化してしまった。
その張本人が神谷信哉である。
だが、『ダスト』から警察への根回しがあり、この事件の真相は闇に消えてった。
この事件は『紅蘭の乱舞』と呼ばれ、日本史に深く刻まれた。
全てが無に帰してしまい、町の名前までも変わってしまった。
それが紅蘭市である。
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「でも、その前に先輩の命がない可能性の方が高いと思います。」
一気に雰囲気が重くなった。
「瀬川さん、どういうこと?」
不安のオーラを出して聞いている。
「『ダスト』っていうのは、特殊能力を得るだけでなくて、その代償として寿命が極端に短くなってしまうの。先輩の場合、卒業式に間に合わないかもしれないの」
「・・・それが『フレア』を持つ者の・・・・運命」
「うそ・・・」
「・・・ぐすん」
光は二度目なのに涙を流した。
「先輩は当然のように涙をふくんですね」
気づいたらハンカチで光の涙を拭いていた。
里中はカメラのシャッターを高速で押している。
「なんでシャッターを切ってるの?」
「私、新聞部ですよ?いい記事があったら見逃すわけにはいきません!」
そういいながら様々なアングルからシャッターを切っている。
「ちなみに見出しは?」
そう聞いたら予想内の答えだった。
「ハートドロップの部長、部員のハートをドロップキック」
「今すぐやめろ。部活の評判を落とすことになる。」
「いい記事じゃないですか!嫌に決まってるじゃないですか」
「じゃあ退学するか」
「先輩が・・・退学・・・?」
ぼそぼそと呟きながらコロンが里中の方に近づいて言った。
「その記事を作ったらあなたの噂をでっちあげ、学校中に広めちゃうよ?生徒会の力を使ってでも」
目の輝きを失い、憎悪のオーラを出している。
「だからそんな記事作るのやめよっ?ね」
「は・・・・はい」
驚愕しすぎて喋れなくなってしまっている。
「話を戻すけど、里中。今さっき言っていたことはすべて本当だ。正確には本当なはず、なんだ。」
「『はず』って何ですか?」
「寿命のことはあくまで憶測に過ぎないんだよね。それが嘘か誠かわからない。けれどきっと十中八九当たると思うんだ。」
一度明るくなった雰囲気が暗くなった。
「こんな話は聞きたくなかったと思うんだけど、『ダスト』を持ってしまったからには聞いてもらわなくちゃならないと思ったの。」
「『ダスト』の持ち主には寿命があるものなんだよね?じゃあ私にもある、の?」
里中の質問にうつりがはっきりをした声で答えた。
「多分あると思う。」
「正確なのはわからないけど、きっと三十歳前後くらいだと思うんだ。」
コロンもいつにもまして真剣な声だ。
「そして今、」
一旦言うのをやめた。
けれど向き合ったほしい気持ちが勝った。
「その呪いを解く方法も分かっている」
「だから影君はそれを実行するつもりなのよ」
「ほふぇ~」
宝箱を見つけた子供のように目を輝かせた。
「記事に・・・記事にさせてください!」
「それは・・・本当にダメだ」
「なんでですか?」
説明に困っていたら代わりにコロンが、
「『ダスト』は世界中の研究施設が狙っている貴重で重宝されるべき人間たちなの。一人の生徒がSNSなどで拡散したら生徒の安全すら危うくなってしまう。だからできる限り広めたくないの。ごめんね」
里中は残念そうだったが事情を分かってもらえたようで了承してくれた。
「今じゃ里中もその一人だ。気を付けてな」
黙って頷いた。
「じゃあ続きはまた今度ってことで、また明日なみんな」
「じゃあね影君」
「・・さよらな」
「またね先輩❤」
廊下に出て帰ろうとしたときに、
「偽騰先輩待ってください」
後ろから里中が追ってきた。
「どうした?」
「先輩って早見教授と一緒に生活してるんですよね?」
「居候させてもらってるんだ。それがどうした?」
「合わせてもらってもいいですか?」
まじか、上目使いはずるい
「いいけど親は大丈夫か?」
「うちは共働きなんです。」
少し顔を下に向けた
「そっか、ごめんねじゃあ行こう」
「ありがとうございます」
しばらく歩き家の近くの公園まで来た時に背中に『憤怒』のオーラを感じた。
焦って早歩きで向かったが、行く先々で同じオーラが感じられた。
「ここが家だから入って。姉さんはまだ帰ってきてないと思うけど」
言い終わる前に入って行ってた。
「おじゃましまーす」
玄関は鏡が一枚あって花瓶には大きな花があった。
「この大きい花はどうしたんですか?」
「それは姉さん宛ての花だよ」
「ずいぶん大きいですね」
感心しているところにリビングから声が聞こえた。
「帰ってきたの?お帰り~。ご飯作ってるから早く食べよーよ」
「わかったよ」
いつもなら飛び込んでくるのに仕事をやってるんだろうか
里中の方を見てみたらそこに姿はなかった。「早見きょーじゅ!」
リビングで声が聞こえた。
駆けつけると、めんどくさがってる姉さんがいた
「ちょっと影!なんでこの娘がいるの?」
「どうしてもついてきたいっていうから」
「もぉ~先に釘を打っておけばよかった」
姉さんは妙に毛嫌いしている。
「いつの間にかいなくって私死んじゃいそうでしたよ!」
家の中で追いかけまわっている。
・・・・・
・・・・・
「いつまで走ってんの?」
姉さんはこっちを見たと思ったら飛びついてきた。
「影、なんとかして!」
しょうがなく里中を止めた。
「里中、急に姉さんを追いかけないことと何で追いかけたの?」
「前にかわいがってくれたから・・・・」
「姉さんはどうして嫌ってるの?」
「・・・・相性?」
きょとんとしているようだった。
里中のオーラから姉さんに移っていくように見えた。
すると姉さんの様子が変わった。
「だっっって影ちゃんのことが心配なんだったもん!〇○○○○亡くなったって聞いたからしょうがなかったの!研究どころじゃなかったの!」
里中の『炸裂』が発動された。
「私何言ってた?」
「里中の『炸裂』が発動されて姉さんが色々話しちゃったの、僕の家の事情を」
姉さんは申し訳なさそうにしている。
「いつかは知られてしまうことだからいいんだけどさ」
そこで姉さんが「はっ」と何かに気づいた。
「里中ちゃんも『ダスト』になっちゃったの?どうして?条件は満たしてないはず・・・」
里中は静かに一枚の写真と新聞のスクラップを見せてくれた。
スクラップには紅蘭市で起こった大きな交通事故に関しての記事があった。
今から二年前のことだった。
「この玉突き事故はうちの両親が起こしてしまったもので、私は心底彼らを憎んだんです。きっとそのせいでしょう。」
二人は亡くなってしまい、損害賠償として家を差し押さえられてしまった。
「その時に少しの間早見教授の手伝いをさせてもらっていたの。だから教授にすがっていたんです。」
そう言い残して里中は帰っていった。
「今日は教授に会えてよかったです。今回のことは記事にはしませんのでご安心を。偽騰先輩、もしものことがあったら私に行ってください。私もあなたを頼りにしますから。それではまた。」
帰ってしまった後、背中から『憤怒』のオーラを強く感じた。
振り返った先には神谷がいた。
「我慢できなくて会いに来ちゃったよ。さぁ、お話ししようよ」
その言葉を聞いた途端、眠くなった。
「早見さんは後で連れていくから安心してね。」
・・・・・
目覚めた先には真っ白い空間があった。
そこにあった紙には
「傲慢」
その文字があった。




