部活動記録012《加虐と開花》
いつも通り授業を終え、ほとんどの生徒が部活へと足を運び終わったくらいの頃、充以外の『ハートドロップ』のメンバーは集まっていた。
「今日も青柳さんは来なかったんですか?」
「なんだか怖いですね先輩」
各々が心配になっていた時、
「部活動中に失礼します。全部活動及びサークル、団体のキャプテンは至急、第三大会議室に集まってください。繰り返します。全部活動及び・・・」
という校内放送が流れた。
「収集なんて珍しいですね」
「ああ、とりあえず行って来る」
駆け足で第三大会議室に向かった。
着いた先にはまだ数名の生徒と校長先生がいた。
五分ほどでキャプテンが集まった。
「皆さん、今日集まってもらい感謝する。集まってもらったのはもうすぐ開催される『紅学祭』に関することです。」
あらかじめ置いてあったプリントに目を通す。
「例年通り、三日間全生徒で協力をするとともに競い合う祭典なのだが、学校にこんなものが送られました」
前のスクリーンに脅迫状が映った。
そこには新聞の文字を切り抜いて「紅学祭は赤く染まる」という文章になっていた。
「こんなものがあるので、今年の紅学祭は規模を小さくするか、なくしてしまうかのどちらかの選択をしなければならない状況にある」
全員がざわめき始めた。
脅迫状を何度も見ている人、ほかの部活のキャプテンと疑問を交わし合っている人、さまざまであったが、数人が何か考え事をしているようだった。
「校長先生、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「例年、市の警察署に交通整備等を任せていますよね?それの増員はできないのでしょうか?」
「残念ながら初日は紅蘭市で起きた大火災の日で、同じことを起こさないように注意喚起及びパトロールに手が回ってしまいこれ以上の増員は難しいんだ。」
ざわめきがさらに大きくなった。
「この祭典は我々だけでなく、住民や大企業の皆様も期待なさっている。そう簡単には中止という考えにはならないと思うが、自分たちの身が危ない状況にあることを頭に入れて決断してほしい。」
最後にこの話はメンバーに話さないこととくぎを刺されて会議は終わった。
部室に戻ると依頼人がいた。
「・・・・お疲れ様です・・・」
うつりがコーヒーを渡してくれた。
「ありがとう。ところでそちらは?」
こっちの話が聞こえていたようで、椅子から立ち上がってこちらに振り向き、
「1年の里中佳子です!鹿島さんに教えてもらって相談しに来ました」
丁寧に深すぎるお辞儀をした。
「2年の偽騰です。とりあえず座って」
コクリと頷いて椅子に座った。
「・・・あの」
小さな声で囁いてきた。
「なんだ?」
「・・・・あの子・・『ダスト』の疑い」
「ほんとか!」
表情を崩さないようにしながら驚いた。
「・・・内容はわからない・・・頑張って」
「ああ」
なんとなく里中さんのオーラを見ながら椅子に向かうが、不安しか見えなかった。
「それで、どんなことですか?」
「えーっと、私なんだか好きな人ができると、その人を傷つけることしか考えられないんです」
「・・・」←俺
「・・・はぁ!?」←課題をやっていた光
「・・・ズズ」←お茶を飲んでいるうつり
「・・・」←白くなっているコロン
里中さんがおどおどしだした。
「あの~」
不安げな声を出したところで全員、思考が戻ってきた。
「失礼なことをお伺いしますが、あなたは加虐性愛者ですよね?」
「違う!っと思います」
光はうなだれ、うつりは相変わらずマイペース、コロンはまだ白かった。
「一体どうしたらいいですか?」
「えーっと」
「こちらは恋愛相談のみにしているので、性癖は彼氏にでも発散してください」
肩から顔を出して狂気に似たオーラを放ちながら言った。
「じゃあ彼氏作りたいです。」
「・・・どんな彼氏が欲しんですか?」
呆れながら聞いてみた。
「えー、撃たれず良い人ですかね?」
「つまりドМな彼氏ですね」
「ちょっとは濁してください!」
「スタイルとかは?」
「えーっと、スタイルはどうでもよくて、一途になってくれる人ですね。」
「私以外愛さない人ならだれでもいいってことですね。」
暴虐がだんだんひどくなっていく
「間違ってはいないですけど・・・」
若干泣きそうになっている
「はっきりと申しますが、そんな人はいません」
「そこまでじゃなくていいんです。わたしの性癖?を理解してくれる人であればいいんです」
(性癖は認めちゃうんだ)
「ドМな人を募集してみてはどうでしょうか?ネットは便利ですよ」
「光、出会い系を推奨してないか?」
にこやかだがとてつもなく恐ろしい
「・・・そろそろコロンを・・・何とかして・・」
今までずっと白いままだった。
「コロン起きろ」
パッと目を覚まし飛び起きた
「加虐性愛者じゃないの!」
「そのネタはさっきやったよ」
コロンは顔を真っ赤にした
「コロンちゃんもそれ言うんだ」
薄っすら涙を流した。
「え!?ち、ちょっと泣かないでよ」
あたふたしながら慰めた
「じゃあ、サディストをどう直そうか」
そういうとコロンとうつりがぎろっと睨んできた。
おまけに里中は大粒の涙を流し始めた。
「えー里中さん、一緒に頑張りましょう」
一緒のこと考えていたんだな。
「なんでみんなで言うんですか~」
涙でぐちゃぐちゃの顔で迫ってきた
そして大声でついに泣き出した
「ビィ@☆ぎゃ●◇j¥#&%」
「うるさいうるさいうるさい!」
光が珍しくお嬢様の状態で叫んだ
その時里中のオーラが爆発するかのように消えた。
「・・・オーラが・・・消えた?」
うつりが目を大きく開き、こちらを見ている。
いつも以上に真剣なまなざしで、
「そうだ」
何かを思い出したように言った。
「先輩、ほんとですか?」
コロンまでも見てきた。
「それがどうかするんですか?」
光と同じ気持ちだった。
「・・覚醒の・・・前兆・・」
「『フレア』を持っている人しかわかんないんですけど、オーラが爆発するとき、その人は目覚めるって書物にあったんです。」
「いったいなんで?」
「そういえば神谷が言っていた。あと二つ残っている、と。その一つがいま目覚めたんだ。」
里中のオーラを見てみるとそこには『inside』とあった。
「先輩、どうしたんですか?」
コロンが不安そうに聞いてきた。
「今、里中のオーラが『inside』の文字に変わったんだ」
「・・・・『炸裂』・・・・」
「炸裂って何ですか?」
「文書にある『ダスト』の一つです。特定の人の感情を大きくさせる能力です。」
「どういうことだ?」
「実践してみましょう。里中さん、光先輩のことを強くイメージしながら「感情よ、荒れ狂え!」って心の中でいいですから言ってください」
「は、はい」
そして里中はしばらく目をつぶった。
そしたらはかりの様子がおかしくなった。「・・・・んなのよ」
小刻みに震えだした。
「・・・なんなのよこの学園は!」
突然怒りをぶちまけた。
「『ダスト』って何なのよ!意味わかんないのよ!ずっとスルーし続けたけどおかしいのよ!なにが感情が読めるだの、噂を広められるだの、感情を入れ替えるよ!そして次は感情をおおきくする?皆さんそろってアホなんですか?そして最終的には影君が死んじゃう?馬鹿じゃないんですか?そして影君も影君ですよ!なに受け入れてるんですか?もっとこわがんなきゃおかしいですよ!過去がどんなに酷いものだからって死ぬ方が恐ろしいに決まってます!影君はどう思っているんですか!?」
首根っこをつかんでいってきた。
「え、あ、いや、俺は」
「俺は何なのよ!私には関係ないんですか!?瀬川さんとか鹿島さんとか同じ境遇にいる人としか本音を言い合えないっていうんですか!?」
「里中さん心の中で「解除」って思って!」
「う、うん!」
すぐさま里中は目をつぶった。
「早くなんとか言ってくだ・・・あれ?私どうかしていました?妙にすっきりしているんですが」
「すみません!」
里中が勢いよく謝った。
「私の能力?のせいで西木戸先輩を巻き込んでしまってすみませんでした!」
「いや、大丈夫ですから頭を上げてください」
急に頭を下げられて慌てているようだった。
「でも、これで『ダスト』がそろってきましたね」
光が調子を取り戻してきた。
「でも、説明が大変だな」
「ですね、先輩」
「あの~さっき言っている『ダスト』ってあの早見教授の『超能力を持つ人間の思考判断及び共通している環境』の論文中に出てくるやつのことですよね?」
「あの論文を知っているのか?」
「早見教授を手伝っている鎌田良美が私の姉で、よく話を聞かせてもらっていたんです。」
「じゃあ話が早いですね。里中ちゃん、今からいう事は現実味がなくて、とても恐ろしいこと。命を懸けるとか中途半端に言えなくなるよ?もちろん自分の命も危うくなる。最悪の場合は、」
コロンが言葉を詰まらせたときにうつりが言った。
「紅蘭の再来」
この町が紅蘭市と言われ始めた十一年前。ここでは戦後最大級の大火災『紅蘭大火災』と言われ、人はそれを『紅蘭』と呼ぶようになった。
「もしも起こってしまったら今度こそ、この町は再起不能になるかも」




