第一話 奇妙な邂逅(かいこう)
ハァ、ハァ、
崩れたコンクリート、ひび割れた大地、
傾いた看板。
どこまで進んでも地獄のような景色は変わらず進んでいく。
地獄をただひとり往く。
ブォーン——。
羽音が鳴り響く。無機質な無駄のないフォルムの飛行機。
幾多ものドローンがすぐそこを飛ぶ。
少年は瓦礫に身を潜め、傷ついた患部を抑え悲痛な悶絶をあげる。
◇
なんてことないただの少年、『大地』。
彼は今日もいつものように噛みすぎて味もしないガムみたいな高校生活を送っていた。
かつて小学生の頃に味わったあの経験、恐怖。それが彼を生涯苦しめていたのだ。
傷ついた痛みから、
『できる限りヒトを傷つけない。』
それだけを考えて過ごしてきたティーン時代。
しかし彼自信もその暗い過去に自らの人生の悔いをなすりつけていたのだ。
大地は静かな性格に変わってしまった。
小学生だったあの日、
「今日も学校楽しかったなぁ、早く帰って宿題しなきゃ」
そんなセリフはもはや痛みと共に心の中の闇に閉ざしてしまった。
いつもと変わらず、いや、少しいつもと違った。
家の最寄りのバス停、
いつも通りチャイムを押してバスを降りた。
後続していた現代では風変わりな古びた赤いマントの老紳士が自身のマントを踏んで倒れて来たのだ。
咄嗟に大地は紳士を支えた。
重いはずの体が何故だかふんわりと感じられた。
少し背の高いその紳士を見上げて、大地はソレを思い出してしまった。
その構図はかつて自らにトラウマを与えたそれとなんら変わらなく思えてしまったのだ。
「アアァァァ!痛い痛い痛い!」
隠して来たはずのあの日の記憶。それが一気に脳を蝕む。隠そうとすればするほど、もはや彼自身ではどうにもできないほどだった。
紳士は優しく頭へ手を乗せる。
大人の男から優しく触れられた大地は泣き崩れてしまう。
バスは止まったままだ。
「---」
老紳士が何か囁くと、大地の視界は緑の光に染まる。
そのまま瞼が重く彼の怯えた瞳を覆い隠す。
老紳士は大地を抱えてバスに反対向きから入り、座席に優しく寝かす。
老紳士がバスを降りると、大地を乗せたバスは、スライドするように増殖し、運転手のないまま大地を乗せて虚空へと消えて行った——。
老紳士は苦い表情の後、首から下げたペンダントを撫でて、空間の狭間に消えて行った。




