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第6章:境界線 — イェニチェリと鋼の鳥

I. カライン上空の終末リハーサル

アンタルヤ、カライン飛行場周辺 — 2026年4月7日、午前4時15分


夜の静寂は、アンタルヤの空に突如として現れ、次々と炸裂する照明弾によって切り裂かれた。トルコ空軍所属の2機のF-16戦闘機が、レーダーに捕捉されたいかなる民間・軍事コードにも該当しないその巨大な「質量」を識別すべく、低空飛行に移っていた。パイロットのヘルメットに装着された暗視カメラが捉えた映像を司令部に送る際、彼らの声は震えていた。


「本部、こちらパルス1。自分の目が信じられません……。カライン台地の上に巨大な城塞構造物を確認。電飾はなく、数千の小さな火の点……。まるで中世の都市が一夜にしてここに建設されたようです。」


「パルス1、接近するな! 当該海域には強力な電磁場が発生しており、アビオニクス(航空電子機器)に異常が出ている。即刻離脱せよ!」


その頃、ドームの内部、トプカプ宮殿の銃眼では、ボアッチが自ら研磨したレンズを用いた望遠鏡(スルタン直製の光学機器)で空を監視していた。F-16のエンジンが放つ凄まじい轟音とソニックブームが、ドームの透明な表面に紫色の光輪ハローを描き出していた。


「陛下!」ボアッチはスルタンを振り返り叫んだ。「空の龍が襲来しております! しかし、我らの城壁に触れることは叶わず、目に見えぬ壁に衝突して逃げ去ってゆきます。」


ファティは手を後ろに組み、威風堂々と城壁に登った。「あれは龍ではない、ボアッチ。ヤヴズが申していた『鉄の鳥』だ。見よ、翼に月星章(トルコ国旗の紋章)がある。我ら自身の末裔たちが、我らを侵略者と見なし、火を噴こうとしておるのだ。」


II. 外交の初火花:ヤヴズの賭け

王宮の中庭で、ヤヴズはタブレットの微弱な信号を使い、出口を模索していた。ドームが発生させるノイズによりモバイルデータ通信はほぼ不可能だったが、「魔術の天蓋」の周波数帯域を解析し、わずかな「隙間」を突き止めた。


「陛下、」ヤヴズは息を切らして言った。「外の指揮官たちと対話しなければ、彼らはここをテロ攻撃かエイリアンの侵略だと思い込み、重火器で攻撃してきます。ドームは弾丸を止めるでしょうが、その衝撃エネルギー(運動エネルギー)は内部の木造建築を地震のように破壊します。どうか、ボアッチ殿と共に境界線へ降りる許可を。」


ファティは、ヤヴズの瞳に宿る現代的な誠実さを推し量った。「行け、ヤヴズ。ボアッチと十名の精鋭イェニチェリを連れてゆけ。だが彼らに伝えよ。この地の真のあるじは客分として来るのではない、ただ我が家へと帰還したのだとな。我らはここにあり、どこへも去らぬ。」


III. 境界の邂逅:1453年と2026年

カライン洞窟の直前に広がる平地には、アンタルヤ県憲兵隊の装甲車と特殊部隊(JÖH)がバリケードを築いていた。サーチライトがドームの表面を照らし出す中、突如としてドームの波打つ質感が高座の扉のように開いた。


先頭には現代のカーゴパンツとテクニカルジャケットを纏ったヤヴズ、そのすぐ後ろには、身長二メートルに及び、サーチライトに甲冑をぎらつかせながら軍旗を掲げるボアッチと十名のイェニチェリが姿を現した。


憲兵特殊部隊は、目の前の光景に凍り付いた。銃口は向けられたが、誰も引き金を引くことはできなかった。なぜなら、目の前の人物たちは映画のセットから飛び出してきたエキストラなどではなく、千年の歴史を背負い、呼吸し、汗の匂いを漂わせる凄まじい「現実」としてそこに立っていたからだ。


ボアッチは、地鳴りのような声で咆哮した。「控えよ! 世界の覇者、スルタン・メフメト・ハン陛下の使者である! 武器を収めよ、さもなくば大地の憤怒がお前たちを飲み込むであろう!」


ボアッチの声は、拡声器を通さずとも谷全体に反響した。その声は単なる肺活量によるものではなく、アルタイの「元素の封印」がもたらした神秘的な共鳴を帯びていた。


IV. 学術的衝撃:教授の涙

ヘリコプターで現場に急行したアンタルヤ知事と、アクデニズ大学歴史学部長のセリム教授は、車から降りた瞬間にその光景の前に膝を突いた。


「これは……ありえない、」セリム教授は震える声で呟いた。「ボアッチ殿……。ファティの最も秘められた右腕として記録にあるが、墓所が一切不明だったあの男……。そして後ろの軍旗。この織りの技術は間違いなく15世紀のものだ。合成繊維が一切使われていない!」


ヤヴズは前に踏み出し、憲兵隊の指揮官のもとへ駆け寄った。「隊長、私は天体物理学者のヤヴズ・アクソイです。カライン洞窟の調査チームの者です。中にいるのは本物のファティ・スルタン・メフメトです。タイムスリップが起きたのです。どうか撃たないでください、中には十五万人の民間人がいます。彼らは我々の祖先なのです!」


V. ファティの初勅:国内秩序と農業

ドームの内部では、ファティが科学者らしい緻密さで事態を掌握していた。彼はエヴリヤ・チェレビを呼び寄せた。


「エヴリヤ、」スルタンは命じた。「民が怯えておる。星の位置が変わり、潮の香りが消えたことに気づいたのだ。彼らに伝えよ。これは終末ではなく、聖遷ヒジュラであるとな。都のすべての穀物庫を封印せよ。『大地の封印』の効果により、カラインのこの不毛な土壌は、我らが持ってきた肥沃な土と融合するであろう。明日の黎明、イスタンブールの七つの丘で耕作を始める。我々は外のあの『焼けた金属』の臭いがする世界に頼りはせぬ。」


ファティは机に戻り、コンパスを用いてアンタルヤの地図を、自らが持ってきたイスタンブールの地図の上に重ね合わせた。「ボアッチが外で剣を振るっている間、我々はこの二つの世界をいかに『縫い合わせる』かを見出さねばならぬ。ヤヴズが申していた『インターネット』という目に見えぬ網……。それをドームの中へ引き込むのだ。情報が届かねば、真の征服は成し遂げられぬ。」

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