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第7話 環境の変化

 なんだか平民にはあり得ない一日を過ごしたような気がするなぁ。と思いながら、帰りの馬車に揺られていた。何故かニック殿下が護衛をしている。私は平民なんだけどなぁ。確か、久しぶりに家でのんびりできる~♪とのんびりしていたら、お城からの使者様から陛下がお呼びということで、王城に行くことになったのよね…そしたら陛下が‘セアラちゃんを愛でる会’の会員になるとか言い出したのよね。などと考えていると、王城からの道もあっという間に着いた。




 店に着いて驚いた。泣きたくなったけど、泣いていられない。

薬草はぐちゃぐちゃに散乱してその上から水でもかけたんだろうか?

床に散乱した薬草たち。乾燥していたはずなのに、水がかけられたのだろうか?ぐちゃぐちゃになっている。


「嫌だわ、臭い。この店からかしら?」

 そう言うのはこの間からやたらと絡んでくる貴族令嬢が今回も絡んでくる。


「俺はこのねーちゃんがゴロツキに色々指示してるのを見たぜ?セアラちゃんのところの店の戸をぶち破って中に入って行くのも見た」

 それをかわきりに「俺も」「私も」と多くの声が聞こえられた。

「なんなの?平民風情が何を言っても聞かないのよ!」

「貴女の爵位は?ああ、家の爵位であって、貴女自身に爵位があるわけじゃないですよね。それじゃあ、このセアラ嬢の方が爵位が高いことになりますね」

 (一時的にでも頷いておいた方がいい。)とニック様に言われた。

「そうですね。私は爵位の無い貴女と違い、完全に男爵位を陛下から頂いています」

 貴族令嬢は唇を噛んだのか、口元から赤い液体が流れた。

「そこの貴族令嬢を憲兵に差し出せ!追って沙汰を申し渡す」

 ニック様はそう言って、茫然自失、かつ、泣きそうな私を抱きとめてくれた。

「泣き顔を聴衆に見られたくないんだろ?」

 そう言って、私の顔をニック様の胸に押し当てた。と同時に、堰を切るように涙があふれた。

 店での祖母や母との思い出まで踏み躙られた思いがした。

「ふむ。あの貴族令嬢には厳しい沙汰を。修道院などで改心するとは思えない。離島で自給自足で生活をしてもらおう」

 私がどんな思いで薬を調合し、どんな思いで患者さんと向き合い、どんな思いで患者さんに薬を渡してきたのか。そんな思いまで踏み躙られたようで、心が張り裂けそうだった。



「この状態では寝床もぐちゃぐちゃだろう。王城に泊まる事にしなさい」

 平民の私はYES一択です。

 はっ、ニック様の服が私の涙などでぐちゃぐちゃに!!

「申し訳ございません!責任をもって洗濯をしたいと思います!」

 ニック様は柔らかく微笑みながら「ランドリーメイドが洗うからいいよ」と言った。平民としては、『メイドに種類があるのか……』です。

 ……家の掃除どうしようか?考えるとなんか落ち込む。

「店は完璧に守ると言ったのに情けない。今回は本当に申し訳ない!」

 あぁぁ、王家の人が頭下げたらダメだよぉ!

「「今後はどうしようかなぁ?」」

 あの場所に固執するのもダメなのかな?他の場所で……あぁ、でも常連さんが……。

 ニック様に頭を撫でられた。大きな手。力加減が上手くできないのかな?音をつけるなら、『なでなで』じゃなくて、『ガシガシ』なんだけど、それでも嬉しかったです!

「また明日考える事にします!」



 王城に着くと、陛下・セイムス殿下に「セアラちゃんごめんね~」と、いきなり謝られた。いや、だから王家の人がそんな簡単に頭下げたらダメですよ!とは言ったものの。どうして最近の王家の人は簡単に頭を下げるかなぁ?

「だってセアラちゃんの大事な場所をぐちゃぐちゃにしたんでしょ?あの貴族令嬢?ニクソンに気があったの?貴族令嬢って言っても、没落しそうな子爵家だよ?無理無理!」

 そうだったんだ。性格に問題あるしね。私だったら、あんな卑怯な人を伴侶にしたいとは思わないなぁ。

「爵位はともかくとして、やってることがどんなに卑劣なことかわかってなかったみたいなのが問題だな。ニクソンは実力主義を掲げる王宮騎士団長だっていうのに、平民と嘲っている時点でダメだろう?」

 陛下もセイムス殿下もなかなか言う。その通りなんだけど。

「すみませんが、お部屋をお借りします。一番狭い部屋で……」

「「「ダメだ!」」」

「セアラちゃんはロゼットの出産にも立ち会った立派な薬師だ」

「セアラは騎士団でもその薬が重宝している」

「ふむ。街でのセアラちゃんの噂も聞いたぞ。セアラちゃん、大人気だな?」

「そうなんですか?」

「セアラちゃんなら当然だろう?騎士達の心もグッとつかんだんだろう?」

「私もロゼットも‘セアラちゃんを愛でる会’の会員だしな」

「私も仲間に入りたい」

「「父上??」」

 ‘セアラちゃんを愛でる会’の会員はやんごとなき人ばかりになりそう……。


「あの~、それで私はどのお部屋を使えばいいのでしょうか?」

 陛下はニック様の顔を見た。

「ニクソンの隣の部屋でいいんじゃないか?」

 それって将来的にニック様の奥様になる方が使う部屋では?

「私のような平民が畏れ多いです。すごくいいお部屋ですよね?」

「安心するがよい。部屋の間の戸はキチンとカギをかけておくから(嘘だけど)」

 安心できないよ。ド平民がそんな良い部屋。枕が変わって眠れないどころじゃないかもしれない!



セアラちゃんの心がピンチです!!

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― 新着の感想 ―
そっか〜忘れかけてたニック様に片思いの貴族令嬢の登場か。騎士団に行く時は、お店の警護ありだったけど、今回は急な王様謁見でお店は留守だったからね。前々から隙を窺っていたのかな。お城に泊まりなさいってニッ…
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