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98 去り際は愛と共に


残された私たちは、店の中を見渡しながら


「私達の楽園は、ジェイとベル達に託すのね。

束の間の平穏だったね〜。楽しかったな。

今日で見納めね。」


そう言いながら、店で一番高いワインを開ける。

店内を眺められるテーブル席のソファーに移動してワイングラスにワインを注いだ。

乾杯をしたらウィルが


「今日は、最後の晩餐だね。

何を食べようかな?二人で何か作る?

それとも、何か買ってくる?

最後か〜。覚悟はしてたけど早かったね。

けど、俺達を消しても流れは変えられないのに。

圧倒的な数で負けるのにね。

俺達は負けたけど、平民とサイラスの勝ちだ。


ローズ。

変な事、言っていい?

俺さ、ちょっと嬉しい。

死ぬ時は、誰にでも来るだろう?

どっちか先に死んだり。


けど、二人で一緒に死ねるなんてさ。

俺は嬉しい。」


何ともウィルらしいと思ってしまって笑ってしまう。


「何でも嬉しいのね。ウィルらしいわ。

死んだあとに神に胸を張って言えるわ。

やり切ったわ〜って。

ありがとうウィル。楽しい人生だった。


さ、フィナーレよ。

これから死のうって時に食欲はあまりないわね。

店にあるもので、軽く食べるくらいで良くない?

お酒はしこたま飲んでやるわ。


あっ、皆んなに手紙でも書く?

それとも何も残さない方が良いかしら?

皆んな怒るかしらね。」


そう言うとウィルは、


「手紙なんて書く時間あるならローズとの時間に当てるよ。一秒でも大事なんだ。


許される限り君を感じて居たい。」


そう言って私をソファーに押し倒す。

顔を指で弄ぶ。くすぐったくて笑ったしまう。


「ちょっと、くすぐったいわ。

それに、戸締りして結界張ってからにしてよ。

誰か入ってきたら嫌でしょ?」


それから、戸締りをして結界を張る。

厨房に行き、サンドイッチなどの軽食にフルーツなんかもカットした。

作りながら、エデンで死んだら曰く付き物件になるじゃないとか笑い話をしてふざけ合った。


するとウィルが


「なぁ〜。明け方、あの丘に移動しないか?

俺達の死場所だ。王都が一望出来るし。

ベルには、メモを残そう。逃げてないぞってね。」


あの丘は想い出深い、あの場所が始まりなら終わりもって事かな?


テーブルに食事を運びながら私は言う。


「ウィル。死に方は決めた?

魔法を上手く使い切る方法もあるけどね。

試してみる?多分、眠る様に命の燈が消えると思うけど。」


するとウィルが不思議そうに


「そんな大量に魔力を放出するって何するの?」


と聞いてくる。


「国の浄化よ。

ウィルの魔力を借りて国中に光魔法を放つわ。

二人の魔力量を使い切れる。

これに、術式を刻むわ。これを依代に二人で魔力全てを注ぎ込もう。

その間に想いを込めたら、届いて欲しい人の所に想いが届くわ、きっと。

感度が良い人なら伝わると思う。

手紙の代わりね。」


そう言って、店の置物の大きな水晶を手に取った。


「なるほどね。

最後に国の穢れでも取るつもり?

それとも、残していく家族への愛かい?

君は死に方まで斬新だね。」


そう言って笑うのだ。

斬新って何よ〜。痛いのとか嫌じゃん。

なんて、抗議したりして二人で笑い合った。


お腹を満たし、お酒も進む。

笑い話は、いつしか愛の囁きに変わり

お互いが求め合った。

余すとこなく味わい尽くす様に。


夜中になり、私達は身体を清めた。

お気に入りの服を着て、バッチリ決める。


店のカウンターにメモを残し、丘に転移した。


ベンチに座り、月に照らされた王都を見渡す。

城を見てサイラスの顔が浮かぶ。

怒るだろうな〜なんて考えてしまった。


誰にも言わずに、ひっそりと死ぬのは私達の我儘だ。

残された方の気持ちも、エリーの気持ちも蔑ろにしてるのだろう。


きっと、何処かで望んで居たんだと思う。

自分達がしてきた過ち全ての罰を受けたかったのだと思う。


これから死ぬと言うのに清々しかった。

これも自己満足に過ぎないんだ。

それでも良い。私達は、やり切った。


「ねぇ〜ウィル。

そう言えば、女神が言ってたわよね?

ご褒美があるって。

何かしらね?死後、私とウィルの行く場所は違うかもね。


私は転生前に、神が待ってると言ったわ。

それにガロに質問の答えを言わなきゃ。


きっと、ウィルは女神の所よね。


それとも、皆んな勢揃いかしら?

どうなのかな?少し楽しみね。」


そう言うとウィルは


「離れるの?

はぁ〜寂しいな〜。

でも、記憶が無くなっても生まれ変わっても

君を見付けたい。

きっと、会ったら分かるんだ。

俺の運命の人だって。

逃げないでよ。」


そう言って笑った。


そして、術式を刻んだ水晶を地面に置く。

二人、向き合い水晶玉に手を乗せた。


身体中の魔力を注ぎ込む様に意識を集中しながら家族の顔を想い浮かべる。

一人一人へ。感謝と愛の想いを込めていく。


水晶玉から魔力が溢れて大地を通して広がる。

やがて、大地から光の粒が黄砂の様に国に吹き荒れた。


魔力が尽きていく、もう出ない…。

薄れる意識の中、ウィルと目が合う。

最後の力を振り絞りウィルに口付けをし崩れ落ちた。



∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞



朝になり、エデンに戻ったベルナルドは一枚のメモに目を通す。


そして、王都が一望出来る丘に辿り着く。


そこには、地面に座り込みローズマリーを包み込む様に抱くウィリアムが居た。


近寄ると、二人の顔は穏やかに微笑んでいて

寝ている様に見えた。


確かめたが、息はない。


二人の間にある水晶玉を取りベルナルドは呟く。



「何をした?

朝方、夢に出て来やがって。メモなんてなくてもオマエ達の想いも気持ちも分かったよ。


ありがとな。

俺が死ぬまで、オマエ達の家族は守るから。

エデンもジェイに託す。

亡骸も、家族に許可を取ったらココに埋めてやる。

この水晶玉と一緒にな。」



そしてベルナルドは、初めて人の為に涙した。

人を失う哀しみを初めて理解したのだった。



ウィリアムとローズマリーの亡骸はエデンに運んだ。そして、ベルナルドは城とスペンサー家に全てを伝えた。


そして、自分達に哀しみの結末を迎えさせた者に、2人の死を伝えエリーの首輪と術式を解かせた。


その後、速やかに始末したのだった。

共犯者を吐かせてから。



ウィリアムとローズマリーの家族が、一堂にエデンへ集まっていた。

二人の穏やかな幸せそうな顔を見ていた。


ベルナルドは殺される覚悟はしていた。

しかし、誰も責めなかった。

反対派の貴族が差し向けた刃。それらを全て消すと誓うベルナルドにジェイとサイラスが付き合うと言った。


二人の死後も流れは変わらない。

むしろ反対派貴族への批判が加速する。

ベルナルド達が手を下す前に一部、過激な平民により敵意を向けられ命を落とした。


それは、犯罪ではなく正義の制裁と世論が動く。


我が正義と言う者がアチコチで生まれて行く。

サイラスは、長になった平民に対し領地運営など政治的などを叩き込む事に専念した。


それが落ち着いた頃に、全ての国民に問うた。

各領地の長に国の中枢の責務を負わせる。

各、長は補佐をそれぞれが決める事。

その長の中から国のリーダーを決める。

任期は3年。3年毎に投票で決める。

それで良いかと。


民達は賛成した。

この世の悪を始末したという空気感から纏まっていた。

悪役は、反対派貴族達。

ウィリアムとローズマリーは悲劇の犠牲者となった。


きっと、二人は望まないとベルナルドは嘆いた。

あの丘に、二人を埋葬した。



月命日に、いつもベルナルドは脚を運ぶ。

ベンチに座り、二人に話し掛ける。


「皆んな、オマエ達が恋しいんだ。

見ろよ。この花束の数を。

いつか、少しづつ減るだろうけどな。

俺も会いてぇよ。オマエ達に…。」



そう言って空を仰ぎ見る。

満天の星空が輝く。

ウィリアムとローズマリーが微笑んだ気がした。



弱肉強食な日々の始まりだ。

平等など、何処にもない。己の個性に価値を付ける時代だ。生き残りたければ、考え動き己の個性を証明しろ。


いつだって、悪役が居て正義を掲げる。

勝った者が正義を名乗る。

それが波を作り、取り残されたら苦渋を呑む。


ベルナルドは思う。


(なぁ〜。ウィル?お前が王だったら、どんな国になってたんだろうな?お前は望まなかったけど、俺は王たるウィリアムの為に生きる道もあった気がするよ。お前が俺を人間にしちまった。あのままの俺だったら、お前を死なせなかったよ。馬鹿だなウィル。俺は、お前がくれただけの愛を返したかったよ。)




エリアーナの声がして振り返るベルナルド。

赤と黒の薔薇の花束を置くエリアーナの元に歩み寄り肩を抱く。

二人、夜空の星屑を見上げ一礼し、夜の闇へと消えた。







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