41 その頃ガロは…
精霊王は、ほとんどの時を
女神の領域で過ごしていた。
女神は気まぐれで、ほとんど地上には降りない。
精霊王という名ではあるが、
女神と、あまり変わらない存在でもある。
自我と言う魂の核を持ちながら
エネルギー的な存在。
聖霊なのだ。
地上に降りると言う事は、肉体を宿すこと。
長い時間を地上で過ごせば欲が生まれる。
だから、女神は地上にはあまり行かない。
一方で、精霊王の名を持つガロは
女神より人間寄りだ。
しかし、人間に近づき過ぎず
聖霊に近づき過ぎず
だからこそ、精霊王の名を捨てない。
女神が問う。
「ねぇ、ガロ。
なんで最近は地上に降りないの?
ローズマリーだっけ?
随分と気に入ってるみたいね。
最近は、神から言われて嫌々
降りてった割には、ずっと一緒だったのに。
気まぐれかしら?」
ワザとらしく尋ねてくる女神に精霊王は
「チッ。
何でも見通してますみたいな顔して聞くな。
そうだよ。
地上にいると独占欲が出てくるからだよ。
聖霊と人間の交わる時なんて一瞬だ。
アルティアも分かるだろ?
別に人間としてのマリーを気に入ってる訳ではない。
核の輝きに惚れてる。
アルティアだって、初代国王に惚れ込んだ訳だろ。
アルティアと違って
俺は、アイツの魂の核の輝きに執着してるんだろうな。
ここに長く居ても、それは変わらない。」
精霊王の話を聞いて女神は言う。
「あら。
そんな昔のこと聞かれてもなぁ。
私はね、あの人の子孫を見守るのが楽しいの。
あの人がアルティアの名をくれた。
この姿を形どってくれたわ。
あの人の愛した、この国を私も愛してるの。
そして、ウィリアムは初代の生まれ変わり。
国王にしたかったけど
フラれちゃうみたいだわ〜。
でも、ウィリアムがしたい様に生きて欲しいわ。
初代とは違う生き方をして欲しいとも思うのよ。
初代と同じ瞳をプレゼントしてみたの。
国王になったら、付加価値があったのだけど
仕方ないわね。
性格的には、サイラスの方が初代に似てるのよね〜。
見てて飽きないわ。
見方を変えれば、
私だって、この国と国王に執着してるわよ。
あの子が今世の人生を全うしたら
どうする気?
私の様に子孫を見守る選択肢もあるわ。
それとも、永遠の牢獄に閉じ込める?
ローズマリーとしての魂で
ある次元に留めるなんて、牢獄と一緒よ。
それとも、ガロ。貴方が堕ちるの?
貴方の選択にとやかく言わないけどね。
貴方が堕ちたら、ちょっと寂しいわ。」
女神が少し哀しそうな顔をする。
精霊王は少し黙っていたが
やがて言葉を紡ぐ
「分からない。
アイツの答えも聞かなきゃな。
この想いが、人間の恋愛とは違うからな。
そんな生ぬるいもんじゃねぇ。
その時、俺が感じたままに動くよ。
俺が人間に堕ちるのも悪くないだろ。
聖霊としては駄目すぎる。
自我が強すぎて。だろ?
アルティアもだけどな。
一つの名や姿形に拘るなんて
聖霊として、失格だろ。」
女神は言う。
「ガロ。貴方、地上に長くいすぎて
言うことが、人間らしいわね。
そもそも神の領域に
良い悪いの概念なんてないわ。
ただ、あるだけよ。
でも、人間らしさ、嫌いじゃないわよ。
ほら、ローズマリーが楽しそうよ〜。
ウィリアムと良い感じね。
あの二人がどうなるか
私も興味あるわぁ〜。
私としても、ウィリアムには幸せに生きて欲しいもの。
貴方も、そうでしょう?
ローズマリーが楽しそうに幸せに生きてるのは嬉しいでしょ。」
何も無い空間に流れる映像に
焚き火を囲みながら、談笑する男女が数人。
その映像に目をやりながら精霊王が呟く。
「本当に楽しそうだな。
輝きが増してる。
ローズマリーには
ただただ笑ってて欲しいよ。
後悔なく生きて欲しい。」
そんな精霊王を微笑みながら見守る女神。
その領域の時は
静かに流れていくのだった。




