13 狂い出した物語
師匠は帰って来るなり機嫌が悪い。
明らかに顔が怖い。
「師匠?どうされましたか?
神はなんと?」
私が話しかけると厳しい顔で話し出す。
『マリー。あの例の女の物語が狂い出したぞ。
卒業まで待ったら全てが手遅れだ。
当初よりも、闇魔法の強度が高いんだ。
魔石に強力に闇魔法を込めてあるとはな。
数ヶ月も早く、あの女の物語とやらと
マリーの人生が交差するぞ。
お前の、兄もヤバいかも知れない。
学園に行くぞ!
物語とやらは、もう終わりにしてもらう。
学園を封鎖する準備を整えろ。
親父殿、魅了魔法に侵されてる奴等が
多数いるぞ。
魔術無効化を付与してある魔石でもリングでも
なんでもいいから、今直ぐ掻き集めろ!
息子が魅了に侵されている。
王の息子もな…
早ければ早い方がいい。
大至急、人員を掻き集めろ。
準備が出来たら呼べ
俺とマリーで陣を王城前に描く。
そこに集合だ。
転移で行くぞ。』
話を聞き終わると、父は何も言わず転移した。
「ねぇ。師匠…
お兄様は…お兄様は大丈夫なの?
ヤバいって何が?
居なくなっちゃうとか無いよね?
大丈夫だよね?」
喋りながら、涙が出てきていた。
お兄様の状態がわからない。
魅了って何?
魅了くらいで何か問題あるの?
いろんな思考が駆け巡る。
『高濃度の闇魔法が魔石に込められ
それが原因で魅了に侵されてる。
魅了に関しては浄化で消せる。
ただ…
後が大変なんだ。
今は、大丈夫だ。心配無い。
きっと、あの女にメロメロで良い気分でいるだろうさ。
魅了を解除したら、暫く眠りから覚めないだろう。
覚めても、後遺症が出るかもな…
それよりも心配なのは精神だ。
精神を病むのは厄介だ。
薬も魔法も意味を成さない…
アイツの精神力に賭けるしかないかもな。
まっ、最悪の想定だ。
絶対ではない。軽く済むかもしれない。』
何も言えなくなった。
要は、鬱病の状態になってしまうという事だ。
私は、どのように力になれるのか…
ヒロインは、知ってて魔石を使ってるの?
固まる私を、師匠が優しく抱きしめてくれる。
「辛くなったらモフモフさせてやるっ。
小ちゃい、狼でも犬にでもなってやる。
だから元気出せ。
お前の、辛い顔は見たくない。
俺は……
笑えっ!』
最初は優しかったのに
なんで最後はキレてんのよっ!
ムカつくっ!
師匠を押し退けて睨み付ける。
『何、睨んでんだよ!
笑えって言ったんだ!睨めっこじゃねーぞっ』
逆ギレしやがった。
ほんとクソガキみたい。
「笑わせたいなら、面白いこと言ってみなさいよ!
まったく!早く魔法陣描きに行きますよっ!」
プリプリ怒りながら転移して行ったローズマリーを目で追いながら
ガロは呟く。
『俺は…お前の笑顔を護りたいだけなのにな。
神の、お戯れも。神の御意志も。
どぉ〜でもいい…
お前が、命尽きた時。永遠の時を俺と一緒に過ごしてくれるか?
なぁー?ローズマリー…』
誰にも届かぬ
その言霊を
神だけが
記憶の片隅に
大切にしまうのでした。




