② サイドJ ヒデオ その3 パーティー
『三年B組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
深夜0時過ぎ。
いきなりの大音響で起こされる。教室の机で眠っていた。
『WARNING! WARNING!』
頭に警告音が鳴り響く。
『WARNING! WARNING! 最終ミッションが開始されます! 教室に集まって下さい』
集まるも何も全員、教室にいる。
誰もポイントを持っていない。
ロッカーを部屋に変えることはできないのだ。
だが、そのロッカーの一つがゆっくりと開く。
リリン。そう書かれたロッカー。
そこから血塗れの魔法少女が現れた。
俺とカオリが来る前にこのクラスに生き残りがいたのか。
視線が定まっていなかった。なにやらブツブツと小声で独り言を呟きながら席に座る。
もう驚きはしない。
男子6名。女子8名。
合計14名。
名前もわからない。
自己紹介をする余裕もなく、簡潔にルールだけを説明した。
男は俺の他は、警官、ゆるキャラの着ぐるみ、空手家、大工、詩人。
女はカオリ、巫女、老婆、ナース、裸お姉さん、ヘルメットライダースーツ、OL、魔法少女。
ちなみに裸お姉さんには、俺の冬服学生服を羽織らせた。そのままだと集中できないからだ。
多種多様な人間模様。
まとめなくてはいけない。
一人も死なせずにクリアさせたい。
「おい、何が始まるんだっ」
「説明しろっ、早くっ」
警官と大工が騒いでいる。
女性陣は怯えているのか席でじっとしている。
「黒板に集中してくれ。説明が始まるはずだ」
皆が黒板の方を向く。
黒板に自動で文字が書き込まれ出した。
『最終ミッション 無限回廊』
『メインミッション
デウス・エクス・マキナの討伐 ポイント100000P』
『ザブミッション
機械化ドラゴン五体の討伐 ポイント50000P』
『制限時間 24時間』
『強制参加ポイント 1000P 』
『場所 最果ての地』
強制参加。
教室に残ってもらうことは出来ない。
車椅子のカオリと老婆は戦力にならない。
守れるか。いや、守らなければならない。
黒板には更なる文字が書き込まれていく。
『貴方がたの中にこのゲームを作った神がまぎれています』
『神を呼び出した者と共にその者を倒してください。
それがゲームクリアの条件です』
『もし、神を倒す前に最後のボスが倒されたなら、全員ゲームオーバーになります』
『ただし』
『神を呼び出した者が神より先に倒れた場合、神と共にいた者がゲームクリアの権利を得ます』
『尚、最終ミッションに限り、ミッション中に一度だけパーティーの変更が出来ます。パーティーになりたい人に触るだけで可能です。うまく活用してください』
アイツだ。
このゲームを作った奴がここにいる。
だが、教室には見当たらない。
着ぐるみの中にいる可能性もあるが、俺よりも後に来たとは考えにくい。
A組にいるのだろう。
呼び出した者も、あの男も。
「誰だっ、お前が黒幕かっ」
「ふざけるなっ、お前だろうっ」
警官と大工が喧嘩をしている。
止めている暇がない。
もうすぐ始まるはずだ。
全員が助かるには、皆で協力してあの男を倒せばいい。
顔を見れば思い出すはずだ。
倒した後、呼び出した者と共にボスを倒す。
大丈夫。慌てずに説得する。
俺ならできる。
帰る。俺は帰ってしなければならないことがある。
そうだ。俺は何かをしていた。
それがなんだったか。
とても大事なことだったはずなのに、それが思い出せない。
すっぽりと抜け落ちたように記憶が抜けている。
「ビデオさん」
カオリの声ではっ、となる。
教室中がザワザワと喧騒に包まれている。
「聞いてくれっ、俺はこのゲームを作った奴を知っているっ。この教室にはそいつはいない。もう一つ教室があるんだっ」
皆が注目してこちらを見る。
「なんでそんなこと知ってるの? あんた、怪しいわよ」
「そうだ。お前が黒幕じゃないのかっ」
「俺は最初から犯人はお前だと思っていた」
ナースがそう言うと、皆、同調して俺を責め立てる。
「信じたくなければ信じなくて構わない。だが、俺が黒幕なら俺といることでゲームクリアできるかもしれないっ、そうだろう」
黒板を指差す。
『神を呼び出した者が神より先に倒れた場合、神と共にいた者がゲームクリアの権利を得ます』
教室の皆が黙る。
「皆、俺とパーティーを組んでくれ。ミッション中に俺が黒幕を探し出す。そいつを呼び出した奴もだ。その時に皆、自分の選択でパーティーを組み直せばいい」
パーティーを組んでいれば、全員の位置がわかる。
まずは全員を誘導する。
黒幕と思われていても構わない。
「携帯でパーティーを選んでくれ。早くっ、時間がないっ」
「わたしはビデオさんを信じるわ。パーティーを組んでください」
カオリがパーティーに入る。
「あーしも、服貸してくれたしね」
裸お姉さんもそれに続くと、携帯のパーティー欄が一斉に増えていく。
「俺は信じてないからなっ」
警官が怒鳴っている。構わない。もし全員が俺を憎むことになっても必ず助けてやる。
パーティーの人数が13人になる。
あと一人。誰が入ってないのか?
名前では誰が誰だかわからない。
だが、リリンという魔法少女の名前が入っていないことに気がついた。
「君は」
声をかけようとして思わず止まる。
血塗れの魔法少女はぞっとするような冷たい瞳でこちらを見ている。
「ワッチはいい。もう誰ともパーティーは組まない」
言葉に詰まる。何か声をかけないといけない。
この少女は生きようとしていない。
だが、無情にも。
『出席番号36番 リリンさん』
スピーカーから名前が呼ばれて魔法少女がその場から一瞬で消える。
ついにミッションが始まったのだ。




