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⑪ ドラゴン討伐ミッションの中止

 

『三年A組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』


 いつも昼食後に訪れるミッション予告。

 それが12時前に訪れる。

 スピーカーからの機械音声の後、黒板に自動で文字が書き込まれていく。


『ドラゴン討伐ミッションの中止のお知らせ』


『現在、ドラゴン討伐エリアは侵入者により、壊滅状態』


『ドラゴンの生存確認 なし。白龍王 ナハトム。死亡を確認。ミッション開始。不可能』


『よって本日行う予定のドラゴン討伐ミッションは中止になりました。ご了承下さい』


「なんだ、これは」


 何かが起こっている。

 侵入者。魔王がこちらに来る前に暴れたのか?

 それとも、何か別の......。


 黒板の文字はさらに書き込まれていく。


「マリア、解析」


『判断素材。極少。過去類似。なし。解析できません』


 マリアにも解析出来ない事態。

 異常な何かが起こっている。


『尚、代わりのイベントは昼飯後に発表いたします。

 今後とも......』


 黒板の文字が突然止まる。

 代わりにスピーカーから何か聞こえてくる。


『あ、あかんてっ、姐さんっ、そんな無茶なイベントっ、ちょっ、やめてっ、乳首ドリルはあかんてっ』


 ぷつん、と音声が途切れる。

 それ以降、スピーカーにも黒板にも反応はなかった。


 乳首ドリル?

 黒板に乳首があるかわからないが向こうもだいぶ混乱しているようだ。


「ミッション中止、だと」


 声がして振り向く。

 カムイがロッカーから出てくる。

 黒板の文字を見て歩いて席に向かう。

 だが、いつものシリアス感がない。

 カムイの右足に何かがへばりついている。


「見てんじゃねーぞ」


 へばりついていたモノに睨まれる。

 幼女ラスがだっこちゃん人形のようにカムイの足に抱きついたまま、離れずにいた。

 ヤバすぎる。めっちゃ可愛い。


「カムイ、ミッションは後二回と言っていたな。今回が中止になったら、次が最後のミッションになるのか?」


 アリスがカムイの席の前に立つ。

 足元のラスがうーー、と唸っている。


「わからない。ミッション中止は初めてだ」


 何回も繰り返しているカムイですら初めての状況。

 想像よりも異様な事態なんだろうか。



 昼のチャイムが鳴り、昼食が机に出現する。

 部屋に戻っていた、クリス、リキマル、カナが黒板の文字を見る。


「なんだよ、これ。代わりのイベントって何だ?」


「知らねーよ、またポイントとかくれるんじゃねーか」


 リキマルとカナが食事をしながら話している。


「ねぇ、乳首ドリルって聞こえたんだけど、何かしら。ステキな響きなんだけど、誰かわからない?」


 クリスの言葉は皆、完全に無視している。


「ハジメ、食事はしておいたほうがいい」


 昼食に手をつけない俺にアリスが話しかけてきた。


「もう、何が起きるかわからない」


「そうだな」


 食欲がなくても無理にでも喉に詰め込む。

 いつ、最後の食事になってもおかしくない。


「これ、あげる」


 ルカがいつのまにか横に立っていた。

 食器になにかを入れる。

 干し肉だ。確かハイドにあげていたオヤツだったような気がする。


「あ、ありがとう」


 怖々口に入れてみると、思った以上に固く、噛みきれない。

 だが、口の中に肉の味が充満して悪くない。


「これ、なんの干し肉?」


「リザードマン」


 ぶぼっ、と干し肉を吹き出した。

 正面にいたアリスに干し肉が飛んでいき、頭にぺたんと乗っかる。


「ぶっ、ふふ」


 ルカが口を押さえて顔を背ける。


「ご、ごめん、嘘。ただの牛肉」


 いや、ルカさん。こっち向いてくれ。

 アリスの顔が怖いよ。

 なんか、背後からゴゴゴゴゴとか聞こえてるよ?


「少し、待ってて」


 アリスが干し肉を乗せたまま、ロッカー部屋に入る。

 しばらくして牛乳瓶を持ってきて帰ってくる。

 それを俺の机にどんっ、と置く。


「あげる。味わって飲んで」


 なぜ、牛乳を俺に。まだ昼飯の牛乳も残っている。


「これ、なんの牛乳?」


 アリスは答えない。

 ただ、目で早く飲めと訴えてくる。

 仕方なく口に含む。

 味は普通の牛乳と変わらない。


「美味いか?」


 コクコクとうなづく。


「よかった。頑張ってしぼった甲斐があった」


 アリスが照れながら自分の巨大なものを下から持ち上げてそう言った。


 盛大に牛乳を吹き出した。


 アリスは素早く剣を巨大化してガードする。

 今度はルカに大量の牛乳がぶっかけられた。


「ん、んんっ、ぶはっ」


 いつも仏頂面のアリスが耐えきれず吹き出す。


「じょ、冗談のおかえしだ。す、すまん、ルカ」


 謝りながらもアリスの肩は震えている。


「アリス、ちょっといい?」


「すまん、ルカ、今、無理、ぶっは」


 牛乳まみれのルカを直視してうずくまるアリス。

 その頭にはまだ干し肉が乗っている。


「は、ははっ」


 笑みがこぼれる。

 ついさっき、二人の心臓は止まっていた。

 わかっている。

 誰かが突然、いなくなる。

 ここはそんな世界だ。


 アイと共にいた時を思い出す。

 最後のミッション直前まで笑っていた。

 アイは多分、もうすぐ終わることを悟っていたのだ。

 最後の最後まで笑っていこうと決めていたんだ。

 そして、アリスとルカも。


「大丈夫、大丈夫だ」


 根拠はない。だけど自然と言葉が出る。

 アリスとルカが争いをやめてこちらを向く。


 三人で同時に笑っていた。








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