④ WARNING!
朝食のチャイムが鳴り教室に入る。
ルカとアリス、そして俺は三人ともリラックスできる初期装備ではなく、戦闘用スタイルだ。
狩人に騎士にアサシンの格好で三人、教室の席に座る。
続いて、クリスが姿を現した。
特訓イベントで見て以来のスナイパースタイルのクリス。
以前より装備が増えている。迷彩服には手榴弾らしき物や、小型の銃も装備されている。
「ハーイ」
ルカの方を見てクリスが手を挙げる。
顔は笑っているが目が笑っていない。
ルカは目を合わせず無視している。
やはり、ルカは昨日、何かあったようだ。
続いて、ラスとカムイも現れた。
カムイの装備はずっと変わらないが、ラスの装備に少し驚く。
半分、機械装備。
正確には両手から肩までと腰から足までがカムイと同じ機械の装備だった。
胴体と頭は間に合わなかったのか。
そこだけ、鋼のような鎧と、頭には大きなヘアバンドのような鉢金を装備していた。
そして、巨大な剣が幼女のお尻にあるバンドで止められている。
朝、巨大化させたていたアリスの剣よりもでかい。
これを振り回せるのか。
予想以上に危険な存在だ。
示し合わせたように俺達もカムイ側もフル装備で教室に集まる。
緊張感が高まる。
ミッションでもミッション以外でもいつ戦闘が始まるか予測できない。
「オハッース」
そんな緊張感をぶち壊すようにギターを背負ったリキマルが現れる。
いつものパンクロックなファション。
だが、アリスやルカが言うにはリキマル、カナ、アキラ、シズクの四人はミッション中も同じ格好らしい。
四人とも装備にポイントを使わず、スキルやその他のモノにポイントを使っているらしい。
「なになに、みんな気合い入ってるじゃん。ミッション昼からじゃなかった?」
ギターを器用にくるくる回しながら席に着くリキマル。
昨晩、リキマルら四人はカムイ側かどうか話し合いがあった。
アリスが言うにはリキマル達四人はカムイ達と行動していない可能性が高いとのことだった。
A組のリーダーはラスだが、リキマルとカナは二人パーティーを組んでいて、アキラは単独。シズクも誰ともパーティーを組んでないことをルカの鑑定スキルで調べたそうだ。
四人を仲間に引き込まめないか訪ねたが、アリスとルカは同時に首を振った。
どうやら一癖も二癖もあるようだ。
そんな中、カナとシズクも現れて席に着く。
アキラだけ不在の中、皆、無言で朝食を食べ始める。
バタートーストに卵、チーズに牛乳。定番のBのモーニング。
朝飲んだハチミツコーヒーが飲みたいと思ってしまう。
食事をしながら後ろの席、ラスの左横で食事をするカムイを見る。
口元のマスクが少し開いて肌が見える。
老人のシワのある肌ではない。普通の若々しい肌。
スキルによる幻術か、ポイントでリアルなマスクを装着しているのだろうか。
「見てんじゃねぇぞ、コラ」
そう言ったのは隣のラスだ。
Aの定食だろうか。いや、Aを食べているアリスともまた違う。お子様ランチのような旗のついたチキンライスを食べている。
ほっぺにご飯粒がついていて、ちょっと可愛い。
黒板の方を向く。
相変わらずラスは俺に殺気を隠さず向けてくる。
今にも飛びかかっていきたい衝動を必死に堪えているように見える。
戦いは避けらない。
アリスはミッションは後二回だと言っていた。
その間に俺達は命を賭けて戦うことになるのだろう。
朝食を終えて皆、部屋に戻っていく。
だが、シズクは食事を終えても席から離れない。
「いつも、ギリギリまでアキラを待っている。でも定食が消える五分前には部屋に帰る。そして、アキラはそれからしか教室に来ない」
アリスが首を振る。
ほっておけと言うことだろう。
携帯機械しか愛していないアキラ。
そのアキラをどうしてシズクは好きになったのだろうか。
ショートミドルの黒髪。黒のメガネ。黒のメイド服。
真面目な委員長をイメージさせる彼女は、まるで葬列に並ぶかのような悲しい顔で来ない相手を待っている。
シズクをおいて、ルカとアリスと共に部屋に戻ろうとする。
こちらを向いたシズクと目があった。
シズクが座ったまま、お辞儀をして会釈する。
つられて頭を下げ、会釈した。
刹那。
また記憶の映像が流れ込む。
荒野。
そこにシズクが立ち、何かを叫んでいる。
「待ってるっ、ずっと、待って.....」
だが、その時。
突如、警告音がなり響き、映像が掻き消える。
『WARNING! WARNING!』
頭に鳴り響くサイレンのような警告音。
バカな。
これはリザードマンミッションでジークが現れた時のものだ。
『緊急ミッションを開始します! WARNING!』
教室での警告音。何が起こったのか。
アリスやルカ、シズクにも聞こえているようだ。
警戒して教室を見渡す。
いる。
なにかとてつもないものが教室に存在する。
姿は見えない、だが、狂気を含んだ膨大な殺気が教室中に充満している。
四人とも動けないでいる中、最初に動いたのはシズクだった。
席を立つ。
時計は十時五分前を指していた。
アキラがやってくる時間。
その前に何かをしようとしたのか。
教室に充満していた殺気が一斉にシズクに集中する。
「避けろっ」
思わず叫ぶ。
だが、その前に。
パキッと乾いた枝を折るような音がした。
シズクの首は反転し、逆さまになる。
倒れることもなく、冗談のような構図でそのまま立っている。
その後ろに男は立っていた。
二メートルを越す大男。
長い黒髪は腰あたりまで伸びている。
顔には無精髭が生え、鋭い八重歯が覗いている。
裸だ。武器はおろか、パンツ一枚身につけていない。
見た目だけは普通の人間だ。
だが、一目でわかる。
獣だ。凄まじいまでの獣気が男から溢れている。
その瞳は人のものというより、野生動物のように鋭く美しかった。
「はっ、なんとかなるもんだな」
男が笑う。
それだけで逃げ出したくなるほどの重圧が襲ってくる。
「やって来たぞ。遂にっ」
そう言って男が咆哮をあげる。
かつてない絶望が始まった。




