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デスゲームに巻き込まれたようだけどこのゲーム作ったの俺でした  作者: 恋魂
四月八日 ドラゴン討伐ミッション 改め 緊急メンテナンス
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⑩ 顔のない真実

 

「このデスゲーム。俺が作ったんだ」


 結局、二人にすべてを話すことにした。

 映像を見たからだろう。

 アリスに続いて、ルカにも愛おしさを感じている。

 二人が同じような気持ちを抱いているなら、真実を話しても争う可能性は少ないと思ったのだ。


「一万ポイントでこの世界を作った神様をただの人間にしてこのゲームに送り込むことができる。そしてその神様、つまり俺を倒せばゲームクリアなんだ」


 アリスとルカは黙って俺の話を聞いている。

 信じているのだろうか。表情からは読みにくい。


「今回、いやだぶんずっとカムイが俺を呼び出してゲームをクリアしている。クリア報酬は強いまま最初からやり直すか、元の世界に帰れるか。カムイはもう何度もこのゲームを繰り返しているんだ」


「どうして、カムイは何度もやり直す?」


 アリスの質問に答える。


「完璧なハッピーエンド。ここに送られてくる全ての人を死なせずにクリアしたいと言っていた」


 沈黙。二人は黙って顔を見合わせている。

 しばらくしてアリスが口を開く。


「ハジメが死ぬしかゲームクリアはないのか」


「いや、呼び出したカムイが死ねば俺がゲームクリアになる」


 何かを思い出しているのだろうか。アリスが考えこんでいる。

 代わりにルカが質問してくる。


「ハジメがクリアしたらボク達はどうなるんだ? 消滅するのか?」


「わからない。ただクリアした者とパーティーを組んでいる者は一緒にクリア報酬を受け取れる。大切な者とはパーティーを組んでおけとカムイが忠告していた」


 一番大切なアイとはもうパーティーは組めない。

 アリスやルカはどうだろうか?

 確率的に言えば、カムイとのパーティーを選んだほうがクリアできる可能性は高い。

 二人とは戦いたくはない。出来れば敵にはならないでほしい。


「......そういうことか」


 考え込んでいたアリスが立ち上がる。


「カムイにはもう時間がない」


 アリスが語り出す。


「カムイとラス。二人の会話を姿を消して聞いていた。いや、カムイは気付いていたからわざと聞かせていたんだろう」


 カムイにはやはり姿を消しても通用しないのか。


「ラスは【今回も二人で倒して次に行こう。次はきっと全員生き残ってクリア出来る】と言っていた。だがカムイは【たぶん、次はクリア出来ない】と言い、【俺の力は、すでに全盛期の半分もない。次の周回はさらに力は衰えているだろう】と言っていたんだ」


 あの強さで全盛期の半分? ふざけた強さだ。

 いや、それより何故カムイの力は衰えている?


「カムイは私に【救いはハジメか、俺か、もうすぐ答えが出る】と言っていた。何故と聞く私にカムイは仮面を外して、その姿を見せたんだ」


 カムイの正体。

 夢の中で知った時には記憶は消されていた。

 アリスから聞いても消されはしないだろうか。


「カムイは、今にも死にそうな老人だった」


 蘇る記憶。

 仮面を外したカムイの顔。

 皺枯(しわが)れた痩せこけた老人。

 だが、それはハッキリした顔ではない。

 まだぼやけている。

 なんだ。俺はこの老人を知っている。

 誰だ。思い出せない。

 初めて見た時受けた衝撃はこんなものではなかった。

 まだ、まだカムイの正体には謎がある。


「クリア報酬で最初からやり直しても歳を取っていくんだ。カムイの寿命は終わりに近い」


 アリスはそう言いながら、自らの胸をおさえる。

 巨大な塊がひしゃげて手がめり込んでいる。すっごいエロいが、言ったらまた叩かれそうなので黙っている。


「多分、私への好感度が高いのは、カムイが何度も繰り返すループの中で私と恋仲になったことがあったからだろう。だが、私はカムイの素顔を見てもハジメと同じように記憶が蘇ったりはしなかった」


 かけ離れているのだろう。昔、アリスと恋仲だった時のカムイの姿と今の姿が。

 それがどれほど悲しいことか。想像がつかない。

 そうか、カムイはすでに......。


「カムイがクリアできるのは多分今回が最後だ。悪あがきと言っていた。全員を救っての完璧なハッピーエンドはもう目指していないかもしれない」


 ならば、カムイは一体何をしようとしているのか。

 カムイが執拗に俺に接触してきた理由は一体なんだ。

 様々なパズルのパーツが組み立てられていく中、肝心なパーツが揃ってない感覚がある。


「カムイの顔は、どこかで、見たことがある顔だったか?」


 その質問にアリスがゆっくりと首を振る。


「わからないんだ。老人ということしか。今はもう記憶が消されたようにぼんやりとしか思い出せない」


 アリスにも自分と同じような事が起きている。


「なあ、ハジメ。この残っている記憶はなんだ。私達は何度も何度も繰り返しているのか? ループしているのはお前とカムイだけじゃないのか?」


「わからない。だが俺は記憶を持ってループしてない。カムイが呼び出すたびに毎回新しく作られているのだと思う。アリスやルカも周回ごとに記憶や肉体はリセットされているだろう」


 そう、記憶や肉体、全てを引き継いで何十周もループしているのはカムイだけだ。

 パーティーを組んで共にループしているかもしれない幼女のラスも年齢的に二、三週しているくらいのものだろう。


「リセットされてもほんの少し記憶は残るんだろう。残穢(ざんえ)。残りカスみたいなものが」


 今や、それだけが希望だ。

 アイが少しでも思い出してくれるなら、俺はその為に何度だって繰り返す。


「二人とも聞いてくれ」


 アリスとルカに話しかける。

 最初で最後の交渉が始まった。


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