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ガレキ  作者: がっかり亭
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ハセ姫

 レキの傷は、すぐに治った。

 折れた素体の両腕を瞬間接着剤でつけ、背中の傷をパテで埋めたら、後は自己修復で元通りになった。

 おそらく他の神体であったら、修復は非常に困難だろう。

負けたら二週間の出場停止というのも、ペナルティの意味だけでなく修復する前に攻撃される事を防ぐという意味もあるのだ。それでも金属彫刻系の神体などは修復がギリギリになることも多い。

 こと修復の早さで言えば、レキは群を抜いているかもしれない。

 だが――

「もう三日になるが……マイスター殿はどうしたのじゃ?」

「はい。アトリエに閉じこもっとります」

「ふむ? ジャッジから連絡があったのにのう」

 玉座に腰かけたハセ姫は手の中で手紙をくるくると回した。

「連絡ですか?」

「ヤミタが敵の攻撃を妨害した件じゃ。……やはり次から禁止になるらしい。それから、我が国にペナルティが課されおった。一〇試合ずっと警告1からの状態だそうじゃ」

 姫は気だるげに言う。

 警告1、つまりもう一度警告を受けたらその瞬間反則負けになるわけである。

 それが一〇試合というのは、かなり厳しい処分だが、実は反則というのはそれほど種類がない。警告の大半は、相手のマイスターへの直接攻撃だ。

 つまり、今回の措置はまた同じ手での妨害を防ぐという意味合いが強いわけである。

「そうじゃ、ヤミタの具合はどうじゃ?」

「先ほど申した通りですばい。そげんすぐには変わりませんて」

「そうか……」

 ヤミタは、即刻入院となった。

 傷は縫合されているものの、治ったわけではない。

 大量に血も失っており、まだまだ動ける状態ではないのだ。

「……この国は、どうなってしまうのじゃろう……?」

 姫は俯き、呟いた。

「もう、姫さまがそげなこつでどげんするとですか」

「エポナ……じゃが、妾に国をまとめて行く力なぞない。妾は……」

「一回や二回くらい負けるこつくらいあるくさ。くよくよするこつはなかです。今までずっと負けとったのが、今年はもう二勝しとるとですよ。今回は相手が悪かっただけです」

 おそらく他の国であれば、一介のメイドがこんなに姫を慰めたりなどしないだろう。

 だが、LVリバーは長い歴史の中で有能な家臣たちが次々引き抜かれていき、残ったのは他の国から欲しがられないような、言ってしまえば余り者しかいない。貴族・高官など肩書きだけである。

 ただヤミタだけは様々な国から声がかかっていたが、全て断っていた。

「……違う。そうではない。今回のことで気づいたのじゃ。マイスター殿はよくやってくれておる。今年はいつものような順位にはならぬかも知れぬ。じゃが、いくらマイスター殿が頑張ろうと、妾は何も出来ぬのじゃ……。父上は……妾に何も教えてくれなかった……」

「そんな……」

 LVリバーの国政は代々国王が一手に担っていた。

 それは臣下に人材がいない事に起因する。

 つまり、国王が有能だからリーダーシップを発揮しているわけではないのである。

 ゆえに年を追うごとに国の状態は悪化の一途を辿っていた。

「父上も逃げようというものよ……こんな無能な娘などいらぬわな」

 前国王は前大会終了直後、突然失踪した。

 人々は一〇〇年連続最下位が怖くて逃げだしたと噂したが、その真偽を知るものはいない。

「姫様……それは違います。先代が御隠れ遊ばした理由は私にはわかりません。……でも、姫様が一〇をやっと越えたくらいの年からこの四年、ずっと頑張って来たのは知っています」

 日本で言えば小学校の高学年ほどの年齢から国政を担ってきたことになる。

 しかも周囲には無能な臣下しかいないのだ。

 政策はどれも空回り。

 町の噂でタカラが聞いたように、王城を豪華にしたのもその一つだ。そういった失政は枚挙に(いとま)がない。

 二年前からヤミタが助言するようになり、やっと国が落ち着いてきたが、それでも状況は芳しくない。

「結果が出ねばどうにもならぬ。妾なぞお飾りじゃ」

「姫様……」

 自嘲気味にハセ姫は呟いた。

 それは仕事に疲れきった中高年のそれに近く――

 エポナは胸が締め付けられる思いだった。

 何かを言おうとしたが、声が出ない。

 と、そこに――

「ぴょろりー!」

「わっ!」

 飛んできたぴよぷーがハセ姫の頭にぶつかった。

「な、なんじゃお主……」

「ぴょろりーぴょろりー!」

 ぴよぷーは姫の膝の上で跳ね回る。

「お主……妾を励まそうとしておるのか?」

「ぴょろりー」

「ふふ……はははっ」

 ハセ姫は顔に手を当てて笑いだした。

「そうじゃの。お主にまで心配させてしまっておったか。……こんなことではいかんの。……よし!」

 ばちん!

 玉座の間に大きな音が響いた。

 ハセ姫は、両手で頬を叩いていた。

「ひ、姫様?」

「心配をかけたな。お主ら。――妾はLVリバー十三代国王、ハセ・ロング・バレー・リバー十三世」

 姫はぴよぷーを抱えてすっくと立ち上がった。

「マイスター殿はきっとやってくれる。上がった順位に見合う国になるように準備をしてゆくぞ!」

「ふふっ……私、あなたに仕えられることを光栄に思いますよ」

「ふん。LVリバーはここからじゃ!」

「ぴょろりー!」

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