王
どこかの宿屋の一室で。
「バインド様」
「どうしたフリーダ」
ガウン姿で椅子に腰掛けたバインドが不遜な態度であごをしゃくる。
フリーダはいつぞやのダークスーツを着ており、その場に跪いていた。
「本国から書状が届いております」
「ちっ、どうせロクなことではあるまい」
フリーダから渡された丸めた書状の蝋を外す。
そして中に目を通し、
「ふん……やはりそうだ。下らん。見るか?」
バインドは手紙を投げ捨てた。
「は、はっ……」
拾ったフリーダはそれに目を通したが、その表情が曇る。
「これは……」
手紙には、『本国の経済状況極めて困窮なり。貨幣価値、昨年の一〇分の一まで落ち込み、町は失業者が溢るる。可及的速やかに高順位を国民に示し、人心を安定させたし』と書かれていた。
「下らんだろう?」
「し、しかし……」
「わかっていたことだろうが。もう既に兆候はあった。己のおかげで三位になっただけにも関わらず、調子に乗って荒稼ぎをしようと悪貨の乱造なぞするからだ。バカめが」
バインドはくつくつと笑った。
「無視しておけ。どうせあと一〇ヵ月以上神体大戦はあるのだ。間に合わん」
「ですが……国がなくなってしまったら……」
「己を欲しがる国などいくらでもある。ドリメイトがどうなろうと知ったことではない。……そうだ。なんならLVリバーに行ってやってもいいぞ。己なら最下位からだろうが上位に簡単に行けるからな。はははははは!」
バインドは狂ったように笑い出す。
「バ、バインド様……」
「冗談だ。一から他の国で権力を得るより、ある程度中枢に食い込んだドリメイトの方が楽だからな」
そう言ったバインドであるが、果たして本人がそれを信じているかはわからない。
ただ、その眼には暗い炎がめらめらと燃えているようにも見えた。
「バインド様……」
何かを知っているのであろうフリーダは、もの言いたげに手を伸ばしたが、すぐに下した。
「己は勝たねばならん。己は必ず王になる」
バインドは呟くと拳を握り、立ち上がった。
「そのために、あんな芝居までしたのだ。いつでも仕留められたものをな」
「では」
「そうだ。もう一度LVリバーを攻めるぞ。……なりふりなど構ってはおられんからな」




