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ガレキ  作者: がっかり亭
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盲点

「……え?」

 レキに、金属部品はない。

 原型と違い、芯の針金すら入っていない。

 その異質な金属音に、タカラは目を開けた。

 するとそこには――

「ヤ、ヤミタ!?」

「ぐ……」

 倒れたレキに覆いかぶさるようにヤミタが立っている。

 その背中には、フリーダの剣が命中していた。

 あまりの威力に、ヤミタの鋼の鎧がひしゃげている。これは中までダメージが到達しているだろう。

「貴様……なんのつもりだ。対戦に手を出すとは、失格になりたいのか」

「ふ、ふん。第三位のくせに何も知らんのか。ルール2『神体以外による神体への攻撃、またマイスターへの攻撃は禁止とする』……神体の攻撃を受けるなとは言ってはいない」

 ぐっしょりと額に汗をにじませて、声を震わせながらヤミタは言った。

「ジャッジ!」

 苛つき、バインドはヨミーの方へ向く。

「ふむ。これは盲点であるな。神体の攻撃を受けようとする者など普通いないである。とりあえずこれが終わったらジャッジ会議を行うであるが、ルール違反ではないであるから現時点ではどうしようもないのである」

 ヨミーはカイゼルひげをぴんぴん引っ張りながら言う。

 ジャッジ会議とは、その名の通りに神体大戦中に不都合が生じた際に各地のジャッジが召集され行われる会議である。

 ただそのような事態が起こるのはごく稀で、通常反則に対してはジャッジが直接警告を出す。なお、警告二回で反則負けとなり、悪質な場合は一発負けもある。

「ちっ!」

「お逃げ下さい精霊様!」

「で、でも……」

「奴の攻撃なら全て私が受けます!」

「そ、そうじゃなくて、あなたの体が……」

「早くいかないか! 私の身を案じるならば余計にです!」

「……!」

 それは、猛獣の雄たけびにも似た裂帛の気迫。

 レキは反射的に起き上がり、走った。

「逃がすものか」

 フリーダは追撃しようとした。

 だが、その前にヤミタが立ちふさがる。

 背中の痛みがひどいのだろう。その顔は引きつっていた。

「邪魔をするな」

「邪魔などしない。ただ貴様の剣の通り道に私がいるだけだ」

詭弁(きべん)を。ならば押し通るまでだ」

 フリーダは剣を振るう。

 それは、目にも留まらぬスピードだった。

 常人のそれには、だが。

 ヤミタはその剣閃を見切り、そこに飛び込んだ。

 がぎっ!

「……っ!」

 金属の肩当てがひしゃげるほどの衝撃。

「どけ」

「……そっちがどいたらどうだ」

 フリーダの射殺さんばかりの視線に、ヤミタはうっすら笑いを浮かべた。

 だが、誰がどう見ても強がりだ。

「やめろヤミタ! 殺されるぞ!」

五月蠅(うるさ)い! 貴様は黙っていろ!」

「ふん、あのマイスターの言う通りだ。……やれフリーダ。遠慮はいらん」

「イエス。マイ・マイスター」

 フリーダはもはやレキを狙わず、ヤミタに狙いを定めて突きを放つ。

 超高速で放たれた鉄の塊は、風を切る音すら置き去りにヤミタの脇腹へと突き刺さった。

「がはっ……!」

「ヤミターーーッ!」

 ヤミタの口からどろりとした塊が吐き出される。

 銀色の鎧の脇腹部がひしゃげ、裂け、そこから血がにじみ出して来ていた。

「ぐ……あ……」

 ヤミタはその場に倒れ伏す。

「ふん……まんまと時間を稼がれたか。追えフリーダ」

「イエス。マイ・マイスター」

 倒れたヤミタには一瞥もくれず、フリーダは走り出した。

「ヤミタ、大丈夫か!」

 タカラは泡を食ってヤミタに駆け寄った。

 その体を抱き起すと、ヤミタは虚ろながら視線を向けて来た。

「バカ……が。……貴様、は……精霊、様の、サポート……しろ……」

「バカはお前だ! それどころじゃないだろっ!」

「五月蠅い……斬るぞ……」

 ヤミタは震える手で腰の剣に手を伸ばす。

「動くな!」

 タカラは無理やりヤミタの鎧を外した。

 傷口からはどくどく血が溢れてくる。

 タカラはそれを押さえたが、止まらない。

「く、くっそおーっ! 誰か助けてくれえっ!」


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