No where
タカラは、またアトリエに居た。
とりあえず、道具や素材を整理していたのだ。
「まず原型材料は……」
ファンド、スカルピー、ポリエステルパテ、プラ板、プラ棒、針金……
「えーと、パテが……」
ラッカーパテ、光硬化パテ、木部用パテ、耐水パテ、エポキシパテ……
「細工道具が……」
スパチュラ、デザインナイフ、ヤスリ、サンドペーパー、彫刻刀、ピンバイス、ニッパー、リューター、セラカンナ……
「スプレーが……」
サーフェイサー、トップコート、離型剤、エアー缶……
「塗料が……」
ラッカー、水性ホビーカラー……
「塗装関係が……」
エアブラシ、筆、マーカー、マスキングテープ……
「接着剤が……」
瞬間接着剤、セッター(硬化促進剤)……
「型関連が……」
シリコン、レジンキャスト、簡易型取り剤、型取りブロック……
「他に液体ものが……」
薄め液、バリアーコート……
「うーん、他にハサミとかライターとか一般に使うものを含めても、相当な量の道具使ってるなぁこれ」
買ったはいいが全然使っていないものも多い。
スカルピーなどはその筆頭だが、他にもダイヤのガラス切りなんかも持っていたりする。
また、原型制作がラクになるように、ファンドを固めた棒や玉、切り出し用のレジンのブロックなども作ってある。
「何にしても、この世界にないものばっかだな。上手く使えばはじめのうちは勝てるかもしれないけど……研究されるとまずいな」
そもそもレジンはプラスチック程度の強度しかない。
今までの二戦はこの世界にない道具で、いわば奇襲したようなものだ。
だが、一年も戦いが続くとなれば、いずれは対策を施されるだろう。
そうなった際、素材では圧倒的に不利だ。
「でもなぁ……板金とか鋳造とかできないしなぁ」
金属加工の技術は流石にない。
せいぜい技術の授業でハンダゴテを使ったことがあるくらいだが、ハンダゴテは持っていない。
つまり、強度を上げることは難しい。
「そうも言ってられないか。……勝たないと帰れないしな」
呟いて、思い出す。
「……帰る……か」
普通だったら、もっと死に物狂いで帰ろうとしているだろう。
やはりタカラは己にその衝動が弱いことを、改めて確認した。
しかし、そんな自分が好きなわけではない。
変わりたいと、誰しもが思うような感情だって持ち合わせているのだ。
だから、
何かをしなければ。
気持ちだけが焦っていく。
そうして、暫く部屋の中をうろうろして、
「……そうだ! この世界にどんな素材があるか、町に行ってみよう」




