槍
「な、何を……」
「それはこっちのセリフですっ!」
レキは顔を真っ赤にして叫んだ。
「何で……何であんな危ないことをしたんですかっ!」
「危ない、こと?」
「わざと敵に取り込ませたことです!」
「あ、ああ……そりゃ事前に言ってなかったのは申し訳ないと思うけどさ、敵を欺くにはまず味方からって言うか……」
「違います! そんなことはどうでもいいんです! 何でわかってくれないんですかっ!」
レキは涙を浮かべ、
「あなたと私はリンクしているんですよ! 仮に初めから電撃が流されていれば、あなたはショック死していたかもしれない……っ!」
「あっ……!?」
タカラは、それこそ雷に打たれたような衝撃を受けた。
レキは作戦を黙っていたことに怒っているのではない。
タカラが不用意に己の身を危険に晒したから怒っているのだ。
「私は、肉体が壊れても死ぬことはありません。でも、あなたは違います。死んだら、終わりなんですよ! 生きているんですっ! だからっ……だからっ……わああああん!」
レキはついにぼろぼろと泣きだした。
「う……」
タカラは、こんなに他人から心配されたのは初めてだった。
だから、言葉が出ない。
何かを言おうとして、手を伸ばすが、後が続かない。
見かねてエポナがレキを抱きかかえた。
髪を撫でられ、レキはぐしぐしと泣く。
「えぐっえぐっ……タカラさんの……ばかっ……!」
タカラは茫然と見つめるだけだった。
その背中を、どん、と押す者がいた。
「わっ……!」
振り向くと、そこに居たのはヤミタだった。
「バカが。何を呆けているんだ。さっさと行け」
「行けって……何を……」
「斬り捨てられたいのか」
ヤミタは腰の剣に手を伸ばす。
「わ、や、やめろよ」
「いいから行け!」
タカラは、ヤミタに脅される形でレキの前に出た。
レキはまだエポナの胸の中で泣いていた。
その眼が、タカラの方に向く。
「あ、そ、その……」
じとー、そう音がしそうなほどレキは見つめている。
泣いて、目は真っ赤になっている。
そうだ。
泣いたんだ。
おれのために。
だから――
「ごめん」
タカラは頭を下げた。
「心配かけて……ごめん」
「……」
レキは、エポナから離れ、ゆっくりタカラの方へ歩いて行く。
怒っている。
タカラはまた頬を叩かれる覚悟をし、目をつむった。
しかし、
こつん、
来たのは、小さな衝撃。
「え?」
頭のてっぺんを、軽く小突かれたのだ。
「……これで、許してあげます」
レキは、泣き腫らした目のまま、笑った。
「……反省して、下さいね。……今回みたいなことは、ダメなんですから……」
ぎこちない、笑い。
だが、それはタカラの胸を打つには、充分の笑みだった。
「……ああ、約束する」
「じゃあ、指きりしてください」
「うん」
タカラは、この世界にも指きりはあるのかなどと無粋なことは聞かず、小指を差し出した。
「指きりげんまん、ウソついたら槍千本飲ーます。指切った」
槍?




