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現代神様  作者: 有富有馬
22/23

エピローグ2 響の答えへの道

8月22日



 弱い風が吹く・・・・・・



 夏ならいつもなら気持ちい風が妙に体の中のくすぶった何かを動かすようだ。



 響は落ち着いた服装である場所にきていた。



 ゆっくりと歩き出す。



 

 そこは、響と一真、そして夜鳥が戦いを繰り広げた大蛇の封印石がある、斐伊川のとあるばしょだった。



 戦いの果てに大いに傷ついた山や大地は、何事もなかったかのように元に戻っている。



 まるですべては夢であったかのように。 



 しかしそれは違う。



 響の目におぼろげながら、大蛇の封印石が移っていた。しかしそれもすぐに消えていく。



 「・・・・・・」



 無音のまま響は空を見上げた、相も変わらず雲がフワフワと浮かぶ、出雲の名通りの風景が浮かんでいる。



 「どうしたんだ・・・こんなところで?」



 後ろから声が聞こえた。



 その声の主もなんだか元気がないように聞こえる。



 「・・・・・ちょっと」



 そこにいたのは一真だ。



 頬にでっかい絆創膏を貼ってはいるものの、腹の傷穴もそのもろもろの打撲的ないたみや、骨折はほぼ完治していた。



 「一真さん・・・・・大蛇の封印石は?」 



 「ああ・・・・・それについては大国主が対処をしてくれるそうだ。」



 本当なら



 と一真はつなげる。



 「高天原のほうに連絡を入れないといけないだろうが、そうすればお前の事も報告しなければならない。だから大国主に頼んだら今回の事件はすべて出雲の力でも漏らさないとよ」



 「そうですか・・・・・・」



 無言が続く・・・・・・



 「すまなかた・・・・・・響・・・」



 「え?・・・・・」



 その言葉に響は一真の方を見た。



 「俺らのせいで、お前自身の事を隠した。良かれと思ってやったことが、結果的にお前を苦しめ、とんでもないことに巻き込んでしまった。本当に・・・・すまなかった」



 頭を深々と下げる一真。その姿に多少なりとも響は驚いた。



 「もう・・・・・いいですよ・・・・・」



 響は笑ってそう答えた。



決して投げやりな言葉ではない。



 その態度に一真が今度は驚いた。



 もっと攻められると思っていた一真からしたら予想外の出来事だ。



 「最初こそ怒りを感じてましたけど、自分という存在に少しだけでも触れたことで、一真さんや栄吉さんが何故隠そうと思ったのかも、今ならわかります。それに・・・俺は生きなきゃならない・・・・・そう実感することが出来ました」



 響の頬に冷たい風が通り抜けたのを感じている。





 時間は遡ること、2日前。8月20日



 響達はきずいたら栄吉の家の布団で寝ていた。



 最初こそ、自分がいる場所に戸惑いを持ったが見慣れた風景を見て気持ちが落ち着いた。



 (・・・・・?)



 体を動かそうとするが、なんだかとても動きづらかった。なんだろうか、地面に吸い付けられている感じだ。



 そしてその胸には、碧色に輝く勾玉が首からぶら下がっていた。



 それを見て実感する。



 (・・・・・終わったのか・・・・・)



 何処からか、その時の記憶が抜けていてどうやって終わったのかさえも分からない。



 勝って終わったのか、それとも負けて終わったのか・・・・・・



 負けたならここはあの世というところだろうか。



 勝っているなら・・・・・・・・



 そこで、響は考えるのをやめた。

 


 お前が殺した。


 

 夜鳥のその言葉が響の頭の中でとめどなく繰り返される。

 


 生きて帰ったなら・・・・・自分はどうしたらいいのか。



 そのあまりにも重たい罪の意識が響が見つけた小さな道を暗闇の中に消してしまった。

 

 

 がらりと、響の頭のほうの襖が開いた。



 「目が覚めたか・・・・・」



 その声をとてつもなく久しぶりに聞いた気がする。



 栄吉だ。



 いつも見るような服装で栄吉は響の横に胡坐をかいて座った。




 「栄吉さん・・・・・・どうなったんですか?」



 「・・・・・無事に夜鳥を倒し、大蛇の封印を守ることが出来た」



 「・・・・そうですか・・・・」



 栄吉は自身の言葉を頭の中で思い返した。



 無事に?



 本当に無事だったのか?



 目の前の少年は今回の事件の中心にいて、この数日で心に与えられた傷はとても大きなものとなっていた。



 これが果たして、無事といえるものなのだろうか?



 「一真さんは?」



 「事件の事で今は動いてもらっとる。あいつも全開でないところ申し訳ないが、そんなことも感じさせんほどに動いてくれている」



 「・・・・・」



 「・・・・あの封印石の場で何が起きたかは、一真から聞いている。その話を聞いて、話があるそうだ。」



 「・・・・話?」



 「ああ・・・・・」



場所は変わる



 「連れてきましたぞ」



 「響君・・・・」



 そこには香澄もいた。



 見た感じあまり元気はなさそうだ。



 響は動けなかった体を、一口水を飲んだことに世て歩けるようにはなった。



 自分の足で、歩き栄吉の後を追う。



 そこには、



 止めたく、陶器のような白さを持っていた、あの女が布団の上で横になっていた。



 「・・・・・待っていました。神塚響君」



 にっこりと力はないが優しそうな笑顔で響を見た。



 「羽島京子さん・・・・というんですね・・・・・」



 ええ、と羽島京子は力なく答える。



 響はその近くに正座で座る。



 「あの戦いの話を一真さんから聞きました・・・・・・あなたにこのことを話せてよっかった。・・・・私にはあまり時間がないので・・・・・・」



 「時間がない?」



 その言葉に疑問を持った時だ。



 羽島京子の体から霧のようなものが抜けだしていく。



 「これは・・・・・」



 似ている。



 夜鳥が、その力の源が抜けていくのと。



 「彼女は留まりたくて留まっていたわけではない。その魂を何者かによってとらわれたがために現世にいる。・・・・今はその縛る力も消えているから、消えていくしかいないんだ」



 「そもそも私は、一人というわけではありません。様々な魂が集まり体を作り、私という羽島京子という存在の魂が宿っているのです。」



 次々と、体を作る魂という存在が抜けていく。



 「俺に言いたいことって?・・・・・」



 響は急いだ。



 時間が限られているのだ。



 そうですね。と



 とても弱弱しい声で羽島京子は言う。

 


 「大丈夫ですよ」



 弱弱しい声ながらも、とても強い思いがこもった一言がその口から出てきた。




 その言葉に響は何と言っていいかわからなくなる。



 「あなたが夜鳥から言われたこと。・・・・・それは決してあなたの責任ではありません。」



 お前のために死んだのだ。



 その言葉が響の頭にまたしてもよみがえる。



 

 「私が死んだのは・・・・・今から一週間前です。・・・・・最後の記憶は家で夫と私達の赤ちゃんがいるときのものです。・・・・・・私が食器を洗っていると突然、夫が倒れたんです。あわてて救急車を呼びました。・・・・そのあと私の視界は突然真っ暗になったんです。・・・・・でもそのあとすぐに視界は戻りました。そして最初に見た光景は・・・・なんて言っていいのか・・・・・恐怖というものが頭の中を埋め尽くしたんです。」



 「何を・・・・」



 「・・・・・最初は夢かと思いました。そこには鬼のような大男がいたんです。さっきまで夫の横には誰もいなかったのにそこにはその大男がいたんです。・・・・私は叫びました。するとその化け物は私のほうを見て笑ったんです。・・・・・・私の腕を口にくわえながら。・・・・・恐ろしかった・・・・でも確認せずにはいられなかったんです・・・・・ついさっきまで私がいた場所を・・・・見るとそこで実感しました。・・・私は死んだのだと・・・・・」



 「羽島さん?」



 「私たちはね・・・・・みんなあなたの血を狙う悪鬼に殺されて、今に至ります。・・・・・・でもね・・・・誰も決して、あなたを恨んでいるわけではないんです。」



 そんなわけがあるはずがない。



 響はそうとしか思えない。



 「本当ですよ」



 「え・・・・」



 まるで響の心を読んだかのように羽島京子は告げる。



 どんどんその体からは白い霧が出て行っている。



 「最初こそ貴方を恨んだかもしれません。でも、こうなることは決してあなたが望んだことでもなければ、あなたが生まれてきていけない理由ではないんです。私たちがあなたを恨むということは結局・・・・悪鬼という存在となんら変わらないんですよ」




 間をおいて羽島京子は語りだす。



 「・・・・悪鬼に殺された者の魂がどうなるかわかりますか?」



 響は首を横にふる。



 横目で栄吉をみると、その視線に気づいたようだ。



 「悪鬼に食べられたものの魂は・・・・・決して生まれ変わることはない・・・・・・食った悪鬼の中で、怨念にまみれながらいなくてはならないんだ。」



 「助かる方法は神の手によってその悪鬼が殺される事・・・・それによって食われた魂はすべて、黄泉へ渡り、次の命に生まれ変わるんです。」



 「あなたは・・・・救ってくれたんですよ。夜鳥に食われ続けた・・・・・それこそ1000年以上前の魂のすべてを・・・・・・」



 だから、羽島京子は笑顔で言った。



 「これからもその魂を助けてあげてくさい。そして私達のような人を増やさないために助けてあげてください。そして・・・・・」



 そこで羽島京子は一区切りを打つ、



 「そして・・・・・・人としても生きてください。・・・・・あなたは神であり・・・・・この世に一人しかいない一人の・・・・・人間なのだから・・・」



 すでに羽島京子を模る魂はほとんどなくなってきている。



 「生きてください・・・・・・それが・・・・・私たちの願いです・・・・・」



 何を言ったらいいのだろうか・・・・・・響は何も考えられなくなった。



 そんな時、響の胸にかかる碧色の勾玉が誰にもきずかれないくらいに小さく光りだす。



 そして小さく小さく、光はまるで吸い込まれるようにして、消えていく。


 

 「大丈夫ですよ」



ふと、そんな言葉が漏れる。



 「え?・・・・」



 その言葉を言うのは響。



羽島京子に言い返すように



 突然のことに羽島京子は理解できないようだ。



 「あなたの赤ちゃんは、生きていますよ。」



 「・・・・嘘・・・・」 



 「俺・・・・・突然だけど思い出したんです。この記憶は多分俺が暴走していた時の記憶だと思いますけど。あなたの家を襲った悪鬼が赤ちゃんを殺す前に俺がそいつを倒したんです。・・・・・偶然で・・・・そのうえ間に合わなかったけど・・・・・・それでも、あなたの赤ちゃんは確かに生きていますよ」



 「ほ・・・・本当に・・・・?」



 「羽島隼人君・・・・・確かに貴方の実家に引き取られていますよ」



 突然後ろから声が聞こえた。



 振り返るとそこには一真がいる。



 「一真さんが・・・・なんで・・・・」



 「調べればすぐにわかるさ・・・・・・確かに一週間前に貴方の親の家には羽島隼人君が預けられていました」



 そこには一枚の写真がある。



 笑顔を浮かべた、羽島隼人の顔だ。



 「ほんとうに・・・・・・本当にありがとう・・・・・・響君・・・・・」



 涙を浮かべた笑顔。



 その一言を言った瞬間、最後の歯止めが切れたように羽島京子を模る魂は散らばっていった。



時間は戻る。



 出雲市のある場所に、響と、一真は来ていた。



 そこには、赤ちゃんの世話をする50手前の夫婦の姿がある。



 「あの子は・・・・・羽島隼人は・・・・・」



 「大丈夫だよ・・・・・いろいろとサポートもこちらですることになったし、悪鬼の事にも注意を払えれうようにしている。ただ・・・・」



 「ただ?」



 「ああ・・・少しお前と似たような状況になってな・・・・・悪鬼や神という存在を認知できるようだ。今は・・・・お前がつけている勾玉と同じようなもので和らげてはいるが、お前と同じくらいの年になると、効力をなくすだろうな」



 「それじゃぁ・・・・!!」



 「つらいことがあるだろうよ・・・・・だから・・・・俺たちが出来る限りのことをするんだ・・・・・」



 一真の瞳には何が移っているのだろうか。



 不安か、希望か?



 それはわからないが、響には両方があった。



 生きるということと、理不尽に巻き込まれてしまったということ。



 これもまた素戔嗚という存在が作り出したのだろう。



 どうしたらいいのか響にもわからない。



 だから響は二日前に決意した。



 生きようと。



 そして、答えを見つけようと。



 神として、人として。



 長い髪によって表情はわからない。



 ゆっくりと響は歩き出す。



 まるでストラップでもクルクル回すような仕草で指をうごかす。



 そこには青みがかかった小さない風が生まれる。


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