最終章2 ~奪う力~
「?!!」
地面が揺れだす。
それはただの地震ではない。まるで火山噴火のように何かが下から上がってきている。
恐ろしいまでの人間の怨念というものが
次の瞬間だ。
噴き出したその怨念は夜鳥を包み込む。
「!!!!」
その光景に一真は恐怖を感じぜずにはいられなかった。人間一人の怨念でも巨大なものとなる負の力。
それを何百倍にもしたような高密度な怨念が表れたのだ。
ドッ!!!
「!!!」
どす黒い怨念の一撃が、一真に向かってくる。
ギリギリで刀を使い炎の盾を作るが、抉り取るようにその一撃が炎を盾をけしととばす。
(ただの怨念じゃない!!夜鳥の風に怨念が順応してやがる!!!)
懸命に踏ん張るが、それとは反対にそのどす黒い風は一真の体を後退させる。踏ん張るために地面がめり上がる。
そしてついにその風は一真の炎を吹き飛ばした。
「!!」
刀を吹き飛ばし一真の体が宙に浮かび一瞬にして飲み込まれる。
その場に生まれたのは破壊の痕跡。 空気には濃密な怨念が漂っている。
山を何個吹き飛ばしたのか、大地をどれだけ抉り取ったのか、それを目測で図ることがばかばかしくなるほどの破壊がそこにあった。
「グ・・・・・・・・」
一真は片膝を付き、刀で体を支えている。
一真の体から今までの比ではない激痛が全身を駆け巡る。
まるで筋肉が断裂したかのような痛みが全身にだ。まだ痛みを感じれる分だけましかもしれない。
それ以上の問題がその内部では生まれていた。
(俺の神力を削り取りやがった!!!)
「これが・・・・素戔嗚の血のか・・・・・まさに神を食らう力だな・・・そのうえ、同じ風の力のためか・・・・体によくなじむのを感じる。」
「夜鳥・・・・!!」
怨念の柱から現れた夜鳥に一真は絶望を感じてしまう。
あれほどのダメージを与えたにもかかわらず、その姿は戦闘前と同じ、いやそれ以上にまがまがしく変わっていた。
頭の角はさらに伸び、髪もまるで暗赤色のような色に変わり、肌からは刺青のような黒いラインが浮かび上がっている。
「力があふれていく。なるほど・・・・・・・相乗効果というやつか・・・・・これが奴の言っていた事か」
「???」
「理解する必要はない。お前はここで死ぬのだから」
夜鳥はまるで虫けらを見るかのような目で一真の目の前に手をかざす。
「死ね」
「!!」
一真は右手で無理やり炎を作つくりうごきだす。攻撃や威力など全く考えていないただの巨大な炎を自身と世鳥の間に作る。
(体制を・・・・!!)
「くだらん」
距離をとった自分の左から声が聞こえる。
そこには夜鳥がいる。
鈍重な痛みとともに視界がぐるぐると周る。気づくと地面にうつ伏せの状態だ。
「かは!!!」
胃が口から出てきそうだ。肋骨も何本おれている。
(速い・・・・!!)
速度はほぼ同じだった。しかしさっきの一撃の際の速度は全く見ることが出来なかった。
「それに・・・・また神力が持っていかれた」
「どれだけお前の神力が残っているかな?」
「!!」
立ち上がろうとする一真にゆっくりと歩いてきている。
しかしそこで夜鳥の右腕がはじけ飛んだ。
そこからドクドクと止まることのない血が流れ出す。
軽く夜鳥は舌打ちをする。
「全力を振るうにはまだ時間がいるのか・・・・」
ボソリと告げる夜鳥の表情はやれやれといった感じだ。
「たった五割程度体に傷を負うとはな・・・あの速度はまだ危ないか・・・・よくて二割といったところか・・・・」
とてつもなく面白そうな調子で夜鳥は言うと落ちた右腕を拾い上げる。
「喜べ加具土・・・・・まだ二割程度しか出せん。・・・・・・・今ならまだ倒せる機会があるかもしれんぞ?」
そして右腕をゆっくりと切断面にくっつける。
(あれで・・・・五割だと!!)
そして傷口から黒い霧があふれ出す。
「だが・・・・お前を倒すには十分すぎる力だがな」
そしてその腕は何事もなかったかのように動き出したのだ。
そして夜鳥はこう告げる。
「面白いものを見せてやろう」
クイと手首を動かす。
すると夜鳥の後ろから黒炎が舞い上がる。轟々と燃える黒炎は夜鳥の動きに合わせて動く。
「な・・・・に・・・・・」
一真の顔は驚きに埋め尽くされた。
なぜ、夜鳥が炎をつかえるか?今まで炎など使わなかったのに。
しかし驚くべき場所はそこではなかった。
「俺の・・・・・炎・・・・」
一真が感じ取ったのは自身の神力だった。




