最後の希望
魔王軍の王子ダリアンによる無慈悲な蹂躙…。
月の国【ムーンヘブン】は一夜にして焦土と化し、最先端の魔導科学は皮肉にも世界を滅ぼす牙へと変貌した。
恋人を失い、心を砕かれたリナ。
廃人と化したメルキド…。
残り時間はわずか半日。
リバースサーフェス崩壊のカウントダウンが始まる中、あの「師匠」が静かに口を開く。
「……ハーベル、助けて……みんな、死んじゃった……」
転移装置から這い出してきたリナは、血と煤にまみれたままハーベルの腕の中で崩れ落ちた。
「リナ! しっかりしろ!」
「フェニックス・レストレーション!」
ハーベルが即座に治癒魔法を展開するが、彼女の傷は肉体よりも精神に深く刻まれていた。
「マルスが……私を庇って……あ、あああああ!!」
狂ったように泣き叫び、恋人の名を呼ぶリナ。
彼女が語ったのは、二人の怪物――。
悪魔王子と魔神龍による、たった数分間の「遊び」がもたらした地獄の光景だった。
「……僕が見てくる。ネル、リナをお願い。レオンとクラリッサにすぐ連絡を!」
ハーベルは表情を険しくし、独りムーンヘブンへと飛んだ。
「なんだ……これは……」
転移した先でハーベルが目にしたのは、かつての銀色の都の成れの果てだった。
精密な魔導建築は瓦礫の山となり、街を象徴する星々の輝きは黒煙に覆い隠されている。
そこへ、うつろな目で彷徨う一人の男が歩み寄ってきた。
「メルキド……さん?」
「ハハハ……終わりだ。なにもかも、ゴミのようだ……」
【ムーンヘブン】の王としての威厳は欠片もなく、彼は狂ったように笑い続けていた。
「魔鉱炉が……私の最高傑作が、世界を飲み込むぞ……」
ハーベルはメルキドを連れて【ルミナラ】へ帰還し、合流したレオン、クラリッサと共に再び惨状の視察へ向かった。
空から街を見下ろすレオンが、一箇所だけ異常なエネルギーを噴き出している区画を見つけ出す。
「ハーベル、あれだ……『魔鉱炉』が暴走してる!」
「衝撃で制御システムが完全に死んでるな。魔鉱石のエネルギーが逆流してる……このままじゃ、あと半日も持たない」
「爆発したら、どうなるの?」
クラリッサの問いに、メルキドが力なく答えた。
「リバースサーフェス……全6カ国が、地図から消える。……段ボール箱で爆弾を覆うようなものだ。逃げ場など、どこにもない」
「全滅……!? そんな、嘘でしょ!」
緊急招集されたアクシアとエリスが絶句する。
サリエルも顔を青くし、絶望に肩を震わせた。
「……唯一の道は、全員を表の世界へ避難させることだけれど、半日で全人口を動かすなんて不可能よ」
エリスが苦渋の決断を口にした。
誰もがリバースレルムの終焉を予感し、沈黙が場を支配する。
その時、会議室の扉が静かに開いた。
「皆さん、お揃いのようですね」
凛とした声と共に現れたのは、隠遁していた伝説の魔導師。
「師匠……! リーフィア師匠!」
ネルとクラリッサが、すがるように彼女のもとへ駆け寄る。
レオンとハーベルも、一縷の望みをかけて居住まいを正した。
「師匠、もうダメかもしれません……世界が、爆発して消えてしまう」
泣きじゃくる教え子たちの頭を優しく撫でながら、リーフィアは真っ直ぐにハーベルを見据えた。
「絶望するにはまだ早いですよ、ハーベル。……一つだけ、この世界を救う方法があります」
リーフィアの言葉に、その場の全員が息を呑んだ。
滅びのカウントダウンを止める、唯一の「奇跡」。
そして、その代償とは…。
ついにリーフィア師匠が登場!
科学でも、通常の魔法でも太刀打ちできない「魔鉱炉」の暴走。
果たして、伝説の魔導師が語る解決策とは一体何なのか。
四聖獣、神器、そしてハーベルの「薬剤師」としての真価。
全てが一つに繋がります!




