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星光記 ~スターライトメモリー~  作者: 松浦図書助
外伝(0277年9月) オーストラリア会戦<完結済み>
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外伝 オーストラリア会戦 06節

 「ヤオネ、砲撃指揮は任せる。野戦砲は榴弾をあと3分程度撃ち続けて、その後は徹甲弾に変更して戦車やサイクロプスを狙え。サイクロプス隊は、敵のサイクロプスの狙撃を中心にしろ。塹壕からは無理に出る必要は無い。」

 つまり、先に生身の兵士をなるべく殺せという事である。そのために、対人殺傷能力が高い榴弾砲を放っているのである。

 「了解。タカノブは?」

 「旗を揚げて山を下りる。小型機の隊士はここに残し砲撃を続けさせる。」

 「ちょっ!?」

 ヤオネ少尉が声を上げるが、つまり危ないという事である。

 「ペルセウスが下りれば敵の目を引き付けられる。狙われるが、この距離なら撃破されることは少ないだろう。俺が引き付けている間になるべく多くの敵を撃破してくれ。」

イシガヤはそう言いつつ、青地の幕府軍旗に白線一筋と南観世音菩薩の旗印を掲げる。幕府軍においては、特筆して武功が認められる者にのみ許されるもので、イシガヤについては撃破数こそ多くはないものの、ペルセウスを駆って目印となるべく前衛を務めることから、この旗を許されていた。

 「…………了解。タカノブは敵を撃破しなくていいから、ちゃんとコクピットの防御に専念を。ペルセウスのシールドと胸部装甲なら、机上計算では46センチ砲の直撃でも耐えられるから、ちゃんと胸の前でガードしてて。」

 王族であるイシガヤの機体は、その生存力を高めるために強力な装甲が施されている。コストを度外視した機体ではあるが、これは代わりに人々の先頭に立って戦え、という意味合いが強いものだ。

 「もちろんだ、わかっている。」

 故に、それを最大限利用して、彼自身が囮となるのである。



 白銀の騎士たるペルセウスは悠然と山を降るが、そこには敵の砲撃が降りそそぐ。山の地肌を砕くその雨の嵐は、しかし撤退しながらの砲火であって、精度はお世辞にも良いとは言えない。退こうと思えば退くことにこそ意識は集中し、射撃精度は大きく落ちるし、味方に取り残されぬよう、砲撃自体も甚だ散漫になるものだ。よくある引き撃ちが機能するのは、戦技・戦術的に訓練されているか、要塞等どこかで止まる余裕がある時くらいである。このような荒野で、突発的に発生した撤退戦で機能するようなものではない。そして、焦った敵が狙うのは目立つ敵である。つまり、旗指物を掲げて山を下りる、白銀色のペルセウスであった。隠れる気が全くないともいえるそのカラーリングはこの戦場では大いに目立ち、実際には彼らを狙う塹壕内の幕府軍機を越えて、ひたすらペルセウスを弾雨が弾く。だが、たとえ当たったとしても、ペルセウスのその分厚い装甲に遮られ、そしてそれに驚愕する間に、彼らは討ち取られていくのである。


 荒野に鎮む 巨人の骸 野風に朽ちて 御霊消え逝く



 「終わったか。」

 「タカノブは無事!?」

 イシガヤのため息交じりの言葉に、ヤオネ少尉が状況確認の通信をよこす。

 「俺は無事だがペルセウスは無事ではないな……。左腕損壊、シールド大破だ。そちらは?何機かやられたようだが。」

 よくそれで済んだ、という損傷である。彼自身のパイロット能力というよりは、やはり機体に助けられている部分が大きい。

 「サイクロプス2機戦闘不能、野戦砲ほぼ壊滅。他も損傷しているけど、まだ戦闘は可能。」

 ヤオネ少尉が友軍の状況を伝える。

 「敵サイクロプスは7機撃破、戦闘車両12両撃破、歩兵無数撃破。か。十分な戦果だが、敵がどう出るかだな。こちらの負傷者は?」

 その一方、見晴らしの良い場所にいたペルセウスの画像解析から、イシガヤが敵の撃破数を報告する。後の問題は友軍の負傷者などの損害である。あまりに多ければ不用意に動くことはできない。

 「いずれも軽傷だから、自分で手当てさせてます。」

 が、ヤオネの報告は状況的に良いものであった。

 「それはよかった。こちらの兵数はサイクロプスは俺をいれて6機か。敵が8機なら……。まだ近いな、残存部隊で追撃しろ。」

 「数負けしているけど。」

 「敵が近い。つまりはやられた歩兵を気にいしていて撤退しきれないのだ。……ライフル装備で、敵の負傷者や歩兵の周辺で、敵サイクロプスを狙撃しろ。」

 冷酷な表情で彼はそう告げる。

 「…………!」

 「戦争だ、構わん。そこに落ちている敵兵士は、捕虜でも民間人でもない。」

 それはそうである。現状では周辺にいる敵の兵士は民間人ではなく反乱軍として軍籍にあり、そして降伏をしているわけでも、降伏を許したわけでもないため、捕虜ではない。仮にいま白旗を揚げている者がいたとしても、戦闘中であるから対応など取れようもないものだ。

 「…………了解。」

 ヤオネ少尉の率いる手勢は、まばらに散開しながら敵の砲撃を続ける。今いる彼女たちの周囲には榴弾で負傷した敵歩兵が倒れうごめいており、それを気にした敵軍は撤退もままならずしかし応戦もしかねる状況で、幕府軍の餌食となっていく。追撃部隊は楽なものだ。逃げる敵を有利な状況で狙い撃てばいいだけで、多少撃ち漏らしたところで、逃げ散らせればそれで勝利である。落ち着いてトリガーを引く。ただそれだけの任務である。敵の散発的な応戦が周辺に肉塊を作るが、モニター補正でまともに映さないことは可能である。内心何を思うかは別として、今はそんなものを見ない、という方法で精神を落ち着ければいいし、殺しているのは彼女たちではないから良心もさほど痛まないものだ。

 「敵サイクロプスは幾らか撃ち漏らしましたが、戦域を離れました。」

 「各位、潰せる戦車は潰せ。歩兵は放置でいい。」

 「了解。」

 歩兵を殺すことは簡単だが、自動砲ではなく、狙って撃つというのは精神負荷が大きい。歩兵は足元の脅威ではなく、ばらばらに逃げ惑う者たちをサイクロプスで狙い殺すことも手間であるから、これは放置する、という判断であった。

 「ヤオネ、損害は?」

 「4機損傷で継続戦闘は不安です。兵の方は大丈夫です。」

 つまり、新たな負傷はない。

 「それはよかった。しかしこれからどうするかな。」

 イシガヤはつぶやくが、セレーナ中尉の縄張り陣地でどうにか敵を防いだものの、すでに陣地も崩壊し、部隊の被害も甚大である。

 「流石に現状の戦力では此処の維持は不安ですし、ウォガ・ウォガの友軍地まで後退しましょう。敵は十分引き付けたし追い払ったから、会戦に伴う敵の陽動は防げたと判断していいかと。」

 「なるほど。確かにそうだな。ウォガ・ウォガにも裏切り者がいないとは限らないから注意して後退しよう。負傷者も心配だしな。ここの敵軍の負傷者は、負傷していないで逃げ散っている連中がいるからそいつらに任せよう。若干の食料、医薬品、通信機のみ置いていく。流石にこの人数を俺達数機の人数で保護などできんわ。ウォガ・ウォガ市についたら救援隊を頼む。」

 「それでいいかと。それと幕府軍の旗を貸してくれる?タカノブのはいらないけど。」

 「旗?」

 後退する上で旗は基本必要ない。強いて言えばこの陣地に残していくくらいのことだ。また、幕府軍においては専用の旗持ちの旗は、本人がいない場所での掲揚は禁止されていることから、イシガヤがいない場所で使うという意味であろう。

 「この調子だと本隊にも問題あるんじゃない?私の機体はほぼ損傷ないから、敵軍の後方に回って、旗を立てるだけ立てて逃げてこようかと。」

 だが、彼女の案はそれともまた別の事であった。

 「……なるほど。では無理をしない範囲で頼む。旗は10本程度は残っている。」

 「了解。」

 後退部隊の指揮はイシガヤが自ら執り、ヤオネ少尉は単独で行動する。こうしてこのウランドラ山での局地戦は、幕を閉じたのであった。



 陽動部隊を抑えるイシガヤ隊の戦闘が終わった一方、本陣では戦端が開かれつつある。

 「敵の陽動部隊はおそらく抑えられたと思いますので、問題はこちらですね。」

 「左様ですわね。シルバー様、残念ながら友軍は浮足立っておりますわ。」

 シルバー少佐の発言に、副官たるセレーナ中尉が応える。今現在、シルバーが指揮を執るのは伊吹であり、セレーナは長門を預かっている状況であった。本来艦隊旗艦としては長門のほうが適切ではあるのだが、敢えての判断である。

 「布陣の空気を見ればわかりますが、これでは数勝ちしているといっても意味がありませんね。」

 本陣が浮足立っている理由は、先のハリー大佐の裏切り行為に拠る。戦闘中のイシガヤ隊から、詳細報告はできない状況のため判然としないが、概ねハリー大佐の部隊は壊滅させられたものと推測される。彼らは周辺偵察として35機で派兵されていたが、一度打ち合わせのために集結した後戦闘があり、ハリー大佐につかなかった兵達が殺され、残りは離反しバイド側に寝返ったと判断されていた。現時点でもこの裏切り状況ははっきりしていないが、不穏な状況を察した時点で、シルバー少佐とセレーナ中尉は別動隊のイシガヤに対して、不審な部隊に備えよと通達し、イシガヤはこれに対して不審な部隊は通さない、と連絡をよこしたのである。その後の戦闘音や航空索敵状況からして、おそらくこれらの部隊がイシガヤに撃破されたか、動きを拘束された、というのが現状の推測である。だが、現在本隊の状況はそれらの戦果に安堵しているわけではなく、内部の裏切りに警戒を続けて疑心暗鬼になっている状況にあった。実際、ハリー大佐の裏切り行為の情報が急速に末端まで広がったことから、内部に工作員がいることはほぼ確定ではある。

 「諸軍の浮足立ち方が酷いですわね。数で踏みつぶせば良いだけだと思うのですが。」

 セレーナが嘆く。

 「セレーナの言う通りです。数で勝っている現状、このキャンベラの陣地にこだわらず、強硬に進軍すれば勝利は堅いでしょう。例えちらほらと裏切り者がいたとしても、進軍を始めてしまえば簡単には内応できないですし、内応したところで踏みつぶせばいいだけです。だが、それを抑える人間がいる。」

 「参謀部に内通者がいるのか、あるいは臆病者がいるか、どちらかですわね。現在頼りになるのは台湾軍のみです。他の軍はやはり陣地脇で動揺しており、撤退も視野に入れている様子ですわね。」

 数で優っているとはいえ、状況は酷いものだ。こういう時に信用できるのは手元の軍勢だけである。基本的に傭兵や他国の軍というものは、信頼のおけるものではない。その国家における利益よりも、彼ら自身の利益を優先することが大半であって、勝利の確実性が高い場合は士気が高くとも、不利になれば即時に離散してしまうようなものだからだ。

 「敵軍レーダーに捉えました。サイクロプス隊で推定100機、戦闘車両50両、同伴歩兵もいる様子ですが数ははっきりしません。」

 「カリスト少尉、友軍の動揺はどうか?」

 「変わらずです。」

 現在、シルバーの本陣参謀長を務めるのはカリスト少尉である。基本的には情報の管理と精査、そして必要なものを指揮官に報告することが与えられた任務である。

 「エアーズ将軍に航空隊の出撃許可を。」

 「……了解。」

 シルバー少佐はそうカリスト少尉に指示をする。

 「…………本陣から連絡がありません。」

 「……え?」

 それは由々しきことである。何かがあった、そう考える方が正しい。

 「シルバー様、とりあえず航空隊の出撃を。また、伊吹の艦首拡散ビーム砲の発射準備を申請いたします。」

 同時に内容を聞くセレーナがそう進言する。

 「宜しい。カタクラ中尉、エアーズ将軍のところに直接乗り付けて状況確認と報告を。」

 「了解!」

 シルバー少佐はそう言って腹心のカタクラ中尉を状況確認に向かわせる。彼はシルバーとは子供のころから一緒に教育されていることもあって、その思う所を多く察することが出来る上に、彼女の重臣たる遊撃隊軍団長カタクラ少佐の孫として、立場もまた十分であった。

 「本陣内部で小銃の発砲音です!……あっ!」

 「何か?」

 「エアーズ将軍からの直接通信です。各軍は、出来るだけ人は殺さず、しかし当面各軍で応戦を。現在反乱分子の討伐中。……との事です。」

 カタクラ中尉の報告は、いたって問題しかない内容であった。だが、彼が直接通信というからには、それがエアーズ将軍からの直々の指示であることだけは間違いがない。

 「人を殺すななど、戦場にありながら甘すぎる。」

 「シルバー様、しかしながら総司令の指示ですから、無碍には出来ませんわ。」

 作戦効率を優先するシルバーを、セレーナ中尉がどうにか宥める。といっても、セレーナ自体も同感な状況であるため、御互いにストレスはマッハであった。

 「そうですね…………。さしあたり敵に備える必要がありますね。」

 「御意。」

 「では、このまま進めましょう。」

 それはセレーナの考える苦肉の策である。

 「準備できましたね?艦首拡散ビーム砲、放て!」

 シルバー少佐の号令一下、伊吹艦首に搭載されている拡散ビーム砲が荒野に煌めく。基本的には、前面に展開する敵航空戦力を一気に叩き落とすために搭載された武装ではあるが、拡散率を抑えれば敵艦すら一撃で沈める破壊力を持つビーム砲に変わる。ただ、昨今の戦争ではビームを拡散させる攪乱幕が展開されるため、実際の効果としてはイマイチのものであった。

 「伊吹面舵!」

 しかし、そのビームの粒子は敵ではなく荒野を焼き、土塊を巻き上げ、彼女達の眼前に空堀と土塁を築き上げていく。戦闘距離にはまだあるため、敵を倒すことは自体はかなわないが、この地形変更にはいくらかの意味がある。サイクロプス隊以外の行動を抑制し、遅延し、或いは迂回させることで、こちらへの攻撃を遅らせ、それによって敵を狙い撃つのである。

 「伊吹砲冷却に入ります。射撃可能時間までおよそ30分。」

 「構いません。カリスト少尉、土塁はどれほどか。」

 「概ね2キロ範囲で高さ1メートル強の土塁しか形成できていません。土塁の前には同様の深さの空堀ができていますので、最大高低差は2メートル程度。」

 「越えて越えられなくも無いが、越える場合は時間がかかりますね。とりあえずは充分と考えましょう。」

 つまりこれは、敵の歩兵を分断するための処置であり、もし分断されない場合には単純に時間を稼ぐためのものであった。



 「バイド将軍!変な土塁が形成されましたが、エアーズ将軍の率いる本陣は混乱中!援軍諸軍も士気は低い様子です!」

 「よし、このまま押し込むぞ!進め!敵のビーム砲は恐ろしいが、地表にあってはビーム攪乱幕が有効となる。濃度を上げて対処せよ!」

 バイド率いるサイクロプスと戦車の部隊が、急造の土塁と壕を乗り越えて進軍を始める。一部の超堤能力の高い戦闘車両や、特に全長20メートル近いサイクロプスにおいてはこの程度の土塁と壕は、人間の縮尺にしたら10センチから20センチの、足元に存在する僅かな起伏に過ぎない。とはいえ、流石に戦闘装備の状況下では、サイクロプスなどでこれを埋め戻すというわけにもいかず、歩兵と一部の戦闘車両はこの壕を迂回することになる。だが、狙う敵が機甲部隊に絞られた事は幕府軍にとっては都合がいい。混乱中とはいえ本陣のエアーズ将軍からの指示は、なるべく人を殺すな、であるから、現時点でこの反乱軍歩兵を根絶やしにすることに若干の問題を抱えていたからである。



 「戦闘機隊、敵サイクロプス部隊を攻撃せよ。また、台湾軍に連絡。支援砲撃の準備を。」

 シルバー少佐はそう通信士に命じる。現状で台湾軍は伊達幕府の後方におり、支援砲撃中心の兵装で待機している。これは、台湾総督である朱籍を危険に晒さないための方策であると同時に、彼女からすればもっとも頼りになる幕府軍を前面に配置することで、兵の動揺を防ぐためであった。狼に率いられれば、それが喩え羊であっても勇猛な軍に変わるものだ。

 「了解!」



 眼下に迫りくるバイド将軍率いる敵の進撃は激しく速く、その砲火はオーストラリア軍を筆頭とした友軍諸陣営に降りそそぎ始まる。昨今のサイクロプス戦は、せいぜい20機程度が一つの戦場で戦う小規模局地戦が主であり、数百の機体が集うこの会戦は稀にみる大会戦であった。慣れぬ砲火に晒された友軍諸兵はこの様相に慌てふためき、一方で扇動により士気旺盛なバイド将軍の軍勢はこの轟音劫火に興奮し闘志をさらに掻き立てる。正規軍として戦場を知るが故にその恐怖は友軍に蔓延し、反乱軍は戦場を知らぬが故に熱に浮かされなお激しく砲撃を続ける。幕府軍の若き将兵は新連邦に駆り立てられ、多くの戦場で干戈を交え、有利も不利も味わってきた猛者である。多少の不利や多くの敵にも動揺することなく、敢然として陣容を整え、その態度に背中を守る勇猛な台湾軍もまた、静謐なままに応戦をつづけるのであった。



 「オーストラリア軍の一部が壊乱!援軍部隊も逃げ散っていきます!友軍に動揺!」

 だが、戦況は芳しくない。本陣が混乱している中で敵の意気軒高たる進軍を見せられ、ただでさえ士気の低い援軍諸兵の恐怖が煽られたのだろう。

 「…………長門を押し出します。シルバー様、ご決断を。」

 だが、そんな状況で崩れる味方に飲み込まれれれば一大事である。帰心に駆られた兵は弱い。この心を押し返すには、断固たる指揮官の態度が必要であった。ここに来て長門を前進すると提案してきたのは、当然ながらセレーナ中尉である。

 「そうですね。それで行きます。長門は前進せよ!サイクロプス隊もそれに続きなさい。」

 シルバー少佐の命令で、セレーナ中尉指揮する長門が前進を始める。大型艦を前進させるという事は、その艦が撃沈され甚大な被害を受ける可能性が増大する。だが、巨大な友軍が前線に進んでくるというのは、友軍にとっての精神的支柱になるものだ。

 「セレーナに伝令。幕府軍旗を揚げよ、と。」

 旗艦長門にはためくのは、白地に太陽、法輪のような日輪、イルカをあしらった幕府軍旗である。多くの戦場で武名を轟かせてきた伊達幕府軍の旗であり、多くの将校にとっては畏怖するべき旗であった。

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