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星光記 ~スターライトメモリー~  作者: 松浦図書助
前編
62/144

第13章 宇宙海賊討伐戦 05節

 カリスト艦隊の行動にしばらく時間は遡るが、セレーナ少佐が彼女達を出撃させてからおよそ1週間。フェドラー准将率いる艦隊は、伊達幕府軍要塞イザナミ周辺宙域に到達していた。フェドラー准将の目的は明白である。現状で海賊艦隊を討伐し航路の安全を守ろうとする、加えて目下目障りな勢力拡大の恐れがある伊達幕府軍を、現状の戦力が少ないうちに痛打することである。あるいは伊達幕府軍をイザナミに閉じ込め、その威信を失墜させるだけでも良い。乱世である。力の無いと見られた軍は大幅に戦力を減退させるも同じである。一方、イザナミを指揮する伊達幕府のセレーナ・スターライト少佐は、不気味なほどに静まり返り今に至る。

 「さてさて……。そろそろですかね。トウドウ大尉、エン大尉、砲艦と戦艦をイザナミ周辺に展開させなさい。」

 そう指示するのは伊達幕府軍宇宙方面軍を預かるセレーナ少佐である。いつも通り優雅に紅茶を飲みながらの指示だが、各師団長達も慣れたものである。通常であればカリスト大尉に任せた艦隊を指揮するべき人材であるが、今回はセレーナが総ての師団長格を手元に残していた。

 「展開、ですか?今更ですか?」

 エン大尉が疑問を呈する。通常迎撃戦をするつもりであれば、敵艦隊が近づく前に戦力を展開し、少しでも有利な布陣で迎撃するはずである。それが籠城してからの出撃となっては、色々な小細工をしかねるのである。

 「今更ですが。それと、この状況を仙台のクラウン様、ヘルメス様にお知らせし、近隣諸国から援軍をいただけるように願い出るのです。既にされているかもしれませんけどね。通信は数回行い、暗号強度はあまり強くし過ぎない程度でお願いしますわ。」

 その点についてセレーナ少佐は念を押す。

 「わかりました。ですがセレーナ少佐……、兵力を展開し援軍を要請する。それは敵の侵攻に備えるということですね?」

 当たり前のことではあるがエン大尉が確認する。これまでは完全な籠城モードであって、もちろん襲撃に備えていないわけではなかったのだが、かなり悠長な行動だったためである。無論将兵はセレーナ少佐の事を信頼しているため、それで士気が下がるという事はなかったとはいえ、である。

 「そうですわ。」

 「今まで強気なほどに静まり返っていたのに、あわてて兵力展開したならば、敵に弱みを見せることになりませんか?今更になって我らが恐れている、と。」

 彼はセレーナの指示に聊か疑問があるのだ。通信についても、強すぎる暗号は確かに不審であって、相手に備えさせ解読を促すことになるリスクがあるのだが、だからと言ってあえて強度を落とせという指示である。

 「……わたくしは、敵の攻撃を、恐れているのですわ!」

 そう言ってのける彼女の顔は、いつも通り優雅なほほえみを讃えているのであった。

挿絵(By みてみん)



 「フェドラー准将、敵艦隊が動き出し始めました。」

 フェドラー准将に対して索敵手が報告を上げる。これまで引きこもっていた伊達幕府軍の唐突な動きである。警戒を強める必要があった。偵察部隊は十分に展開しているため、少なくとも奇襲などを恐れる心配はないのだが。

 「そうか。今更だな……」

 とはいえ油断はできない。索敵強化の指示を出しつつ、フェドラー准将はそうつぶやく。

 「怯えたのか……?いや、そうとらえるには都合が良すぎるか……。先にラグランジュ6へ向かった敵艦隊はどうなっている?」

 気になるのはイザナミから出撃した艦隊である。要塞に残さなかった時点で、何らかの策はあるはずであった。それが彼の奪取したイザナギを落とすつもりなのか、彼らの艦隊を挟撃するつもりなのか、或いは部隊を逃がすためなのか、それは何とも把握しきれていないのではあるが。

 「傭兵海賊とラグランジュ6に働きかけております。なにか策があってもある程度足止め可能かと。なお、現状では演習を行っているようで、特別な動きはありません。」

 追加報告の内容的には、差し当たっては戦局に問題ないだろう。

 「そうか。そちらの動きにも気をつけてはおけ。」

 「御意。」

 「いずれにしても、とりあえずは目下の敵をどうするかだな。兵糧は1か月分程度。先に陥落させ我が拠点にしたイザナミの対要塞イザナギの兵糧も3か月程度だ。そう長居はできないぞ。コロニー諸国が先の戦闘で士気を落とし、再編成して反撃準備を整える前に、この伊達幕府軍に一撃を入れることが肝要だ。伊達幕府軍の戦力は微々たる物だが、名将ハーディサイト中将を撃破し、その武名は比類ないものがある。我が勢力拡大の上で、目の上のたんこぶとなる軍事勢力といえるだろう。奴らが勢力を拡大できず、本拠からの補給も無い今こそが、奴らを一撃する最大のチャンスであるといえよう。全軍、奮起せよ!」

 一撃を入れて政治的優位を確立し、その後の動きを考える。要はそういう事である。別に此処で伊達幕府を倒さなくてもいいが、少なくともある程度の戦果を挙げる、それをもって未来を描こうというのが彼の算段であった。この時世、力のないものは交渉のテーブルにすら乗れない。彼の考えは至極全うである。




 「敵艦隊接近!その数、サイクロプス300機、艦艇40隻程度と考えられます!」

 戦闘指揮所のセレーナ少佐に、彼女の部下であるオペレーターが伝える。戦闘前の聊かこわばった声だ。

 「ランファ軍曹、慌てずともよろしいですわ。その情報は、フェドラー艦隊がこの宙域に来た時点で知っていますわ。」

 近場への斥候は十分展開しているのだから、今更な情報である。今は無人偵察機器などは壊され、近場のデータ収集しかできないわけだが、毎日繰り返して情報確認しているのである。

 「全軍に敵接近を通達、急襲に備えるように伝えなさい。なお、ダミーバルーンのフェイク戦艦や巡洋艦を前方に射出。20隻分程やっておきなさい。それとオバタ少尉、あなたが伝令としてトウドウ大尉以下、艦長及びサイクロプス隊隊長を集合させなさい。各艦各隊は、副艦長及び副隊長に任せてくるように。」

 それはちょっとした博打のようなものだ。



 「フェドラー准将、艦影です。」

 セレーナ少佐が艦隊を出撃させる一方、その動向を偵察し構えていたフェドラー准将に報告が入る。

 「約20隻、いずれも巡洋艦や戦艦のシルエットですが……」

 索敵手の報告は疑問を持ったものだ。

 「このイザナミ要塞にそんな艦艇が残っているわけが無い。確認しろ。」

 無論、言われるまでもなく調査中である。流石は度重なる戦闘を潜り抜けてきたフェドラー准将の手勢である。

 「……全部の確認は取れておりませんが、ダミーバルーンのようです。」

 ダミーバルーン……。要するに戦艦などの形をした巨大な風船だ。敵の目をくらませ攻撃対象を見誤らせたり、実数をごまかしたりするために使う、メジャーなフェイク用品である。

 「……敵は、何を考えている。ダミーであることは明白なのに、ダミーを出してくるなど……」

 先の急に怯えたように展開を始めた艦隊といい、この意味不明なダミーといい……、その意図が全く分からない。

 「とりあえず艦速を落とせ。また可能なら少し後退せよ。偵察部隊と分析部隊を展開し、ダミーにおかしいところがないか確認せよ。」

 敵の司令官であるセレーナ少佐という人物は、決して短絡的な人物ではないはずだ。こちらまで慌てて展開するタイミングではない。そう考えてフェドラー准将は慎重に兵を動かすのであった。



 「セレーナ少佐、質問がある。」

 フェドラー准将が索敵のため兵を下げる一方、幕府軍の師団長達が集まりセレーナ少佐に質問を始める。

 「なんですか、コウサカ大尉?」

 先ず口を開いたのは宇宙軍師団長のコウサカ大尉である。幕府でいう所の師団艦隊、空母や戦艦をはじめとして複数の艦種を編成し、独立作戦が取れる艦隊を指揮する権限を持つ指揮官の一人である。

 「先に出したバルーン艦はなんだ?相手は我が方に20隻もマトモな艦艇がないのは知っているはずだが……」

 「そうですわね。」

 しれっとした態度でセレーナ少佐はそう流す。それが何か?とでも言いたげな態度である。

 「いや……、そうではなくてだな。どうしてこんな不思議な行動をとったのか聞いているのだ。」

 はっきり言って、バルーン艦を出したところでそれがフェイクであることは分かっているのだから無意味である。そんなことは子供でも分かる事実なのだ。だが、それをしたからには、何かしら背景があるに違いない。そういう事である。

 「コウサカ大尉、貴方がフェドラーだったらどう考えますか?主に、敵要塞指揮官が何を考えているかについて。」

 「味方でも解らんのだ、敵だったらなおさら解るわけが無い。」

 「では、その条件で貴方がフェドラーならどうしますか?」

 「踏み潰す……、といいたいところだが、焦る必要もあるまい。敵の行動が不自然であるからには、まずは偵察部隊でダミーに異変がないか確認する。」

 どちらかというと強硬派で猛将タイプのコウサカ大尉であるが、無論バカではない。師団長として艦隊を指揮するだけはあり、冷静で慎重な対応ももちろんとることはできる。

 「そう、ソレを期待してダミーを出したまでです。急襲されるのは嫌でしたので。」

 「……まさか、ダミーは本当に無意味なのか?」

 「もちろんです。」

 「なるほど……」

 流石のコウサカ大尉も思ってもいなかった回答をもらい面食らう。いや、正確には思っていなかったわけではないが、まさかそんなことがあろうはずはない、という思い込みである。バカでもやらないことを、まさか本当にやるとは、ということであるし、それをそう使うのか、という事である。

 「ところでセレーナ少佐、敵兵力は圧倒的です。いかがなさいますか?」

 コウサカ大尉以外の師団長たちも、みな虚を突かれたような表情を浮かべるが、その中でトウドウ大尉が話を進める。いつまでも呆けていても仕方が無いのだ。

 「そうですね、トウドウ大尉。とりあえず敵の動きが止まりつつあります。」

 トウドウ大尉もまた宇宙軍師団長である。艦隊及びサイクロプス隊を指揮している。勇猛ではあるが比較的冷静沈着なタイプの指揮官である。

 「ついては、ダミーを抜けてきた敵への対処を検討いたしましょうか。ランファ軍曹、図を。」

 「はっ!」

 兵力展開図が大型モニターに映し出される。

 「御覧の通り、敵艦艇40隻、敵サイクロプス300機。味方艦艇12隻、味方サイクロプス30機です。数だけ見れば圧倒的不利ですが、我が方は要塞防御。これ以外に多数の砲もあれば、艦艇自体も総てが砲艦か戦艦であり、駆逐艦や輸送艦はこの数に含まれていません。」

 「……なるほど。火力に関してはそれほど敵に劣らないと。」

 トウドウ大尉が投入可能な砲門数を考えてそう結論を出す。移動砲台という小型サイクロプス用ユニットや、自走式砲も多数存在しているのである。これらは要塞防御用であるため移動が遅く、遭遇野戦などではそうそう使いこなすことは難しいが、こういった防御作戦では移動距離も短いため十分である。

 「しかし、サイクロプスの数においては決定的に差がありますな。」

 続いてコウサカ大尉が述べる。

 「ですわね。ところで、諸将はどのように対処したらよいとお考えですか?」

 そう言ったセレーナ少佐が、諸将の顔を眺める。彼らの力量はどれほどのものか、そう思いながら値踏みするようにである。彼女の西洋人形のように整った容姿、白い肌、美しい金色の髪、澄んで冷たい蒼い瞳の前に、諸将はその肝を冷やす。日系人の多い幕府においてはいくらか異質の容姿であるが、それが彼女の威厳を余計に高めているのである。現世に無き天上の人かの如くである。

 「愚見ですが……」

 だが、それでも幕府の師団長達も決して狼狽えているだけではない。彼等もまた優秀な指揮官なのだ。

 「よろしい、トウドウ大尉。」

 先ずはトウドウ大尉がおずおずとしながらではあるが声を上げる。

 「はっ。私ならば、敵を引きつけ要塞に篭りつつ反撃し、敵の戦力を削ります。これによって時間を稼ぎ、先に出撃させたカリスト大尉旗下艦隊の到着を待ち、挟撃。敵を覆滅することを第一とします。」

 「なるほど。トウドウ大尉の言うこと、一理ありますね。」

 「よろしいでしょうか?」

 「ええ、エン大尉。」

 このエン大尉は海軍師団長である。海軍が壊滅状態にある現状、宇宙戦適性がある彼は宇宙艦隊師団長として配備されている。なかなかに手堅い戦術展開を行える実戦経験豊富な指揮官である。

 「はっ!私もトウドウ大尉の作戦もっともだと思いましたが、やはり戦力的に敵に劣ることは疑う余地もありません。で、あるからして、仮に挟撃体勢を取れたとしても、それだけで敵に勝つことはまず不可能だと思われます。私としては、要塞防御に徹底し、この間にコロニー諸国からの援軍とカリスト大尉旗下艦隊を合流させ、この大艦隊を待つのが上策だと考えます。」

 「なるほど。エン大尉の言うことにも一理ありますね。」

 彼女の頭がささやかながらもうんうん、と言ったように頷いて見える。彼女の意見と必ずしも一致しているわけではないのかもしれないが、比較的意見があっている、という事なのだろう。

 「皆様臆病ですなぁ。」

 そう尊大な雰囲気で発言するコウサカ大尉であるが、此処は一応攻撃的な意見を出してセレーナ少佐の反応を見ておこう、という腹積もりなのであろう。

 「コウサカ大尉、何か言いたいことがあるようですわね。」

 「うむ。皆に聞く、カリスト艦隊を何故ラグランジュ6に派遣したというのだね?ラグランジュ6は、敵要塞イザナギにもっとも近いコロニー群。我らがこの要塞で敵主力艦隊を押さえ込んでいるうちに、カリスト大尉の艦隊がイザナギを力攻めすればいいのではないか?イザナギは所詮防御力の低い要塞。力攻めすれば落とせないこともないだろう。まして、先の合戦で充分に要塞機能を取り戻していないはずだ。我らの目の前にいる敵にしても、帰還すべき要塞がなくなれば退くを得ないだろう。」

 「なるほど、コウサカ大尉の策もまた、覇気溢れる策ですわね。」

 セレーナ少佐は軽く流そうとするが、

 「お待ちください!力攻めなど無謀な策ですぞ!」

 エン大尉が食って掛かる。

 「エン大尉、なにを言うか!敵に攻撃を受けているだけではこちらが損ではないか!」

 様子見のつもりであったはずのコウサカ大尉は、自分の発言を否定されたかと思ったのか、彼に反論を始める。セレーナ少佐はそれを無視して他の意見を尋ねるが、基本的にはイザナミの防御に徹するか、イザナギの攻略をするかの2択に分かれている状況であった。もっとも、その方法はいくつもあるため、議論はさらに紛糾する状態であった。

 「それで、軍司令官たるセレーナ少佐はどのようにお考えなのか?」

 紛糾する会議に嫌気がさしたのだろう、トウドウ大尉がセレーナ少佐に直接訪ねる。

 「そうですね、トウドウ大尉。わたくしは持久戦に持ち込むつもりですわ。」

 「と、なれば、要塞防御に専念し、カリスト大尉や友軍の援護を待つ、ということですかな?」

 「いいえ。」

 それをセレーナ少佐は即否定する。

 「いいえ、だと?」

 それに声を上げるのはコウサカ大尉である。

 「ただ待っているのも無益でしょう。」

 「それは、そうだが……。では?」

 「カリストの艦隊は敵要塞イザナギに向けます。というより、我々からは正式な交信が難しい現状、おそらくヘルメス少佐の内意を受けてカリストはイザナギに向かうでしょう。我々は、ほぼ単独で敵の攻撃を防ぐことになるでしょうね。」

 フェドラー艦隊に包囲されているイザナミ要塞は、通信妨害を行われている。この状態でカリスト艦隊と密に情報のやり取りをすることは不可能である。その状態からすれば、カリスト大尉に指示を出すのはヘルメス少佐を置いて他にはない。

 「なんと!?それではカリスト大尉はイザナギを攻略するのか?」

 「いいえ。」

 セレーナ少佐は重ねて否定する。

 「普通に考えたら、要塞の力攻めなどいたしませんわ。」

 「ではどのように?」

 トウドウ大尉が先を促す。

 「イザナギを遠巻きに包囲するのですわ。敵の補給艦を叩けばそれで充分。友軍にも機動艦の出撃を頼んでいますし、その増援を加えれば充分封鎖できるでしょう。少なくとも、ヘルメス少佐はそれを意図してカリスト大尉に指示を出すかと思いますわ。」

 実際、セレーナ少佐にしても推定で話さざるを得ない。

 「なるほど。しかし眼前の敵が反転し、カリスト大尉の艦隊に向かったらどうなさるのですか?要塞を攻略していない以上、野戦で敵うとは思えないのですが。」

 トウドウ大尉の指摘するように、決戦になった場合には戦力で明らかに不利である。

 「野戦で戦えば勝てないでしょう。しかし、お忘れですか?私が出撃させたのは足の速い機動艦ばかり。敵艦隊は戦艦・砲艦・輸送艦などを含めた艦隊であり、全体速度は速くありません。敵が反転した場合は、即座に逃走すればいいのですわ。純粋な機動艦隊だけとの戦闘であれば、わずかですが我が方有利です。たとえ最悪の事態で決戦になっても、兵数で押し切れます。」

 機動艦ばかりを出陣させたことに疑問を持っていた諸将も、なるほどそういう事だったのか、という風に納得する。どちらかと言えば決戦志向の強い諸将にとっては、あまりない視点である。

 「しかし敵を殲滅できませんが?」

 だが、トウドウ大尉の言う通り、その戦術では敵を殲滅することは困難である。

 「眼前の敵がいなくなるでしょう?我らの主目的は、木星におられるシルバー総司令のご帰還まで、この要塞を持ちこたえること。敵の殲滅は任務の外ですわ。」

 「ふむ。しかし敵も同じように我らがイザナミを遠巻きにした場合は?」

 「どうということはありません。イザナギ付近の制宙圏は確保できますし、我らのイザナミには最低1年分の食料弾薬はあります。対して、敵も我らイザナミ周辺の制宙圏は確保できますが、イザナギの制宙圏は確保できません。イザナギは先に交戦したばかりであり、もともと篭城の備蓄が不十分なところへ敵が急襲したのですから、物資など微々たる物でしょう。イザナギの物資は最大限に見積もって3か月分。長引けば敵要塞イザナギが自落しこちらの勝ちですわ。加えて、敵軍フェドラー准将の敵は我々だけではありません。包囲軍自体もそう長期間遠巻きに囲んでいるわけにもいきませんわ。」

 戦うだけが能ではない。戦わずして敵を排除できるのであれば、その方が断然楽である。特に彼女たちは、シルバー大佐の帰還まで兵を温存しておく必要がある。無難にこなすことが重要であった。

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