第03章 第2次釧路沖会戦 02節
一方で伊達幕府軍残存艦隊が集まる釧路軍港である。その会議室には釧路、石狩、旭川が専用回線で繋げられ、軍議となった。
「今上陛下への御挨拶のために首都仙台に向かったイシガヤ少佐を除き、将官全員揃いましたね?それでは再度の釧路沖戦予定に関する作戦展開ですが……」
神妙な面持ちで、伊達幕府軍総司令であるシルバー・スター大佐が会議を進める。
「それよりもギン大佐、お聞きしたい事がある!」
「なんでしょう、クキ少佐?」
そのシルバー大佐に声を荒げて抗議するのは海軍軍団長の九鬼藤幸少佐である。伊達幕府の少佐の中では最年長であり、数多くの戦場を生き抜いてきた叩き上げの提督である。
「ただでさえ戦力は敵に劣ると言うのに何故艦隊を2手に分けたか!これではよりいっそう勝機が薄くなるではないか!」
クキ少佐が怒鳴るのはシルバー大佐か残存艦隊の内、釧路に集める事ができた艦艇とそれ以外を石狩に配置した事である。海路750km距離的に程はあるので、高速艦や航空艦以外の海上艦艇を集める事は難儀ではあるのだが。
「時間稼ぎの為です。勝つ気は最初からありません。」
その質問に対してシルバーが明け透けに答える。
「なんだとっ!?」
「今現在、苫小牧と旭川からの民間人脱出が完了していません。苫小牧・旭川は、石狩を抜かれれば敵陸戦兵力の自由な行動を許し非常に危険な立地にあります。日本海側において、石狩以外は艦船の接岸に不向きであり、また自動対空砲も多数生きており、民間人脱出までの時間で強襲される恐れも少ないため問題ありません。仮に石狩以外から上陸されても、上陸に時間の掛かる敵を攻撃しやすい。」
シルバーはクキの怒鳴り声を無視して淡々と続ける。
「次に釧路ですが、此処を抜かれてしまうと敵空軍の攻撃が防げません。日本海側の敵は主にロシアの強襲上陸部隊で大型の空母は1隻も無く、またロシア極東方面の空軍戦力は大したことありませんし、それらを他地域から移送したという話も聞いていません。しかしながら釧路沖の敵軍主力は違う。先にハーディサイト中将から提出されていた演習目録及及び、我が軍の偵察機に拠れば、戦闘機400程残存していると思われますが、これらが釧路帯広で補油し侵攻を開始すれば、苫小牧・旭川までなら15分以内に到着してしまう。元々釧路方面からの侵攻は考えていませんでしたので、対空砲台も充実していません。」
これは些かやむを得ない事だ。日本海側は大陸とそう距離が離れているわけではない為、急襲される事も考慮した軍備展開となっていたのだが、太平洋側から強力な攻撃を受けるという事は、釧路沖で完全に敗北していなければ発生しようが無い状況なのだ。それほどの事態も想定していないわけではないが、そこまで充実した軍備をするというのも予算上問題がある。
「ならば僅かな民間人を見捨てるべきだ!」
「クキ殿!言葉が過ぎますぞ!」
流石に民間人を捨てるというような暴言に制止の声が挙がる。
「ワキサカ!貴様のような師団長如きの出る幕ではないわ!」
それはクキ少佐の部下となる海軍師団長ワキサカ大尉であったが、クキ少佐に一喝される。
「まぁまぁ皆さん、お静かに。」
混沌としかけた場を女神隊軍団長の星光瀬怜奈が鷹揚に静止する。伊達幕府には大和民族以外の血筋の者も多く、王族にしても伊達家と石谷家以外は混血である。それでもアジア系が多い中で、セレーナ少佐は両親共にフィンランド系のフィン人系統であり、この会議においても容姿からして異彩を放っている。
「セレーナ、貴様はどう思うのだ!?戦略・戦術的な判断としては、明らかに兵の分割は不利である!そうであろうが!?」
その異彩を放つセレーナ少佐に、クキ少佐が詰問口調で訊ねる。少佐の中では筆頭に挙げられるクキ少佐であるが、この当年僅か24歳にして少佐の中で最年少であるセレーナ少佐には一目を置いているのだ。
「では、石狩からモニター越しに失礼させていただきますわ。……やはり戦術としては間違った用兵でしょう。軍事的に一番の方法としては、総ての戦力を仙台に退かせ、日本協和国全体でこれに当たるべきです。」
「で、あろう!」
その発言にクキが賛同する。日本協和国の戦力は伊達幕府を除き約5個軍団、少なくとも現在に比べて倍近い戦力を用意する事も不可能ではあるまい。
「但し……用兵は政治に左右されます。現在、わたくし達は木星の民衆の支持を受けこの地球圏に居ます。本拠地は遥かに遠く、兵站線は細い。この事情が最大の問題ですわ。万一この状況で……万一民を見捨てる事で我々が民に見捨てられたら、我が軍は完全に壊滅致します。木星へ帰る事すら困難でしょうし、木星に帰れば帰ったで軍事裁判で死刑も有り得る。」
「セレーナ少佐、大袈裟過ぎはしないか!」
「クキ少佐、今現在木星を治める王族は、イーグル先王ですよ?」
その言葉にクキ少佐が表情を固めて動きを停止する。
「何を隠そう、イーグル先王が幕府安泰を築けた要因の一つは、ハーディサイトと盟友の関係にあったからですわ。イーグル先王は、ハーディサイトが東南アジアに覇権を築く事の代償に国土の間接的防衛を任せ、これにより新連邦政府の援軍に応えるべく出兵していました。おかげで建国時には叛徒とまで罵られたわたくし達の国は、亜細亜随一の帝國と渾名されるまでに武名を獲得しました。」
「イーグル先王とハーディサイトは親密だと……。セレーナ少佐、貴様は何か両者に密約でもあると疑っているのか!バカな!イーグル先王は偉大な王であった。それは国主として当然の外交処置だったろう、だが今は違う!違うはずだ!」
そういうクキではあるが、その言葉には逡巡の感が見える。
「それはなんとも。」
セレーナは涼しい顔をするが、諸将にとってその言は不安を煽るのにあまりにも効果がある。イーグル先王は味方であれば頼りにもできようが、敵になるなら手の内を知っているだけに怖い。そして、そういうことをしかねない人柄であったからだ。
「たださしあたり……民間人の避難を順当に完了させれば、民心が離れる事もそうないでしょう。何がどう転ぶか判らない今、そのためにやむを得ず兵力を分散するのは仕方のない事ですわ。」
「むぅ……」
クキ少佐も粗暴な部分があるだけで、軍団長を務める知性もある。故にそのセレーナの発言にも納得できる部分が多いのだ。それ故に黙らざるを得ない。
「やむを得ないとはいいますが、私としてはそんな戦ごめんこうむりたい。先の戦闘での傷も癒えておらぬ。」
落ち着きかけた場を荒らすように、クキ少佐と並んで座る提督が述べる。
「臆したか、リ!死ぬか死なぬかの現状で、負傷も糞もないだろう!」
クキ少佐がリと呼ぶ提督は、伊達幕府空軍軍団長の李明少佐である。台湾生まれの彼は幼い頃に日本に帰化しており、その後軍属となって軍団長にまで上り詰めた人物である。伊達幕府における現役将校の中では、クキ少佐に続くベテランであった。
「臆したかだと!?そう言うクキ殿も戦いたく無いのだろう!」
罵倒されたリ少佐が怒り狂うが、
「2人とも落ち着きなさい!」
モニター越しに防衛軍軍団長のヘルメス少佐が止めに掛かる。ヘルメス少佐はセレーナ少佐より1歳年上の25歳と若いが、以前は『現代の巴御前』と呼ばれたエースパイロットであり、準王族バイブル家当主の妹で、かつ王族にして副司令であるカナンティナント・クラウン中佐の妻でもある。防衛軍はその名の通り、北海道及び仙台周辺の防衛の為に組織された軍団であり、水際防衛用の砲兵部隊などを運用している。諸外国への援軍などとして派遣される事はほぼ無く比較的暇とも言える軍ではあるが、それ故に通常は幕僚として幕府軍の軍事に深く携わって居るのであった。各軍団長の纏め役のようなものであるから、場を納めようとするのは当然である。
「あらあらまぁまぁ。」
一方、そんな混乱状況が始まった元凶であるセレーナは、まったくの他人事という態度である。
「セレーナ少佐、茶を啜ってないでだな……」
そんな彼女を見ながら副司令であるクラウン中佐が呆れたような感想を述べる。出来れば混乱状況を納めて欲しいというような感じである。
「クラウン中佐こそ、自分でご発言なさったらいかがですか?」
はっきりとした態度を見せないクラウン中佐を睨み、セレーナ少佐が冷たく述べる。
「…………。」
だがそれでも発言しないクラウン中佐である。別に彼に決断力が無いというわけではないのだが、それでもこの態度であるという事は含みがあるという事だ。
「よろしいでしょう。ここは最年少にして王族でもない私こそが、暴言を吐く場面でしょう。提督方、これは私の推測ではありますが……どうやらわたくし達の司令官は、賢き所から民を護るために時間を稼ぐよう言い含められているようですわ。此処で軍人が華々しく死んでも国の名誉は保たれますが、民間人が死んでは日本に残る者にとって、そして幕府の所属する日本協和国にとって一大事です。国が国民を守らないなどと民心不安に陥れば、国民の統制を優先せねばならず、纏まった軍事行動で敵残存兵力に当たれなくなります。今、イシガヤ少佐……現執権が陛下の所へお出かけで軍議に参加されないのも、何か理由があるのでしょう。」
セレーナ少佐はモニター越しにシルバー大佐の顔を見つめながら言う。
「仮にそうだとしてもだ、この無謀な軍事運用は認め難いぞ!死にに行くようなものではないか!」
「クキ少佐、それはわかりますが……」
「セレーナ、お前はどうするのだ!?」
それはもう、死にに行くのか?という質問と同じである。
「クキ提督も無茶ぶりをされますわね。……わたくしは女神隊所属ですから、ともあれ民を護らなければなりません。女神隊は通常幕府軍の指揮下にありますが、本来の役目は幕府軍に対する抑えと民間人保護を目的に、国会から直接の指揮を受ける立場にあるのです。幕府の純粋な軍人とは違いますわ。戦術がどうのという前に、有志を募り、捨て奸に決死隊を配置してでも、1人でも多くの民間人を逃がさなければなりません。それが、わたくしの役目ですわ。」
「うぅむ……」
クキ少佐が唸る。セレーナの言は尤もだ。
「ヘルメスはどうするのだ?」
「わたしも元々は女神隊の出身ですし、まして現在は防衛軍の軍団長ですから、此処で守らなければ防衛軍軍団長の役職の意味がありませんわね。クラウン中佐も残るということですし、指揮に従い守るしかないでしょう。」
「お前とクラウン中佐は夫婦であった。イシガヤは……出かけておるな。」
「イシガヤ少佐も私の命令に従う事は確実でしょう。」
そのクキ少佐のつぶやきに間髪を入れず、シルバー大佐がそう述べる。
「……イシガヤはギン大佐の夫であったわ。」
「おい、クキ、俺には聞かんのか!?」
まるで総ての軍団長に話は聞いたとのような表情で思案するクキ少佐に、リ少佐が詰問する。
「リ、貴様の考えなど聞かずとも解っておるわ!」
「なんだと!?」
「まぁまぁ、お二人方、そう頭に血を上らせずに。」
また荒れそうな雰囲気になった所をセレーナが抑えようとする。
「分かった。2手に分けて戦うのは既成事実という事がな!ならばそれにあわせて戦うまでだ!音に聞こえた伊達幕府海軍の勇名を天下に知らしめてやろうぞ!」
戦術運用の不利を考え反対していたクキ少佐は、別に臆病で反対していたわけではない。セレーナの言うように女神隊が国民を護る軍隊だというのならば、伊達幕府軍とてそれは同じである。そのために死ねと言われれば、喜んで死ぬのが軍人であろう。
「それで、クキ少佐の意気込みに水を注すようで申し訳ありませんが……」
「なんだ、ギン大佐?」
それで落ち着いたかと言うところで申し訳なさそうにシルバー大佐が述べ始める。
「クキ少佐とリ少佐はいち早く宇宙に退避していただきたいのです。」
「なんだと!?海軍提督の私が海上で死なずに何とする!!!」
「クキ少佐は海軍提督、リ提督は空軍提督、だからこそ死なれては困るのです。幕府がこの戦いで敗北した時、北海道に帰還するには……戦い慣れした海軍提督、空軍提督が訓練した精鋭部隊で北海道を占領しなければなりません。先に負傷して意識不明の陸軍師団総長のバーン大尉も宇宙に退避させます。私のやクラウン中佐の指揮下にある近衛軍、ヘルメス少佐の防衛軍、イシガヤ少佐の遊撃隊、そしてセレーナ少佐の女神隊は……陸海空宇宙軍の混成部隊で、その各軍で教育し選抜した人員で構成されています。従って、提督方が各々の職分の部隊を訓練されれば、それ以外の軍団は再度編成可能なのです。このため、クキ少佐、リ少佐には直ちに宇宙に上がり、宇宙要塞イザナミ・イザナギを守備しているラスター大尉と合流して貰いたい。彼は、先に病没された地球方面宇宙軍提督ミタ少佐の代理で師団総長を務めていますが、何分にも少佐と比べればまだ能力不足の感が否めません。私かクラウン中佐の合流まで、クキ提督とリ提督で指導をしてください。」
「……わかった。」
「承知致した。」
そのように総司令自ら言われてしまっては、クキ少佐としては渋々でも承知せざるを得ない。合わせてリ少佐も承諾する。実際問題納得できる人事ではあるのだ。同じ軍団長職といっても、ヘルメス少佐やイシガヤ少佐などは有能な海空軍の指揮官を育てられるような人物ではない。2人とも年嵩の将校を育てるには若過ぎるし、指揮判断能力はともかく教官としての能力は無いといって過言ではない。それに比べて、流石にクキ提督やリ提督は熟練の将であり多くの士官を育ててきた実績もあれば、将校を抑えるに足る、国内外への軍事的名声とそれに見合うだけの威厳を備えている。それを考えるなら、捨て駒にする将はヘルメス少佐とイシガヤ少佐などの若手将校にするのが当然であった。
「話がそれました。本題に戻します。」
沈黙した各将校を見渡しながらシルバー大佐が本題に戻し、話を進める。今後の事も当然重要ではあるが、先ず目先の方策を確認し、意思の統一を図らなければならない。
「再度の釧路沖会戦に関する作戦展開ですが……現在セレーナに曳航させた艦艇と、釧路への招集が間に合わず石狩に集結させた艦艇を除く、幕府軍全ての海空軍残存戦力をもって釧路沖にてハーディサイト本軍に突攻を仕掛けます。」
「突攻といっても犬死になるのではないか?」
そのように疑問を呈するクキ少佐の言は正しい。圧倒的戦力差の敵に突撃をしたところでどれほどの敵を倒し、どれほどの時間を稼げるというのか疑問である。
「それは否定できませんが、少なくとも超弩級戦艦1隻が間に合う予定であり、この突破力と……アマテラスの突破力をもって少しでも時間を……敵の戦闘力を削るつもりです。」
「超弩級戦艦?しかし長門は……」
伊達幕府の誇る超弩級戦艦と言えば長門であるが、先の戦闘で損傷を受け石狩に配備されている。
「大和です。イシガヤ家が極秘建造中だったようで私も先ほど知りました。未完成ですが作戦時間には起動可能との事です。」
「大和だと?役にも立たず沈んだ艦名を使うなど縁起でもない。それとアマテラスだと?」
クキが指すのは、前世紀の太平洋戦争中に坊ノ岬沖海戦で沈んだ大日本帝国の大戦艦大和の事である。当時においては比較的小型の船体に46cm砲を積んだ画期的な大戦艦であったが、既に航空戦に時代は移っており、活躍の場を見せずに沈んだ艦であった。
「あのアマテラスに突破力だと……ギン大佐やクオン曹長が載った時にはそんな突破力……?」
クキ少佐の知っているアマテラスは、高機動・超装甲を誇るが火力に欠ける、ガディス・システム搭載の王族専用機である。
「まさか!先々代のスミレ様から聞いた核兵器の事か!?」
スミレとはイシガヤの祖母であり、建国戦争時にイシガヤ家パイロット・指揮官として活躍し、その後、伊達幕府軍の幕僚や最初の女神隊軍団長を務めた人物の事である。
「そうです。核兵器とは言っても放射能汚染はありません。」
「しかし、アレは実際には一発も撃ったことは無いぞ……本当かどうかわからん!」
「アマテラスはロールアウトから既に100年以上経っています。アマテラス本体、そしてそのアトミックレーザー砲も改修改造を行っており、現状では放射能汚染の問題の無い熱核レーザー兵器となっています。」
「薬莢はどうする!?その砲は核融合ではなく核分裂で熱を出すはずだ。そのように聞いている!」
核とはいっても、核融合の場合は稼働中のみの核反応の為、放射能汚染についてはそう気にする必要は無い。多少漏れた所ですぐ停止するからだ。だが、核分裂を利用した核反応の場合は、核分裂に伴う熱で自動的に核反応が進行してしまうと言う問題がある。使い方を誤れば放射能汚染を誘発しかねないものだ。
「……厳重に封鎖されております。」
「封鎖されたその薬莢はどうなると聞いている!」
「……海底に。」
「これだ!赦さんぞ、そんな兵器!」
クキが机を叩いて激昂する。万が一にも国土を放射能汚染してしまっては、元も子もない、という考えなのだ。かつて日本は放射能汚染を体験しているが、現代においても核汚染された地域を除染する事は難儀である。旧世紀においてはやむをえないクリーンエネルギーではあったが、現代のように科学が発達した今となっては、使わない方がいい過去の遺物である。尤も、現在でもなお核弾頭は各国保有している場合はあるのだが。
「クキ少佐、これは総司令である私の決断です。これ以外に手は無いのですから。異論は一切認めません。なお、戦力価値の無い空母双海は、戦闘機展開後仙台に帰還してもらいます。今回は遅い空母を盾にする意味合いは薄く、高速艦で突撃をした方が良い。これらの指揮運用は、私がアマテラスから陣頭指揮して判断します。」
本来大将がサイクロプスのパイロットを務めながら陣頭指揮を執るなどありえない事ではあるのだが、シルバー大佐はそれを出来るだけの能力を有しているし、加えて言えばこの状況下においてむしろサイクロプスのほうが被弾率の少ない都合、安全である。
「ともあれ、釧路沖は艦隊突攻を以って可能な限り敵の戦力を殺ぎます。」
既に賽は投げられた、と言うことである。
「次に石狩戦線ですが、戦線の指揮はクラウン中佐に一任します。」
流石に2面作戦となってはシルバー自ら全指揮を執ることはできない。
「承っている。展開だが、まず残存艦隊を持って敵艦に可能な限りの一撃を加える。損傷を受けた艦は石狩湾に自沈、石狩軍港を可能な限り封鎖する。これによって敵の揚陸部隊の展開を遅延させ、逐次上陸してくる敵と陸戦部隊で交戦する。」
いわゆるところの遅延消耗戦術だ。時間を稼ぐにはもっとも効率的な方法ではある。そのために……味方の兵を犠牲にするものだ。
「クキ少佐、何か言いたそうですが……これは決定です。」
「中佐、私とて将軍だ……わかっているよ。」




