終幕
蝶野コウジが病室からいなくなり、わたしはひとりになると深く息をつく。
……蝶野が今回の事件の真相を知っているのは、その態度からあきらかだった。そしてわたしが記憶喪失でないこともわかっている。なのにわたしを捕まえようとしない。
あんな事態になってしまったんだ。自分から名乗り出る勇気は、わたしにはない。いっそのこと蝶野が無理矢理にでもわたしを追及してくれれば、あきらめがついたというのに。なのにそれをしようとしなかった。
「……ほんとうにあの人は刑事なのかしら?」
わたしは蝶野から渡されたビデオカメラに視線を落とす。このビデオカメラを渡してくれと頼まれた?
「いったいだれなんでしょうね。このビデオカメラを渡してくれと頼んだのは?」
観ればわかる、と蝶野は言った。そしてそのあとどうするかは、自分で決めろとも言われた。
それはどういう意味だろう?
わたしはさっそくビデオカメラをいじってみる。そこに記録されていた動画ファイルはひとつだけだ。
「……この動画ファイルだけ?」
おそらくこの動画ファイルには、何かわたしにとって大事な映像が記録されているのだろう。だからこそ蝶野はわざわざこのビデオカメラをわたしに渡したんだ。
この先に何が待ち受けいるのか、そしてそれを観て自分がどうなってしまうののか、いまのわたしにはわからない。
不安と期待を入り交じりながら、わたしはその動画ファイルを再生した……。




