幕間 その四
ビデオカメラは長谷川ヒロユキを、その画面の中にとらえつづけている。長谷川はソファーにすわり、目の前にあるテーブルの上に置かれた片方だけのスニーカーとハンカチに目を落とすと、大きく息を吐いた。
「……だがわたしのしでかした罪を告白する前に、おまえに知らせなくてはいけない重大なことがある」長谷川はこちらに視線をよこした。「聞いてくれるか岡崎」
「いったいどうしたのさ、長谷川のダンナ」男の陽気な声が聞こえてきた。「せっかくあんたのために撮影しているんだ。それをわざわざ中断するほどのことなのか?」
「ああ、とても重要なことだ」長谷川はうなずいた。「頼むから聞いてくれ」
「ダンナにそう言われて、おれがことわれるわけないでしょう。あんたとは付き合い長いんだ。遠慮なく話してくれよ」
「つい先週のことだ。連続誘拐犯のウルフから脅迫状が届いた。やつはわたしの孫娘とされている人物を誘拐し、身代金を要求してきた。金額は三億。わたしはすぐにこれを用意したよ」
「長谷川のダンナ」男の口調がけわしくなる。「そいつはとても興味深い話だ。つづけてくれ」
長谷川は小さくうなずく。「わたしはウルフの要求に従うつもりだ。だが見てのとおりこの病弱な体だ。その受け渡しなどについては、妻のモモコが取り仕切ることになった。そしてモモコは容態にさわると言って、わたしをこの件から遠ざけている」
「旦那思いのいい奥さんじゃねえか。あんたの体を心配している」
「……ほんとうに、そうだといいのだが」長谷川は不安げな表情になる。「だが七年前のシンデレラ事件以来、モモコは表に出さないが、わたしに不信感を募らせているかもしれない」
「そりゃそうだろ。孫娘に財産の半分を譲る、なんて宣言すれば、だれだってそうなる。あっ、つまり奥さんのモモコさんが、この誘拐事件を失敗させるかもしれない。そうおそれているわけだ」
「残念ながらそのとおりだ。だからおまえの力を借りたい。警察ではだめだ。ウルフに感づかれたら孫娘は殺されてしまう」
「懸命な判断だ。ウルフは警察のにおいを嗅ぎ取るのがうまい」
「だから助けてくれないか岡崎。一生のお願いだ」
「わかったよ。あんたの孫娘を助けるために手を貸すよ」
「……助けるのはわたしの孫娘じゃない。おまえの孫娘だ」
「ダンナ?」男は困惑した口調だ。「そいつはどういうことだ?」




