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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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囚われのマヤ

「ねえ、クローン」


 メドゥーとマグが出て行った扉の前で、圭一が尋ねる。


「責任を取るって言ってたけど、メドゥーさん、マグさん、変な事しないよね?」


 圭一と中島をマグが傷つけようとしていた事、それに対してメドゥーが責任を取ると言っていた事に、圭一が心配しているのだ。


「変ナ事? 変ナ事トイウノハ私ニハ想像ガツカナイノデスガ、オ二人ガレジスタンスヲ辞メルトイウ意味ナラバ、ソノ心配ハゴザイマセン。オ二人トモ、コノ場所ガ好キナヨウデスカラ」

「そ、そう……」

「圭一サンハ、オ優シイノデスネ。マグサンガアナタ方ヲ襲オウトシタノハイケナイ事ダト、私モ思イマス」

「……マヤを好きな気持ちは、僕も分かるから」

「んでもよ、あんな目にあったんだぜ。下手すりゃナイフで刺されるかもしれなかったのに、俺だったら怒るぜ」

「中島……」

「まったく。お人好しだよ。お前は」

「ソウデスネ」


 クローンまで同意する。

 その言葉に圭一は少しショックを受けた様で悲しい顔を見せた。


「マア、ゴメンナサイ。ケレド、ソレガ圭一サンノ良イ所ダト思イマス。流石ハ、マヤサンノ選ンダ方デスネ」

「く、クローン……」

「フフッ。私モオリジナルノマヤサント同ジク、アナタヲ素敵ダト思イマスヨ」

「そ、そうかな? ちょっと、恥ずかしい」

「ア、中島サンモ好キデスヨ。ジャ、モウ大丈夫ソウナノデ私ハ行キマスネ。気持チ落チ着ケテユックリ休ンデ下サイネ」


 二人にもう危険が無いと判断して、クローンも部屋から居なくなる。

 残された圭一と中島は、ちょっとどうしようと迷った後、二人でベッドに座る。


「圭一」

「何? 中島」

「怖かったな」

「うん」

「でも、メドゥーさんとクローンが来てくれて良かった」

「うん」

「……休むか?」

「そだね」


 ベッドに体を預ける。

 目を閉じた。


 ーーここで少し、時間を戻して。


 ゴゴゴゴゴゴ。

 ギュイン、ギュイン。


 圭一達が部屋に案内される前、正確には大広間でクローンを通じてマヤと交信をした直後、のとある神殿。


「はっ?」


 目を閉じていたマヤは何かが近づいて来る物音に耳を傾けた。


 ギギギギギ。


 気味の悪い機械の音がする。

 何本も繋がれた配線。

 金属の身体ボディを引きずりながらやって来る。


 ガシャン。


 両サイドから飛び出たコードと細い鉄パイプで造られた腕、が水晶に迫る。

 コードは人間でいう血管、そして鉄パイプは骨を表したのだろう。

 それにしても気持ちが悪い。

 マヤのは見開き、膨張していた。


(……殺される)


 心の震えが止まらない。


(助けて)


 思わず目を閉じた。

 が、

 DEXは水晶から数センチの所で腕を止め、何故か動かなくなった。


(……!?)


 マヤは自分に近づいていたはずのDEXの腕の動きが止まったという気配を感じ、不思議そうに目を開けた。

 大小さまざまな配線で繋がれた巨大な身体。

 至るところに付けられた謎のスイッチ。

 そのスイッチの上のランプは、全て消えていた。

 さっきまで聞こえていた機械音も無い。

 電気が流れているという感じすらしない。

 電流の供給が、何処かで途切れてしまったのか。


(それにしても……)


 マヤは不安な胸騒ぎを抑える事が出来なかった。


(あり得ないわ。だって、DEXは……)


 その途端、部屋中に轟音が響いた。


 ズシャアアアアア……ン。

 ガガガガガガッ。

 バキッ、ゲコッ、ダダァン。


(キャアアアアアッ!)


 目の前の扉が勢いよく開く。

 天井から、壁から、ガラスや板の破片が幾つも飛び散り、落ちて来る。

 ひび割れた床からは何本もの触手がうごめき、マヤの水晶を取り囲んでいた。

 腕の鉄パイプの回りのコード。

 あれはコードというより、一本一本剥がれる触手だった。

 固まって、太い腕の様に動かす事もでき、長さも自在に変えられる。

 やはり、マヤの勘の通り、動かないフリをしていたのだ。

 油断させる為に。

 埋め尽くされた破壊の跡。

 邪悪な笑みを浮かべた牙が襲って来る。

 静かに、でも確かに。

 DEXの胸のランプが光った。


(……!!)


 獲物を狙う目は、まるで蛇のよう。

 音を立てずに、じわじわと忍び寄って来る。

 この上ない恐怖を、マヤは感じていた。

 体の芯から来る震え。冷や汗。鳥肌。

 ゾクッとする凍える様な視線。悪寒。

 そして、殺気。

 それらの全てが一気に放出された様な気がした。


(怖い)


 恐怖が束になって押し寄せて来る。

 もう逃げられない。


(私、ここで死ぬの……?)


 DEXの触手が水晶に触れた。

 そして、

 何百ボルトかも分からない電流が、身体中を貫いた。

 激しい痛みと熱さに、マヤは顔を歪ませる。

 息をする事さえ苦しい。

 肌を覆っていた衣服は破け、長い足が丸見えとなる。

 皮膚は赤く焼けただれ、唇は青から紫へと変色。目も引っ込み、心臓の鼓動も乱れてきた。


 ババババババ……ッ。


 DEXの放つ電流の感覚を浴びながら、その意識は闇の中に吸い込まれつつあった。

 力が抜ける。


(ここは……?)


 一体何処だろう。

 いつの間にかマヤは、花畑の中を歩いていた。

 知っているような、知らない場所のような、曖昧な場所。

 ただ道に任せ歩いていた。

 前の方から差し込んでくる優しい光。

 それに導かれる様に進んで行く。

 意識は朦朧としたままだ。

 何処に続いているのかも分からない。

 行くあてのない迷子の様に。


 ビュウウウウ。


 風で花びらが舞う。

 トンネルの入り口らしき物が見えた。

 中は暗いのかと思ったら明るい。

 迷わず中に入る。


 カツーン。カツーン。


 細長い管の中を通っている様な金属音が響く。

 それにしても長い。

 どれだけ続くのだろう。

 入り口からだと、案外短いように思えたのに。


(マヤ、マヤ……)


 不意に、マヤの頭の中に声が聞こえた。


(この声は……)


 聞き覚えのあるその声に、彼女はいても立ってもいられずに走り出した。

 あ、出口はもうすぐだ。


 バアッ。


 一瞬の強烈な光に視界を遮られたものの、それはすぐに元に戻った。


(ああ)


 白い服を着た女性が手招きをしている。

 隣には、これまた白い服の男性が立っていた。



















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