第九十四話
「前金で金貨十枚、情報が正しかった場合残り十枚を渡します。それでいかがでしょう?」
「…そんな額出してまで欲しい情報なのか?あの洞窟の情報は」
クラウが金貨の入った袋を男に渡す。
彼女はにこやかな笑みを浮かべているのだが、どうにも焦っているように見える。
(腰の短剣…)
キマイラはクラウの腰にぶら下がっている短剣に目がいった。
彼女は片手でいつでも抜けるように手をかけている。
「いいだろう…情報はくれてやる。洞窟の話だが、普通に行っても見つからん。この地図を…」
そう言って男は部屋にある一つの地図に手をかけた。
だが…
「あばよ」
「ギャアアアアアッ!?」
家の壁が轟音と共に突如として崩れ去ったかと思うと、地図を持った男が悲鳴をあげながら床に倒れた。
彼の腹には大きな風穴が空いていて、そこから大量の血を流していた。
即死に等しい状態…
「お久しぶりですね。キマイラ様」
「貴様…」
穏やかな声…砂煙と共に現れたのはかつてキマイラがエイルバーのいる孤児院にて見たことのある青年、ベッファだった。
彼は男が握っていた地図に魔術で火を放つと、キマイラ達に向き直った。
「何のつもりだ貴様、その男はギースとは関係ないぞ」
エイルバーの身内が現れる、理由としてはまず間違いなくギースが絡んでくることだと思われるが…
ベッファはやれやれといった風に肩をすぼめると、怒りをあらわにするキマイラとは対照的に、笑顔で説明を始めた。
「我が主、エイルバー様からの伝言です。『本』は手に入れた、と」
「何ですって!?」
「では失礼を。ああ、クラウ様。私と共に来ませんか?お兄様が心配しておられましたよ?」
「ふざけないでください!だれが貴方達の所になんか!」
短剣を抜き放ったクラウは低い姿勢でベッファ目掛けて突進していく。
「ふむ、ではそのようにお伝えします」
涼しそうにそう呟くと、ベッファは手のひらから目を潰すような閃光を発生させた。
「糞がッ!!」
悔しそうな彼女の声、目が慣れるころにはベッファの姿は跡形もなく消え失せていた。
「クラウ、これは…」
「…手遅れです。あの野郎ッ!!」
男が死んだのを確認すると怒り狂ったクラウは軍靴で家の壁を蹴った。
「ヴィクトリア様に連絡してきます。キマイラさんはテュポーンさんとドリュアスと合流してください。その後にウッディーネで合流しましょう」
「エイルバーは俺がやる。お前は…」
「あの糞野郎は私が殺します。身内の不始末、身内の私がつけます」
覚悟と殺気のこもった彼女に、キマイラはそれ以上何も言う事が出来なかった。
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