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第九十三話

 (ああ…温かいなあ…)


 男は夢うつつの中、幸せそうな顔で毛布を手繰り寄せた。


 (いや待て…俺は外で狼共に囲まれてるはずだ)


 違和感に気付いた男は瞳を開き、周りを見る。


 「重いし獣臭い!」


 「うるさいぞ」


 男の上には数頭の狼がのしかかっていて、それが毛布の代わりになっていた。

 お陰で凍死はしなくて済んだのだが…


 (この男がいるのに変わりはねぇ。どうすりゃいいんだ畜生め)


 目の前にいる白髪の男、というか化け物のキマイラはというとすでに目を覚まし、狼の頭を撫でていた。

 気持ちよさそうに目を細める狼がなんとも恨めしい。


 「行くぞ。今日中に目的地に行く」


 「くそ…」


 男とキマイラは黙って歩き出した。


 




 「着いたぞくそったれ…ここだ」


 「ほう」


 暫く雪道を歩いていくと一つの村にたどり着いた。

 だが村の住人はキマイラに対して敵意をむき出しにしている。

 よそ者ということもあるだろうが…


 「気を付けろよ。下手すりゃ殺されるからな」


 「…そういう雰囲気だな」


 そこかしこで金属製の細長い筒のようなものを用いて煙を吸い込んでいる村人が見える。

 ウッディーネやドレスリンでは見られない光景だ。


 「…あいつらが吸っているのは、あれは何だ?」


 「新大陸から大量に渡ってきた『薬』だ。安いし辛い現実から逃げられるからよく吸ってる」


 「売人が売っていたのもアレか」


 「ああそうだ。あれを一度でも吸ってみろ、頭がいかれて歩く死人になっちまう」


 吸っている人間を見て、キマイラは合点がいった。

 皆一様に細くやせ細り、目の焦点が合っていない。


 「で、この住所の場所は?」


 「あっちだ。着いたら俺は解放してもらうぞ?もちろん無事でな」


 狼たちは村の中に連れてきてはいない。

 だが一応、せめて形だけでも安全を確保したかった。

 キマイラが約束を守るようにも見えないが…


 「目的の場所まで行ければお前は不要だ。好きに消えろ」


 「ああ…っとあの家だ」


 何かに気付いたように男が一軒のボロボロの家を指さす。

 人が住むにはあまりに粗末な木造の家だ。


 「…本当にあんな場所にいるのか?」


 「少なくともこれに書かれてる場所はあそこで間違いない」


 ひらひらと紙を振りながら男はそう言った。


 「…行くか」


 「じゃあ、俺はこのまま帰るぞ。あばよ」


 「ああ」


 男と別れ、キマイラは案内された家に入っていく。

 ミリーは入る前には必ず呼び鈴を鳴らすか声をかけろと言っていたがお構いなしで入る。

 というか呼び鈴など存在していない。


 「誰だ?よそ者か?」


 中にはくたびれた服を着た男がいる。

 生気の無い目をしていていきなり入ってきたキマイラに驚きモしない。

 はっきり言って異様だ。


 「…俺の名前はキマイラだ。お前がベズビル山に登った人間か?」


 「…ほう。俺を知ってるのか」


 「お前が見つけたという洞窟の正確な位置を知りたい。情報をよこせ」


 キマイラがそう言うと、男はため息を吐きながら続けた。


 「素直に渡すとでも思うのか?条件がある」


 「条件?」


 「金だよ金…」


 「…そんなものはヴィクトリアにでも頼め。俺は知らん」


 「なら交渉決裂だ。お前に情報をくれてやる義理も無いからな」


 「はぁ…もういい面倒だ」


 いい加減飽き飽きしてきたキマイラは男を掴み上げた。


 「吐かないなら殺す」


 殺す気など毛頭なかったが…


 「がはッ…殺せよ!そうすりゃお前の知りたい情報も分からなくなるぞ!!」


 キマイラに交渉する能力は無い。

 そして彼を殺すこともできない。

 諦めて山を虱潰しに探すしかないだろう。

 そう思っていた時だった。


 「ちょっとキマイラさん!何やってるんですか!?」


 「ん?クラウか」


 家の入口から声をかけてくる人間がいた。

 軍服に身を包んだ少女、クラウだ。


 「手荒な真似はしないでください。キマイラさん」


 「他に手段が思いつかなかったからな」


 「ごっほごっほ…お前は?」


 「クラウ・マグワイヤと申します。貴方の持っている情報を提供していただきたい」


 キマイラに変わり、クラウが交渉を始めた。


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