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ザ・ユニコールワールド  作者: クレシアン
兄弟の旋律
36/41

クエスト206:ざまあみろ


 日本警察の使用している銃は大体が5発(例外あり)。

 替えの弾は持てず、一発撃つごとに始末書を書かなければならない。

 しかし兄が使用しているのは8発式。

 どこからか調達したか二丁手にしていた。

 

 兄は朱里さんに一発。

 僕に十一発。

 紫苑(ガラス含める)に四発。


 つまりはもう銃弾は無い。

 僕達に銃を向けていたのも『提案』をする為のものだった。

 

 銃は無い。

 

 

 僕は駆ける。

 もう迷いは無いし、負ける気もしない。

 兄さんは能力の封印に想像以上に驚き、反応が遅れていた。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!! アニキィィ!!」


 僕は全力で兄に殴りかかる。

 奇しくもこの状況はあの時に酷似していた。

 

 僕が兄に初めて勝利した時に――

 

 

 

「発想は悪くなかった。――しかしまだ許容範囲だ」

「な――」 


 兄さんは銃を抜いた。

 何故? どうして?

 僕は何も考えずに走りだしてしまっていた。

 

 

 ――ただ一つだけ、頭の中に入れていなかった。

 

 空砲。

 

 もし、もし兄が紫苑に向けて撃った内の一つが空砲ならば?

 もし兄が、こうなる展開を読んでいたら?

 

 

 最後の、最後の詰めを見誤った。

 

 兄とはこういう人間だということを知っていた筈なのに。

 

 

「お兄ちゃん、ごめんね――」

「紫苑!?」


 ここから起きたことは全てスローモーションで見えていた。

 

 まず、兄は銃を構えたが僕は反応仕切れなかった。

 引き金は無慈悲にも引かれたのも理解していた。

 

 しかし、銃が撃ち抜いたのは、逃げたはずの紫苑だった。

 

 

☆     ☆     ☆


 私は何をしているのだろうか。

 

 お兄ちゃんは私に逃げろと言った。

 確かに能力を失った私が役立たずなのはわかっている。

 

 でも例えば、お兄ちゃんを失った私が、芥川家から逃げたとして。

 私はそれで幸せなのだろうか。



 私は振り返り、走り出した。

 違う、どんなに役に立てなくてもできることはある筈だ。

 

 気付いたら体は動いていた。

 痛い。

 銃弾ってこんなに痛かったの?

 

 ああもうどうでもいいや。

 

 

 やっと、やっとお兄ちゃんに恩返しができた。

 

 

 これは走馬灯?

 珍しくもない昔話を私は今見ているのか。

  

 

 お兄ちゃんは昔からめんどくさがり家であった。

 その性格のおかげでお母さんからはいつも怒られてばっかだったけど、業兄さんと争う時だけは目の色が変わったかのように真剣だった。

 

 相変わらず業兄さんに負けてばっかのお兄ちゃんに私は聞いたことがあったっけ。

 

「なんで負けるのに戦うの? 馬鹿みたいじゃん?」

「ばっ、なっ、次は勝つんだよ!! お前には関係ないだろ」


 そんな事を言ったくせに次の喧嘩では相変わらず負けていた。

 私は文句の一つも言いたくなったが関係ないと言われたので黙っていた。

 

 

 しかし、やがてそれは私に関係のある戦いとなった。

 

「やめてっ!! 兄さん!」


 父から明かされた事実により私は業兄さんと結ばれることを強制された。

 仕方ないことだとしても私は必死に抵抗した。

 

「アニキィィィ!! やめやがれぇぇ!!!!」


 お兄ちゃんは拳を業兄さんに叩きつけ、顔の形が変わるくらいに殴りつけた。

 父がその様子を見て、止めに入り、兄を病院に送って行った。

 

 

「......どうして私を助けたの?」

「知らないよ、今なら兄さんに勝てると思ったからかな」


 なんて適当に頭を掻くお兄ちゃんに私は抱きついた。

 

「......ごめん、しばらくこうさせて」

「こういう時、ごめんって言うのかお前は」


 私はポロポロと涙を流しながら顔をお兄ちゃんに埋めた。

 そしてちょっと時間が経って、顔を上げて言った。

 

「助けてくれてありがとう」



 お礼はもう言ったじゃん?

 

 だからさ、最後には残念ながらお兄ちゃんに掛ける言葉は無いのだ。

 私は一言だけ謝罪をした。

 


「お兄ちゃん、ごめんね――」

「紫苑!?」


 意識が薄れ行く中、業兄さんを指差しこう言った。

 

 

「ざまあみろ。......私はやったぞ!!」


 お兄ちゃんが激昂して拳を叩きつける姿を見て、私は目を閉じた。

 また勝てるよね? お兄ちゃん。


次回、兄弟の決着がつきます。

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