クエスト204:永久(とこしえ)の刀
PC不調時に貯め書きした一話です。
「一つ提案がある」
兄は銃を下を向け僕達に話しかけた。
そう、これは視野に入れていた。
絶対的に兄が有利になった瞬間に提案を仕掛けてくること。
「提案......?」
僕はそう考えながらも能力を使おうとした。
だめだ。使用を制限されている。
感覚としては能力の使い方がわからなくされているのだろう。
「お前を殺したら父さんに何をされるかわからないからな。
そして紫苑。お前は俺にとって必要となる存在だ」
そう言う兄に対し紫苑は身震いした。
まだ。まだ兄さんは紫苑を求めているのだろうか?
「そしてテロリスト。お前も殺しておくには惜しい。
お前ほど実力も成長性もある能力者は初めて見た。
どうだ? 翡翠とともに芥川家の用心棒になってくれないかい?」
「用心棒......だと?」
全員に課せられた提案。
命を助ける代わりの提案。
「もう......いいんじゃないだろうか」
「蒼也さん!?」
突如蒼也さんは刀を地面に置いた。
まさか。彼は......
「もう俺達は十分に努力したのではないだろうか。
テロリスト事件を追ってきた、しかしその結果はどうだ?
敵は次第に強くなり苦戦を強いられてきた。最終的には彼のような怪物が目の前にいるじゃないか」
「酷いなあ怪物だなんて」
だめだ。
蒼也さんが完全に折れてしまった。
しかし彼の気持ちもわからなくは無い。
元は彼の負から生まれたスキルでテロリストにもなった。
そんな彼が許されようとしているのだ。警察を志す兄に。
そもそも彼が今まで協力してくれただけで奇跡なのだ。
理由も曖昧なままここまで戦ったのだ。
「そうかいそうかい。では君は僕に降伏するのかい?」
「ああそうだな、終わりにしよう」
蒼也さんが立ち上がる。
「俺の命も、此処で終わりだ」
「!!」
「ッ!?」
蒼也さんがそう言い放った瞬間。
まるで寒気が連続で襲い掛かるような、謎の感覚。
身体が全く動かない、なんなんだこれは――
「『天上天下絶対世界』」
「くっ、なんだこれは!? 身体が動かねえ!?
まさかお前......俺を油断させるためにわざと降伏するフリをしたのか!!」
身体が動かないのは兄さんだけじゃない。
蒼也さんも立ち尽くし、一歩も動かない。
「これが俺の最後の羽だ」
☆ ☆ ☆
俺は常に弱かった。
両親からの虐待。周囲からの暴力。
それに対抗するかの様に手に入れたこのスキル。
核熱の羽。
俺はこのスキルを手にした瞬間から、自分の底を知った。
謎の声に導かれるままに、意味のわからないままに。
核熱の羽。
その羽は熱の如き速度を増す。
一羽では取るに足らず。
二羽では人を超えし速度を得、
三羽では文明を超えるであろう。
そして
四羽では音に並びし俊足となり、
五羽では光に並びし神速となる。
やがて熱は敵を崩せし冷気となる。
一片では取るに足らず。
二片では雪を駆ける如く鈍くなり。
三片では凍える風が行く手を阻む。
そして
四片では吹雪の如く堅くなり。
五片では本人すらも凍えるだろう。
最後に
全てを超えた八の刃は
時空を超えし諸刃の剣となる。
「すまない翡翠。俺にできるのはここまでだ」
「蒼也さん!? 一体何を!!」
蒼也さんはやがて懐からもう一つの刀を震えながらも取り出した。
「馬鹿な......時を止めただと!? 俺の様に精神だけでなく......
『行動』を止めた......のか!?」
「俺もほぼ動けなくなる諸刃の剣だ。最後には何が起きるかはわからないがな」
何が起きるかはわからない?
違う、蒼也さんはこの力を知っている。
先ほどの話しぶり。まさか蒼也さんは!!
「蒼也さん!!」
「蒼也さん......? 何をしているの!?」
身体が動かぬ僕達は必死で叫んだ。
その僕達を見て少しだけ笑った蒼也さんは刀を上に振り上げた。
瓦礫が崩れ僕達の周囲に落とした。
「お別れだ翡翠、紫苑。必ず、必ず業を仕留めてくれ。
だから、そんな顔をするな」
「ッ!!」
「じゃあな」
瓦礫が兄と、蒼也さんとの視界を阻んだ。
八田蒼也は最後まで折れることのない刃で在り続けた。
時は動き出す。
ジョジョが好きなのでつい時間を操る能力者を出してしまいました。
しかしこの作品の場合業は時を止めたように精神を操るタイプで、
蒼也は運動エネルギーを極端に変化させることで行動を制限させるタイプです。




