初クエストと実感
降霊術士という選択以外許されない状況になったとはいえ少し考え方を替えてみる。数人しかいないということはレアな職業なのは間違いない。笑学生の面々とあうときのネタにはなるだろう。しかし、お化けやゾンビ所謂ホラー系は滅法苦手なのだ。
見えるようになるのかならないのか、これは非常に大きな問題だ、それに降霊している時間制限はどれくらいなのだろう、MPやSTの消費は?判らないことだらけで……聞くのはもうシュイさん、リンシャ、トバさん。この人たちしかいないわけで……恭介とフレ登録だけでも先にしとくんだったなぁ……サポートナビゲーターのコンにでももっと聞いておけばよかった、いや掲示板でもみときゃよかった……
勢いで突っ走るとこうなるというのは何回も味わってきていたことではある、リアルでもゲームでも。こうしていつも悩む、答えは一つしかない。やるしかないんだよね。やってもないのに面白くないと決めつけるのはよくない、悩んでいて好転したことがあったか……ないな。
最終的に楽しめればいい!そう異世界に似た環境ではあるがゲームなのだレアな職業を選択できるってのはプラスなはずだ!だよね?この選択を間違えれば悲惨な事になるかもしれない、昔人口分布の少ない不遇職で最強と言われていた職を打ち破ったこともあるではないか、かなり卑怯ではあったけども。
あれは楽しかったか、楽しくなかったかと言われれば勿論楽しかった。研究し、抜け道を見つけ判らなければ相談し、充実してたそのなかで笑学生のメンツも集まってきたじゃないか、最初は恭介と俺だけで遊んでいたが、うにが参加しなおが増え気づいたら最大12人まで増えていたことを思い出す。
野郎ばかりでワイワイ楽しんでいた、あいつらを驚かせてやろう、そしてまたあいつらと楽しもう、そのために降霊術を極めればいいんだ、お化けは無理でも現実ではない!きっと大丈夫!
「よしっ頑張ってみるか!」
「ろく?さっきから悩んでたみたいだけど大丈夫?お腹痛いとかクスクス笑ったり……体調でも悪い?」
リンシャが心配そうな顔で問いかけてくる、相変わらず美人だな、ラッキースケベの代償も凄いけどもっと少し苦笑いしながら――
「そんな奇行してたのならすまない、でもほら降霊術士って誰でもなれるわけじゃないんだろ?世界に数えるほどしかいないなら責任重大だなってね、それにほら美人に応援されるとだんしぃは頑張っちゃうわけなんだよ、あと仲間にも自慢してやろうかなってね」
少し頬を赤らめ膨らましながらも
「美人だなんてほめても完全に許してないんだからねっ!でもお婆ちゃんの後継者がみつかったのは素直に嬉しいわ。私じゃ武人様に認めてもらえなかったのよ。」
「んん?武人様に認めてもらえないと降霊術士になれないってこと……?」
「そうよ、でも挑戦する人も居なくて、お婆ちゃんも内心喜んでると思うわ、トバ爺ちゃんも。トバ爺ちゃんが気に入るってことはろく相当素質があると思うわ、トバ爺ちゃんは降霊術士ではないけどお婆ちゃんを通じて剣豪様やその他の真霊様に気に入られているもの。」
覚悟を決めたのはいいが今の話だと武人様に認められなければいけないということになるな……楽にレア職業には就けないってことか。いきなりハードルが上がった気がする……決めたことだやってしまおう。
あ、そういえば……
ヘッドボアとの戦闘でレベルが3になり
蹴り、身体能力向上、スタミナ強化、回避、見極め、カウンターのレベルがそれぞれ1上がっていた。
悩みながらもステータスを操作する――
「おいろく、聞いとるかの?」
「え?あボーっとしてましたすみません。シュイさんどうしました?」
「今が十六時か……そうじゃのさっきトバとも話ておったんじゃが、湖の洞窟に行って水晶を集めてくるんじゃ、質のいいのを十個ほど必要での、今からいくかい?といっても忘れておったわ、お主のその装備じゃと厳しいのぉ」
自分の装備を改めてみる、確かにひどい、シャツは破けズボンも穴が開いている。かろうじてレガースとナックルだけがまともだといえる装備……
「リンシャ倉庫に何かないかの?見てきてくれんか?」
「下の倉庫でいいの?みてくるわ」
「何かあればいいんじゃが……ろくよ降霊術士というのは精神、体力双方に負担がかかる、装備に関しては降霊術士になるまではお主のスタイルでよかろうて、なった後は基本的にこの数珠を装備し降霊してもらう真霊様の装備に合わせて装備するのじゃ防具に関してはMPとSTがあがるものを装備した方が良いの。真霊様によってはintも考慮しなければいかんのじゃが……今はええじゃろ。」
「武人様に認められなければいけないとリンシャから聞いたのですが、大丈夫でしょうか?」
「トバもわしも心配しちょらんよ、大丈夫じゃ」
温かい笑みとともに頭をなでられた、昔実のお婆ちゃんがしてくれたように――
「やれるだけやってみます!出来そうな気がしてきました!」
「うむ、その粋じゃ」
「おい、ろくどうじゃわしが稽古つけてやろうか?洞窟へ行くより有意義にしてやるぞい?」
相変わらず豪快な爺さんだシュイさんとの打ち合いの後ずっと木剣を振っている、根っからの戦闘狂なのかもしれない――
「ばあちゃーん、こんなのしかないんだけど使えるかなー?」
持ってきてくれたのは道着とズボン、小手かなり年季の入ったものだが良いものだというのは見ただけで判った。
「うむ、まぁまぁじゃな、ろくこれをやろう」
「いいんですか?大切な物じゃ?」
「倉庫に眠って居ったものじゃ、使うことはないじゃろうて遠慮せず持ってお行き」
「何から何まですみませんシュイさん」
「ろくーもってきたの私よ?私にはなにかないのっ?」
「リンシャもありがとう!助かったよ」
白が基調の道着そして赤い縁取りに緑の皮が巻いてある小手なにか心材がはいっていそうな感じがする。
背中に霊と大きく書いてあるのも少し恥ずかしいが様になっている。
残念ながらナックルは付けれない、レガースのみ装着して装備は完了した。
「わしの若いころを思い出すのぉ似合っておるぞぉガハハハハ」
「うむ、よかろう」
「ちょっとはマシになったわねっ」
トバさん、シュイさんリンシャみながほめてくれてちょっと照れるが嬉しくなる。リアルはほぼツナギで出歩くときはジャージそんな生活をしているぶん誰かにほめられるというのが新鮮でむず痒い。
各種ポーションを3つ、ランタンを貰いヘッドボアの巣であった湖の洞窟に水晶を一人で取りに行くことになった――
「それでは水晶を十個持って帰ってくるんじゃぞ、行ってきなさい。」
シュイさんにそう告げられたと同時にクエスト受諾という文字が目の前に現れすぐに消えた――
メニューからクエストの表示を見てみると
〈水晶の採取――依頼者シュイ〉
場所:コメンス北部森林、湖の洞窟
達成条件:水晶十個の採取 0/10
と表示されていた。クエストの表示はこうなっているのか、単純に考えれば採集クエストなんだが採集系のスキルを一つも持っていない。湖の洞窟に着いてから必要そうであれば取得してみるか。
森を歩きながら考えをまとめ一路湖を目指した――
湖に着くまでにレベル3のウルフやボアを数匹倒しレベルも5まであがり打撃のアーツ 『正拳突き』 蹴りのアーツ 『回し蹴り』 回避のアーツ 『ステップ』を覚えた。
覚えてすぐ使った正拳突きはカウンター気味にむかってくるウルフに命中してウルフが吹き飛んでくれたから良かったものの避けられでもしたらと思うとゾッとした。使いどころには気を付けないと行けないと思い生えている木で少し試してみることにした。
判ったことはいくつかある、正拳突きや回し蹴りはアーツを使用せずとも同じような動きは出来る、しかしアーツを発動させて放つ正拳突きとは威力が違っていた。体感ではあるが1,5倍程アーツを使用した方が威力が高いように思える。
アーツ使用の硬直は2秒程であったがこの隙はモンスターと対峙している時は致命的だ、止めに使うか相手を吹き飛ばせるような相手でないとポンポン使えるようなものではなさそうだ。
しかし回避のアーツステップに関しては硬直が無い、前後左右どこへでもステップは可能であるが連続では使用出来ないようだ、再使用に2秒程かかる。
そしてアーツに共通することはSTを消費するということ。走ったり回避するために横に跳ぶだけでもSTを消費する無くなればヘッドボアの時の様に体が動かなくだろう。スタミナ強化をとっているとはいえもう少しスタミナに関するスキルは取得しておいた方がいいかもしれない。
考察もここで一区切りし、眼前にある湖の脇にある洞窟をみる――
湖の畔に少し丘の様になっている場所があり、丘が口をあけているような大穴、入口付近は土であるが何かが頻繁に出入りして踏み固められたような形跡がある、どこまで続いてるか判らないが結構広いであることは想像できる。
もらったランタンを取り出し、意を決して洞窟に入る――
洞窟は下りながらゆるく左に曲がるように続いていた、既に入口からの指していた明かりも見えずランタンの明かりを照らしながら進む、五分程進んだところで右側に30センチ程の段差がありそれが五メートルほど続いている窪みを見つける。
窪みの中央辺りに乾草が敷き詰められており、丸い物が三つほど置いてあるように見える。
何が置いてあるのか気になりランタンの光を照らしてみる――
そこには丸くなった小さいボアが3匹身を寄せ合うように転がっていた、目を閉じて寝ているのか動く気配はないがよく見ると見極めが発動した
ボア(幼体):レベル1 獣 睡眠
ヘッドボアに子供がいたのか――思わず顔を顰める……意図せず敵対しトバさんが倒したとはいえヘッドボアが親であるなどということは頭になかった。
やらなければやられていたであろうことは間違いないがこの光景はなんとも後味が悪い。
幼くして親を亡くした事実も知らず目が覚めれば探すかもしれない、しかしヘッドボアはもう戻ってくることは無い――野生の動物を育てるということは難しいのはこれまでのリアルの経験から知っている。
野生のものに人が手を出すことはよくはない、このまま放っておくと飢えて死ぬかもいれない外に出てウルフやハイエナの餌食になるかもしれない、しかし連れて行くことも出来ない。
イベントリからパンを取り出し乾草の手前に置いた。
それくらいしか今の自分には出来ない、悶々とした感情を抱きながらもその場を後に洞窟の奥へと足を進める――
「リアルすぎるだろ――現実と変わらないじゃないか――」
そんな事を口にしながらも進む――
ランタンの明かりが自分の動きに合わせながら揺れるのを見ながら歩いているとランタンの光とは別の光が見える――
その光をたどるように奥へ進むと広場の様になっている。その先に地底湖が広がり所々淡い黄色を帯びた優しい光を発している。幻想的な風景が広がっていた。
地底湖に近づき座るのにちょうどいい岩を見つけ腰を下ろす。
手を伸ばし地底湖の水に触れた、透き通っており冷たい水をすくって顔を洗う悶々とした感情を拭うように顔を拭き辺りを見回した、優しい光を発しているのは鉱石のようだジッと見つめていると
蛍石:鉱石
という表示が見えたどうやらそういう事らしい、地底湖の浅い所にも蛍石があるので何気なくその光を見ていると――
水晶:鉱石
地底湖の蛍石の近くには水晶があるらしい、近づき5センチほどの歪な形をしたガラスの様な石を拾う
これを10個ほど拾えばいいのか――
地底湖の浅い所をランタンと蛍石のあかりを頼りに水晶を捜しイベントリに放り込んでいく序に蛍石もいくつか放り込んでおいた。
水晶も15個ほど集め先ほどの場所に座る――クエストメニューを開き水晶が15/10となっているのを確認した。後は戻るだけなのだがあの場所をもう一度通るのは気が重い――
少しの間ボーっと蛍石を眺めていた。
どれくらいの時間ここに居たのかは判らないが、戻る決心をし立ち上がる
「うじうじしてても仕方がないか――」可能な限り餌を洞窟の前に暫く置きに来ることを決め戻ろうとしたとき――
首にかけてあるSEEDが光に包まれた――
「えっ!まぶしっ」数秒光り胸元にあるネックレスの感覚がなくなる目を手で多い光が収まったのを確認し前を見ると――
見覚えのある白い髪に狐耳可愛らしい顔が何かを頬張るように口を開け何かを持っていたであろう形の手を添えている姿が目に入る。
「あ~む――ッ!?」
見覚えのあるかわいらいい顔がキョトンとした顔で何も含まれていない口をモグモグし、
手に持っていたはずであろう物が無くなっており、感覚を確かめるように手を開いたり握ったりしている。
何が起こったかは俺も判らないが目の前に居るのが コンだと言うことは判った。
「……。」
「……。」
「コン……何やってんの……?」
「パンを食べてましたってろくさんがなんで居るんですか……?」
「コンこそなんでこんな所に……?」
相変わらず手をグーパーしながら辺りをキョロキョロし始めるコンそして自分が居たであろう場所ではない事に気づき
「ええええええええええええええ私のご飯どこですかっ!?」
「そこかいっ!色々と突っ込み所多すぎるだろッ!」
「ここどこですかああああああああああっ!?」「休み時間おわっちゃうううううううううううううう」
俺も状況が良くわかっていないが、コンのテンパり具合に帰って冷静になってきた。
「コン、落ち着いて俺も状況が判らないから整理してみよう?おっけ?」
コンの頭に手を置きなだめるように声をかける。
「えっとえっと……5人目の人を案内して休憩時間になったのでご飯を食べていたら目の前にろくさんがいて暗い場所にいて……ご飯が無くなってます……」
最後の1文をいいながら耳がお辞儀するように折りたたまれていた、状況整理よりご飯が大事なのかよと突っ込みそうになったが、そこは抑えて
「俺はクエストで湖の洞窟の水晶をあつめて戻ろうとしたらコンがくれたSEEDが光って目を開けて居られなくなって光が収まったから目を開けるとコンが居たんだよ」
「おーろくさんSEEDが芽吹いたんですね!おめでとうございます!何が出てきたんですか?教えてもらっていいですかッ?」
「いや、多分コンがでてきたと思うんだけど……」
「えっ……?……ッ」「えええええええええええええええええ」
しばし思考停止の後置かれている状況がわかったのか目を見開いて叫んでいる――
「あのえっとその、SEEDが光ってでてきたら私が居た……つまりSEEDから私が出てきたってことですか?」
「多分そういうことなんだと思う……」
「何が出てくるかはわからないんですが……武器や防具、道具、精霊なんかもでてくるらしいですが……私も精霊なんですかね?」
「いや、それはわからないけど、どうしたらいいんだろ……?」
「ちょっとまってくださいね……あれ?え?え?」
「うん?どうした?」
「私もろくさんたちのようにメニュー画面を開けるのですが、初心者アイテムのポーチやスキル可視化の機能が使えなくなっていて……ッ」
肩を震わせてコンが力なく発言する
「サポートナビゲーターだったよなコンって、上役の人とかと連絡取れないのか?上司みたいな人とかって居ない?」
その手があったかと言うような顔で
「ちょっとまってくださいねっ!聞いてみます。」
「あ、マコさんですか?コンなんですけど――
暫くコンは上司であろう人と連絡を取っている様だったたまに奇声をあげたりしていたが盗み聞きはよくないと思い、地底湖で蛍石や水晶をみつけイベントリに放り込んだりと暇つぶしをしていた。
「あの……ろくさん……不束者ですがよろしくお願いします。」
「ん?何がどうなったんだ?よろしくって?」
採集をしている俺の道着の端をクイクイひっぱりながらそんな事を言うコンに戸惑いながら尋ねた。
「えっと、その……SEEDは行動や経験等からその人が必要な物を生み出すシステムです。そしてそのSEEDがろくさんには私が必要だと判断したようで……。」
少し顔を赤らめながら最後の方は聞こえるか聞こえないかのか細い声で起こったことを教えてくれた。
「私はろくさんのサポートキャラクター霊獣になったようです。」
「えっとつまり、俺と冒険するってことになるの……?サポートナビゲーターとしてではなく……?」
「はい、ろくさんたちと同じ様にHPやMPSTそれに……空腹どもあります……パーティーとは別で私も経験や行動によってレベルがあがる様になってるみたいです、サポートナビゲーターの頃の基本的なスキルや能力、知識はそのままですよっ、なので判らないことはコンにきいてくださいっ、それから……えいっ」
掛け声とともにコンは煙に包まれ煙が消えると――
トイプードル位の大きさの可愛らしい狐の姿があった。
「こうやって変身する能力も備わりました!」
といいながら俺の肩に飛び乗ってきた。
「俺の知ってる霊獣とは大分違うけど……コンと一緒に冒険できるのは楽しそうだなっ!」――
そのあとしばしコンの話を聞いて判ったこともある、採集や生産などのスキルもコンは一通り持っており
材料があれば作れるという事、戦闘に関しては直接攻撃するスキルは火属性の物はあるがあまり強くない、補助魔法の様なサポートは得意であるということを知った。マップやダンジョン、モンスターに関しての知識は一通り知っているという事を教えてくれた。
そうしてカンテラをもち肩にコンをのせ来た道を戻りながらも話をしていた。
例のヌシの住処が近くなったとき気配がした――
「ブフォッ。」「プギープギー」
一匹のボアがウリ坊達に餌をやっていたのだ……胸を撫で下ろした。ヘッドボアが助けたボアなのかは判らないが、任せておいて大丈夫そうだ。餌をやっているボアと目があったがすぐに目を逸らされた、敵意は向こうからも感じられない。背後を気にせずそそくさと洞窟の入り口に向かった。
一つ胸のつかえが取れ洞窟から出た――
辺りはもう暗くなり、湖面に月が反射して映っていた――
「ろくさん、何かあったんですか?さっきのボアが襲ってきませんでしたよ?友達になったんですか?」
「ああ、あそこにはヘッドボアの子供が居るんだ、子育てに忙しかったんだよきっと。」
ぼんやりと湖面に浮かぶ月を眺めながらそんなやりとりを楽しんでいた。




