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アンノウン・バイヤー  作者: 邪神ネコザメ
プロローグ
1/3

蛮邪

 吹雪が荒れるように舞い散る。

まさかこれほどだとは思っていなかった。


幻の六角竜だなんて、簡単に捕まると思っていた。報酬が高額なのは、ここまで来るのが大変だから。個体数もかなり少ないらしいし、あまり怯える必要はない。そんな風に、自分を勝手に納得させていた。


そして、それが大きな間違いだということは、船を降りた時にようやく理解した。


だが、もう引き返せない。


目が凍りそうな程、指が動かなくなるほど、呼吸すら辛くなるほど。ただ、寒く、寒く、寒い。


俺の生まれ育った村も冬は雪が降っていた。それなのに、同じ雪だとは信じられない程冷たく、触れるだけで体温が奪われる。


想像以上に過酷な環境だった。こんな場所に生命なんて存在するのか疑わしいほどに。


吹雪が収まった頃には、どこに居るのか分からなくなっていた。雪に埋もれたのか、足跡は消えていた。これでは引き返すこともできない。


おぼろげで信憑性の無い記憶を頼りとして、雪原を進む。

 

不気味な程に生物の気配を感じない。見つけたのは幹のように太く丸い足跡だけだ。


少し経った頃だろうか。近くにあった岩場から血の匂いがした。岩場の上に目をやると、白い尾が見えた。歪なトゲが乱立した、異様に長く不気味な白い尾。


奴が全身を露わにするとすぐに魔獣だと分かった。ずんぐりとした大きな体は家のように大きく、一本の毛も生えていないのだ。


 六角竜とは格が違う。魔獣に遭遇するなんて思ってもいなかった。


恐怖心で、とにかくその場を後にした。

逃げられるだけ逃げようとした。

そうすれば、案外なんとかなるだろうと。そう思っていた。


 自分の腕が千切れたことに気づいたのは、奴の舌が自分より前に出た時だろうか。


凍てつく大気によって、熱くも思える激痛は、感覚と共に徐々に消えていった。

  



その後、奇跡的に生き延びたものの、俺は腕を失った。


あの頃は奴を恨んでいたが、今となってはどうでもいい。なんせ、ここ数年でようやく気づいたんだ。


人間はただ狡猾なだけの小動物に過ぎないってな。




魔獣...地上の生物とは異なる起源を持つ生物群の総称。魔界で進化した系統であり、強い魔力への依存が特徴。地表に現れる魔獣は、ごく一部である。

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