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エゴイズム ~それをいったら戦争です!~  作者: パラサイト
【第2章】お城の中は安全地帯?
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【第17話】 宴の開幕

「うわぁ」


 お城に入って何回目の感嘆だろうか? 食堂の雰囲気は最初に入った時とまるで違う。

 照明は暗くはあるけど、陰湿な感じではなく、そう、クリスマスの高級店でのディナーのような感じだ――そんなところ入ったことないけど。


 そして、テーブルに並ぶのは見たことある料理もあれば、見たことない料理もあり、バラエティ豊かな食卓は、扉を開けた時から、私の嗅覚を刺激し、多彩多様な盛り付けは視覚を通し、おいしそう、食べたいという単純な欲求を押し上げてくる。


 けど、さすがに花より団子というわけにはいかない。

 このもよおしを施してくれたアルくんが私の対面であるテーブルの端で、にこにことほほ笑んでいる。

 私はアルくんの対面まで歩いていき、深々と頭を下げた。


「……アルくん、ありがとう。今日一日、暴漢から助けてくれただけじゃなく、行く当てもない私を導いてくれて、その上、私のために怒ってくれて、うれしかった。ホントに、ホント~~~っにありがとう」


 テーブルマナーなんて私は知らない。

 もしかしたら、マナーが悪いことをしたかもしれない。

 けど、私はそんなのお構いなしに今の気持ちを言葉で示した。

 ――示したかった。


 そんな私の言葉を聞いて、穏やかなほほ笑みと声で返事を返してきた。


「ううん、僕が好きでやったことだから、気にしないで。なにより、今日一日で学んだこと、知ったことはトウカお姉ちゃんのおかげだから。僕の方こそ、その……ありがとう」


 照れくさそうに耳元をアルくんはさする。


「……さ、おなかが空いたでしょ? 実は僕、ずっとさっきからペコペコなんだ。マナーとか気にしなくていいから、トウカお姉ちゃんはそこに座って……そして、マーリンとトトも席に座って」


 アルくんの指示に従い、私は指定されたアルくんのそばの席に着く。

 席に着いてしばらく経つけど、アルくんに声を掛けられたマーリンさん、トトさんはアルくんのそばでで起立したままだった。

 たしかに縦長いテーブルの上にはたくさんの料理が並んでいるのだ。

 バイキングのように、食べたい料理を取り皿に載せていく形式なら席を立つ機会が多いのだから、席に座らずに立食という形もありとも思える。

 けど、マーリンさんはともかく、マナーにうるさいトトさんがそんなことをするとは思えない。

 なにか席に着けない理由がありそう。


「坊ちゃま、わたくし達が主と同じ席で食事をするなどできません。ましてや、ご来賓がいらっしゃる前でなおさらって!?」


 トトさんがはとが豆鉄砲を食ったよう顔をする。

 ――その理由は、いつの間にか席に着いていたマーリンさんにあるのだろう。

 天衣無縫てんいむほうなマーリンさんはトトさんのことなど、歯牙にも掛けないように、いけしゃあしゃあとアルくんに告げる。


「坊ちゃま。あんなババアは放っておいて、はやく、イチゴお嬢ちゃんの歓迎会を始めましょう」


 このエロジジイ、まだイチゴちゃん呼ばわりしてくる。

 内側から沸き起こる乙女の私を抑えつつ、場の空気を見守ることに徹する。


 ナイフとフォークを手に持ち、アルくんを急かすマーリンさん。

 体はじいさん、行動は子供な天使だ。


「まぁ、待てマーリン。トト、僕が今日気付いた大切なことの一つが家族という絆だ。マーリンもトトも僕を孫として見てくれているんだろう? 僕も二人のことを祖父母としてみている」


「なんともったいないお言葉」


「おお! ぼっちゃま」


 トトさん、マーリンさんの二人から感極まる思いが、こちらにまでひしひしと伝わってくる。


「そんな孫である僕がおじいちゃん、お婆ちゃんを立たせて僕とトウカお姉ちゃんだけで食事を取るのが正しいのかい? 僕から言わせれば、それはマナー以前の問題だ」


 主従関係ではなく家族としてのアルくんの考えをおとなしく、けど、一言一句いちごんいっくを聞き逃すまいと静聴する二人。


「それにトウカお姉ちゃんは御来賓じゃなく、僕の大切な友人だ。そして、マーリンやトトを立たせて、自分だけが食事を楽しむ人間じゃないのはもう分かっているだろう?」


 その姿はまるで――主であり孫である少年の確かな一つの成長をの当たりにした奇跡を心に刻み付けるように私には見え、それがとても尊く感じられた。


「だから、トトが今やるべきことはおとなしく、席に座り、マナーを口にするのではなく、食事と歓談を口にすればいいのさ。納得できないならコレは命令として捉えていいよ」


 トトさんに向かって、ニッコリ笑うアルくん。


 その笑顔に対して、トトさんは溜息ためいきをつき、そして――観念したように席に着いた。


「命令とあれば、仕方ありませんね。まぁ、その、今回だけですよ?」


「ババアがデレてもかわいくないワイ」


「お黙り! このジジイ!!」


 私もツンデレだと思ったところだった。

 マーリンさんはかわいくないなんていってるけど、金髪美女のツンデレなんて破壊力抜群すぎる。

 お堅い印象とのギャップがすごすぎてこれは――萌える!


 そんなこんなで、みんなが席に着いたところでアルくんが乾杯の音頭をとった。


「それじゃ僕の友人であり、マーリン、トトの友人? であるトウカお姉ちゃんの歓迎会の宴を始めよう。トウカお姉ちゃんは異界人エトランゼだけど、この世界ではこの家が自分の家と思い、遠慮なく住んでいいよ」


 アルくんがみんなの手にグラスが持たれているのを確認する。


「それじゃあ、マーリン自慢の料理を食べて飲んで楽しんで過ごそう。トウカお姉ちゃんの好みが分からないから多種多様な料理を用意したから好きなのを取って食べてよ。それじゃ~、みんな、かんぱーい」


 「「「「かんぱーい」」」」


 各々《おのおの》が手にしたグラスを高く上げ、そのまま口元へ運び、喉を潤した。

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