エピローグ 青の上に座る赤
9月の半ば、もう秋は近い。
厳しい残暑もようやく和らぎ今日は心地の良い涼しさが広がっていた。
エリは改札へ進む。Suicaをタッチし、ゲートが開く。そこはまだ彼女が知らない世界。
今日は引っ越してから初の出勤日。エリは緊張と期待を両肩に背負いながら歩いていく。
何か早くも社会人生活の第二幕が開いたかのような高揚感がある。ここの電車は混んでませんように。エリは淡い期待を抱きながらホームへと続くエスカレータに乗った。ゆっくりと進んでいく。どこか秋独特の匂いが漂っている。久しぶりの涼しい空気と共にエリを歓迎してくれているのだろう。
うん、座れればいいな、新生活!
エリはホームを歩き出す。
「えっ、あれっ?」
前方から聞いたことがある声がした。
どうして・・・?
「おーい、生徒会長!」
どうして座太郎がこの駅のホームにいるの?
手を振る座太郎にエリは手を振り返さない。
座太郎は笑顔で近づいてくる。
その隣には何かエリの知らないモノがある。
「座太郎、どうした?」
「座太郎、知り合いですか?」
そのモノが座太郎に話しかけている。
二つ上下に重なった赤色と青色のダルマ。上が赤色で下が青色。二つ合わせて座太郎の腰ほどの高さまである。座太郎の歩みに合わせてピョコピョコと跳ねて進んでいる。
「おい、座太郎、答えねぇか?」上の赤。
「そうです。教えてくださいよ」下の青。
ああ、そうか、私はまだ夢を見ているんだ。エリは喋るダルマを見て何故かホッとした。
「生徒会長、どうしてここに?」座太郎が尋ねる。
「いや、座太郎こそ、会社の近くに引っ越したんじゃなかったの?」
「ああ、ちょっとワケあってな。それより生徒会長はどうして?」
「私は仕事の関係で引っ越して。今日からこの駅で・・・」
「そうなのか?じゃあ、今日からまた一緒だな。俺もここに引っ越したんだよ」座太郎は嬉しそうだ。
「どうして?座太郎の会社と反対側じゃない!」
「ああ。ここはハジメさんが引っ越した駅なんだ」
エリは思い切り自分の頬を引っぱたいた。痛い。痛みがこれは夢でなく現実であると残酷に突きつけてくる。
噓でしょ・・・。
意味の分からない赤と青が興味深げにエリの顔を見上げている。
「ハジメさんが向かった駅。ここは戦いの駅。俺はスワリストとしてここに来たんだ」
スワリスト、辞めたんじゃ・・・。
「生徒会長、俺たちの戦いはこれからだ!」
最悪だ・・・。
エリの社会人生活第二幕が始まった。




