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第81話 チーズ作り

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「で、肝心のチーズ作りなんですが……」

「はっ!? そ、そうだわ、忘れてたっ!!」


 一騒動を終え、給食室に戻ってきた弥生たち。

 調理台の上には長方形の大きな木桶が置いてあり、その中に牛ヤギの乳がなみなみと注がれていた。


「乳からチーズを作る場合、製法にもよりますが元の1割~2割程度の量しか採れないとお考えください。なので10キロのチーズを作ろうと思うと、だいたい100キロの乳が必要ですね」

「にゃ、にゃんと……!? じゃあ乳のまま飲んだ方がお得じゃにゃいですか!?」

「いえ、減るのはホエイと呼ばれる水分だけですので、栄養のある部分はそのままです。それどころか発酵でもっと栄養価は上がるのですよ」

「じゃあお得だにゃあっ!!」

「先生、理科的な話はもうたくさんなので、さっさと作るところを見せてくださ~~~~~い(怒)」


 話が嫌な方向にそれそうだったので、強制的に本題へと引っ張る弥生。

 彭侯ほうこうはコホンと咳払いをして、


「それでは、ここからは私が実演しますのでルルさんたちは見学していてください。能力を使っての短縮作業となりますから、あくまで参考程度に」


 そう言うと彭侯は乳の中に先ほど仔牛ヤギから取り出したプロピオン酸菌をサラサラと入れはじめた。


「いきなりですがここがチーズ作りにとってもっとも重要な作業です。菌が活動しやすい温度、約35℃くらいに温めた乳にさきほどのプロピオン酸菌を投入します。……そうすることによって何が起こるのかというと……」


 ここで時間短縮のため能力を使う。

 ――――うにょにょにょにょにょ~~~~~~~~。


「でた、うにょにょにょにょ!!」

「便利だにゃあ、ウチらも使えればきっと楽にゃのににゃあ……」

「これは土から恵まれる精気を植物を介し、私が奇跡の力(のうりょく)に変換しているのです。ですのでこれもすべて弥生様が起こされている奇跡なのですよ?」

「はぁ~~~~……さすが龍神様だにゃあ……」


 尊敬の眼差しで弥生を見上げるルルたち。

 もちろん弥生にそんな自覚はない。

 というか『そうだったの?』と、聞きたいくらいである。

 しばらくすると、乳の表面の様子が変わってきた。


「……なんだか、プルプルしてきたような気がするにゃあ」


 ルルの言う通り、なんとなくゼリーのような質感を感じた。


「はいその通り。これはプロピオン酸菌の作用によって乳のタンパク質が凝固し、ホエイ(水分)とカード(固まったミルク)に分離しているところです。このカードがチーズの元となるのです」

「へぇ~~~~……なんだかお豆腐みたいなんだけど……?」

「ええ弥生様。材料と作用は違いますが、要領は似ています。つまり液体から成分を固めて抜き出しす。ということですね」


 彭侯は豆腐作りのそれのように、固まったカードに包丁を入れサイコロ状にカットする。そしてゆっくり混ぜ返しながら桶の栓を抜きホエイを抜き出していく。


「このホエイの中にも良質なタンパク質が多く含まれています。なので捨てずに……そうですね、なにかスープの元にでもしましょうか?」

「そうなの? まぁいいけど……なんか貧乏くさいわね……」

「なにをおっしゃいます。ホエイのタンパク質は特に体内への吸収率が高いのですよ? それに女性のお肌にも良くて、保湿効果の高い優秀な化粧水として――――」


 ばっしゃばっしゃばっしゃっ!!!!

 聞くやいなや、流れ出すホエイで顔面を洗いはじめる弥生。

 呆れた彭侯は、予定を変更してルルたちに指示した。


「すみません。これを全部小瓶に詰めて後で弥生様の部屋に届けてくれますか?」

「了解ですにゃ!!」





 ホエイを抜いて桶の底に残ったカード。

 なんだか細かくパラパラと、炒り卵みたいになっている。

 そこに今度はお湯を投入し、りはじめる彭侯。


 もにょもにゅもにょもにゅ……。


「こうすることによって一つの塊に戻し、食感も調整していきます。ちなみにこの段階で本格ラーメン作りのように、引き伸ばして畳んでまた引き伸ばして、を繰り返していくと『さけるチーズ』になっていきます」

「うん。……手つきよ」

「…………………」


 そんな小ネタよりも、なめらかにうごめく指先に注目している弥生。

 せめて亜人たちの前では自粛してもらいたいと目を三角にする彭侯。


「はい。では味付けの食塩を適量加えたら型に詰めていきます。さらに重石をのせて形を整えます」


 んにょにょにょにょ~~~~~~。

 ここでまた能力を使い早送りをする彭侯。

 型から取り出すと、すっかり冷えて固まったカードがゴロンと出てきた。


「おお~~~~!! これもうチーズじゃないの??」


 塊は、昔よくTVとかで見たあの丸くてでっかい小太鼓のようなアレ。

 見た目だけでもう美味しそうである。


「いいえ、これはまだ固まったカードです。チーズにするにはここからさらに熟成させなければなりません」


 そしてまた、んにょにょにょ~~~~~~~~。

 するとみるみるカードが乾いていき、色も黄色がかってきた。


「まずは第一次発酵です。いまは私の能力でやっておりますが本当なら温度を18~20℃に保った状態で二週間ほどかかります」

「げっ!? そんにゃにかかるのかにゃ!?? しかも温度管理!???」

「はい。温度を間違えると綺麗に発酵せず、美味しくならなかったり、最悪腐ったりしますので細心の注意が必要です」

「そ……そんな無理ゲーな……」


 温度計もエアコンもないこの時代で、そんな芸当は至難の業。

 昔の人はそれを感覚でやっていたのだとすると、凄い職人技である。 

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


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