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第48話 誓いの儀

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「う~~~~~~~~ん、意外とおいしい♪」


 こんがり焼き上がったヒュドラー肉。

 なんとか誤解を解いた(?)弥生は冷めてはなんだからと、とにかく乾杯を済ませ肉に口をつけた。

 ヒュドラー肉は独特のクセがあったが味は悪くなかった。

 ぐちゃぐちゃになってしまった部位はハンバーグに、形が残っている箇所はステーキにして並べられている。

 味付けは塩だけ。

 料理とは言えないただの肉焼きだが、なかなかどうして悪くなかった。


「……なんかマムシやスッポン食べてるみたいね。体がポカポカしてきたわ」

「滋養強壮の効果が高いみたいですね。干して漢方薬にも使えそうです」

「ゴロゴロゴロゴロうにゃぁ~~ん……。ワフワフワフすりすりすりすり。みゃぁみゃぁみゃぁ~~~~~~ん」


 弥生の膝の上には子猫と子犬と子カワウソがのっかっている。

 怖くないよお姉ちゃんはお気楽な存在だよと、弥生が自分で捕まえてきたのだ。

 子供たちは普通の成猫サイズでとてもかわいい。

 龍神様に子を抱かれたと親は大感激して泣いている。それで亜人たちの緊張はだいぶほぐれてくれた。


 ワインは家の蔵から持ってこさせた。

 一口飲んだ亜人たちは、その美味しさに感動して言葉を失っている。

 やがてお酒も回り、宴はどんちゃん騒ぎへと変わっていった。





「ほらほらもう向こうに行くにゃ、制限時間は一人10秒だにゃあ!!」


 包帯をぐるぐる巻いたルルが、弥生にまとわりついているカワウソ人を引き剥がし、追い返してくれている。

 亜人たちとの会話もはずんだ。

 美味しいお肉とお酒の力で徐々に彼らとの距離も近づき、やがて亜人一人ひとりが直接お礼を言ってくるようになった。


 食べ物のこと、魔獣のこと。

 自分たちを助けてくれてありがとう。

 これからもどうかよろしくお願いいたします。

 みんな同じことを言い、そして足に頭を擦り付け、匂いをうつしていく。


「も、申し訳ありませんだワフ……これも亜人の習性でして……ワフ」

「忠誠の証でございみゃす。どうか受け入れてやってほしいでございみゃす」


 ルルとともに弥生の側に立ち、行列の監視をしているレレとロロ。

 この三人もすでにマーキングは済ましている。


 まるでアイドル握手会のような騒ぎになってしまったが、距離を取られてしまうよりはまだマシかと諦めて、足の一本くらい好きにさせている弥生。


 亜人たちの序列は年齢で決まるのではなくて、強さで決められているようだ。

 毎年それぞれの部族で喧嘩祭り的なものを開き、そこでの優勝者がおさになる。

 ルル、レレ、ロロもそうして決められた族の代表だった。

 ちなみに性別はルルは女性でレレとロロは男性らしい。 





 そろそろ夜もふけてきた。

 なんだかんだでみんなと挨拶ができた弥生。

 最後に猫人の、とある娘に質問された。


『龍神様はどうして私たち下級亜人なんか助けてくれるのですか?』と。


 いまの時代では動物色の濃い下級亜人は人とみなされないことが多いらしい。

 町ではほとんど家畜か奴隷扱い。

 傷つけられることはあっても、助けてくれる人なんていやしないのにと。

 その質問に多くの亜人たちは表情を曇らせ、そして『余計なことを聞いてくれるな』と非難の目を向ける者もいた。


 その話はルルたちや彭侯から少しは聞かされていた。

 触れられたくない過去だろうと気にしないようにしていたが、まさか彼らからその話題を出してくるとは思わなかった。


 家畜や奴隷。

 貴方様がこれから面倒を見ようという相手は、そんないやしい存在なのですよ。仕えるにふさわしくない者たちなのですよ。

 そう言っているのも同然だったからだ。


「…………………………………………」


 不安そうな目を向けてくる亜人たち。

 しかし弥生はその告白に、むしろ誠意を感じた。

 そして少し困った笑顔を作って話し始める。


「下級とか上級とかって、べつにどうでもいいじゃない? そんなことよりもさ、私はあなたたちの助け合う気持ちと行動に惹かれちゃったんだよね」


「龍神様……」


「私が落としてあげた食べ物、独り占めしなかったでしょ? 猫族、犬族、カワウソ族、みんなで分け合って食べてくれてたでしょ?」


「はいですにゃっ!! そう立て札に書いてありましたからにゃっ!!」

「だったとしてもさ、私の知っている人類なら絶対喧嘩してるのよね。他種族間ではもちろん、同族内でだってきっと取り合いになってる」

「そんなことをしても傷付くだけだワフ。食べ物はみんなで分け合うものだワフ」

「うんうん、そうよね。今日だってみんな自分の身を犠牲にしてまで弱い者を助けようとしてたよね?」

「当然でございみゃする。強い者は弱い者を守り、弱い者は強い者を支える。我々はいままでそうやって生きてきたでございみゃする」


 誇らしげに胸を張るロロ。

 その言葉の通り、最後に子供たちは彭侯をかばってくれた。

 とてもかないやしないのに。

 しかしそういうことではなかったのだろう。


「そうね、本当にそれは正しいこと。でもそれを言葉じゃなく行動に示せる人間ってなかなかいないのよ? だからさ私は思ったの『この子たちは大丈夫』って」


 優しい笑顔で勇敢だった子供たちを、みんなを見てあげる。

 彭侯もうなずき、ルルたちもそんな彼らを誇りに思った。


「これからあなたたちは彭侯の元で色んなことを教わり、強くなって、豊かになっていくと思う。……だけども一つだけここで約束してほしいことがあるの」


 弥生はあらためて亜人たちを見回した。


「どんなに偉くなっても、決して今日のことは忘れないでほしいの。弱かった自分、貧しかった自分たちを忘れないでほしいの。欲をかかずに、足るを知り、分け与えることをいつまでも忘れないでほしいの。そうしてくれたら私と彭侯はあなたたちを受け入れます」


 その言葉に、亜人たちは誰も返事をしなかった。

 涙で息が詰まって喋られなかったのだ。

 ルル、レレ、ロロの三人は亜人の代表として弥生の前にひざまずき、みなに代わって誓いの言を述べる。


「我ら猫人」「犬人」「カワウソ人」

「「「下級亜人三種はその教えを胸に刻み、決して忘れぬことを、そして我らが神たる弥生様に未来永劫、末代までの忠誠を誓います」」」「にゃん」「ワフ」「みゃあ」


 それに対し、弥生は静かに立ち上がる。

 そして応えた。


「世界を治める五龍が中心である黄龍・弥生。私の名においてあなたたちの真価を認めます。今日より龍神に仕える者として誇り高く生きていくことを命じましょう」

「龍神様っ!!」「弥生様っ!!」「五龍様が我々を認めて……うぅぅぅぅぅ……」


 いままで生きる権利すら踏みにじられてきた下級亜人たちは、その言葉に打ち震え、いつまでも、いつまでも涙が止まらなかった。

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


                                         盛り塩

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