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第120話 救済のしじみ汁

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「……お早う御座います、弥生様」

「うぐぉぉおおぉぉぉぉぉ……ちょっと……いま話しかけないで……頭痛い……吐きそう……死にそう……」


 ほどほどに、との忠告を聞かず安酒をがぶ飲みしていた弥生は、案の定ひどい二日酔いで転げ回っていた。

 時刻はお昼前。

 本来、龍族に毒素など効かないはずなのだが『せっかく酒を飲むのなら酔っ払いたい』との万年の想いが、いつしかアルコールにだけは反応してしまうという進化(退化)を実現してしまった。

 その弊害として二日酔いもセットでついてきてしまっているのだ。


「いわんこっちゃないですね……。いましじみ汁をお作りいたしますので、少しお待ちください……」

「ま……まじで? それは助かるぅ~~~~~~~~~………」


 酔いつぶれた弥生たちはみんな地べたで雑魚寝していた。

 亜人たちはまぁ……ともかくとして、龍神たる弥生様までなんたるはしたなさ……と呆れた彭侯ほうこうだったが、そういうところが良いところでもあるので小言は言わずそっと寝かしておいた。

 しじみはその間に城内の市場まで行って仕入れてきたのだ。


「あ……あんた……お金はどうしたの?」

「私の顔を見た途端なぜか騒然となりまして、人っ子一人いなくなったので、よろしいのかと思いもらって帰ってきました」

「おいおい……それ……泥棒じゃん……いたたたた…………おえっぷ」


「襲撃の代償としては安いものでしょう。本来ならば国ごと弥生様に献上するのが筋というものです」

「だからそういうの、興味ないって……あ~~コメカミが死にそう~~~~……」


 亜人たちが使っていたものだろうボコボコに凹んだ味のある大鍋。

 そこに水と砂抜きしたあさりを入れる。


「しじみは旨味成分か強く、水から煮ることで旨味が広がるので出汁を取らなくても美味しい味噌汁ができます。砂抜きはきっちりしてくださいね」


「なるほど……って、いまは細かい話は無理、聞いてらんない……吐き気がするぅ~~~~~~……」


「沸騰したらアクを取り、全部の口が開いたらそこからさらに一分ほど煮立てます」

「ああ~~~~……めっちゃいい匂いしてきた……」


 亜人たちも目を覚まし、鼻をヒクヒクさせながらゾロゾロと鍋の周りに集まってきた。


「最後に味噌とロロたちが作った鯖節、あとセリを刻んで、はい出来上がりです」

「「「「おお~~~~~~っ!???」」」」「ピョン」「ワフ」「にゃあ」「ミー」


 初めて嗅ぐ味噌の香りに亜人たちはみな戸惑い、でもとても美味しそうで興味津々な様子。


「たくさん作りましたからあなたたちもどうぞ。でも最初は弥生様からですよ」

「あんた味噌なんてどこに持ってたのよ?」

「小袋に。なにがあるかわかりませんからね。一通りの調味料と乾物は持ち歩いております」


 ほかほかと湯気の上がった御椀を手渡す。

 受け取った弥生はまずその香りを胸いっぱいに吸い込んだ。


「ああ~~~~~~~~……これこれぇ~~~~……。もうなんかこの香りだけで頭痛が引いていく気がするわぁ~~~~~~~~」


 ほっと気分が落ち着いて、体の力が抜けていく。

 これだけで血管とかその他諸々、固まっていた箇所がほぐれていく感じ。

 体調の悪いときほど味噌の風味がありがたい。

 目をうるませながらそっと一口飲んでみる。

 すると―――――、


「ぬおわひゃはひゃらへらひゃらふひゃらへらぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……ぐふっ!!」


 五臓六腑に染み渡る、どころじゃない。

 駆け抜ける、という表現のほうが当たっている。

 それほどの衝撃が身体を突き抜け、思わず昇天しそうになってしまった。


「う、う、う、う……美味すぎる……。いや、美味いっていうかもう……ありがとうございます……。なんかもう……救けてもらってありがとうございます」


 駆け抜けた成分がアルコールを退治してくれているのがわかる。

 これはもう味がどうのこうのじゃない。

 二日酔い被害者にとって、まさに救世主。

 自然にありがとうの言葉が出ていた。


「実を言うと二日酔いの原因はアセトアルデヒドと言う成分でして、これはアルコールの分解過程で発生する毒性物質で、しじみに含まれるオルニチンがこれを酢酸に分解する手助けをすることにより――――ぐっ!!??」


 すかさず飛んでくる弥生チョップ。

 二日酔い時の授業は普通に拷問なのでこれはしかたがない。


「ほらほら、あんたたちも飲んでみなさいよ。めちゃくちゃ美味しいから。あったかいし、体の全部がほぐれちゃうから」


「そ、そうですピョンか? で、で、で、ではありがたくいただきますピョン」


 頭をスリスリの彭侯から器を受け取って、おそるおそる飲んでみるピョン吉。

 彼は別に二日酔いではなさそうだったが……。


「う……うぴょぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉょぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉょぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉょぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉん……」


 なぜか物凄く感動して大泣きしてしまった。


「こ……こんな美味しいスープ飲んだの初めてだピョン。これは味噌って言うピョンか? ほわっと豆の香りがしてコッテリ豊かで……な、なんだかとっても懐かしい味がするピョ~~~~~ン。初めて食べたのに……なんでなんだピョ~~~~ンうぴょぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉん……」


 日本人としての遺伝子が太古の記憶を残していたのか、なんなのか。

 とにかく味噌の味はピョン吉の心に突き刺さったようである。

 なにをどう表現したらいいかわからず、右往左往しながら泣いていた。

 他の亜人たちもゴクリと喉を鳴らして鍋を凝視している。


 ……これはすぐに足りなくなりそうですね。

 亜人たちを一列に並ばせながらそう苦笑いする彭侯だった。 



お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

連載状況の方はツイッターでもお知らせしておりますので、そちらも合わせてお願い申し上げます。

https://twitter.com/t8XlRA1fFbmAm86


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