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女神からもらった俺の預言が、再翻訳でしか伝わらない!?  作者: 稲荷竜


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12/30

12話

 素直に事情を話す。

 すると、ほどなく軍隊は退くことになったけれど……



「じ、事情はわかりましたけど、次からは気をつけてほしいです……ほんとうに、気をつけてくださいね。あ、危なかったんですから、ほんとうに……」



 オフィーリアからお叱りを受けてしまった。

 どうやら事態は、俺が予想していたよりも切迫していたようだった。



 怒られたノイは、あからさまにしょんぼりしていた。

 彼女は耳と尻尾を垂れさせて。



「……もうしない。反省」



 反省しきった声で、そう言った。

 それで、お開き。


 集合した軍隊は各国へと帰っていく。

 その際に――



「こ、今回、軍隊を動かしたことで各国が多少なりとも混乱していますので、集合しての会議は、少し間をおいてからになると、思います……」



 と、オフィーリアは言っていた。

 ……最初の預言はまだ達成できないらしい。


 それもいいだろう。

 のんびりしよう。


 平和な世界っぽいし。

 このぐらいのゆるさでいいのだろう。




 ○




 三日三晩を半獣の王都で過ごした。

 オフィーリアとともに人間族の王都へ戻る提案もされたが、断ったのだ。


 自分の預言の成果はやっぱり気になるし。

 あと、ノイが『世界一』と褒めまくる彼女の妹にも興味があった。




 結果は、成功だった。




 病気の最中の状態を俺は見ていないが。

 俺は、ベッドしかない簡素な部屋で、植物化していないノイの妹と対面することができた。


 まだ体の調子が戻りきっていないらしく、ノイの妹はベッドから出るまではできなかった。

 それでも元気そうに、姉と会話している姿を見ることができる。



「っていうかさー、お姉ちゃん! またみんなに迷惑かけたんだって?」

「………………そんなこともあるかもしれない」

「もー! お姉ちゃんは後先考えないんだから! 無理しないでって言ったのに!」

「………………無理はしてない」

「嘘。お姉ちゃん、あたしのことだとすぐに無理するんだから」

「…………」

「……ありがとうお姉ちゃん。あたしはもう大丈夫だよ。お姉ちゃんに無理させたぶん、今度はあたしが、がんばるからね」

「…………うん」



 同じ顔をした姉妹は、はにかむように笑い合う。


 ……預言は正しく、人を幸福にした。


 女神から伝えられた言葉をそのまま復唱しているだけだが。

 俺のこなした役割が、目に見える成果を出す。

 そのことがなんだか誇らしい。


 ……まあ。

 女神から伝えられた言葉をそのまま復唱するというのができてるかは、微妙なところだけど。




 ○




 昼。

 オフィーリアのいる、人間族の王都に帰る。


 移動手段は半獣族の馬車だ。

 見送りに来てくれたノイと、王宮の根付近で話をする。



「……預言者どのの扱いについて、実は色々と意見がある」

「意見?」

「……預言書があった人間族の王都に、そのまま預言者どのがいるというのは、『その場のノリ』みたいな、もの。本来はどこの国に預言者どのをとどめておくかは、議論が必要な重要事項」

「そうなのか」

「……そう。だから、いたいなら、半獣の国にいてもいい。世界一の妹もそう言ってる」



 妹が世界一かどうかは、主観によるところが大きいので置いておいて……

 いてもいい。

 その言葉は予想以上に嬉しいものだった。

 でも。



「……とりあえず人間族の街に帰るよ。誘拐みたいなまねでここに来てしまったのは事実だし、このままとどまったら半獣族への反感たまりそうだから」



 いやー、マジで軍隊来るんだもん。

 おどろいたよ。


 おどろいて。

『預言』というものがこの世界でいかにすさまじい意見力を持つのかを、知った。


 自分は重要な存在である。

 ……なんて、すごすぎて実感できない境遇だけれど。

 自分の、というか『預言』の重要度をしっかり把握して動かないと、痛い目みそうだ。


 俺がこのまま半獣族の国にとどまったら、『誘拐したもん勝ち』みたいになりそうだし。

 せっかく平和な世界を混乱させることもあるまい。



「……わかった」



 ノイは無表情でうなずく。

 顔や声には出てないが、尻尾が少し揺れていたし、耳も垂れていた。

 寂しく思ってくれていると判断しても、いいだろうか。


「じゃあ、行くから」

「……わかった」


 ノイが王宮を振り返る。

 それから。



「…………これが、『寂しい』という気持ち?」



 俺に背中を向けたままささやく。


 ……少し後悔。

 やっぱり半獣の国にいればよかったかなという思いが、チラリと働く。

 でも、まあ、いいだろう。

 また遊びに来ることだってできるはずだし。



 俺は馬車に乗りこんで。

 ノイが、馬車のドアのところに来て。

 彼女もまた、俺と同じように、馬車に乗りこんだ。



「……」

「……」



 俺たちはボックスシートの対面に座り、見つめ合う。

 馬車の御者によりドアが閉められ、馬車が動き出した。

 次第に半獣族の王宮である、巨大樹木が遠ざかっていく。


 俺は。

 ようやく、声を出すことができた。



「ノイさん、なぜあなたまで馬車に乗ってるのですか?」

「………………?」

「いや、首をかしげたいのはこっちなんだが……俺、人間族の街に帰るって言ったよね?」

「……言った」

「あなた半獣の国に残らないの?」

「…………だって、預言者どの、わたしと離れると寂しいって」

「言ったけど」

「……だから、ついていく」



 寂しいからついていく。

 一部の隙もない理論のように思えた。

 が。



「国はいいのかよ。あんた半獣の偉い人だろ? っていうかさっき寂しがってたのはなんだ?」

「……国は、妹に任せた。妹と離れるのが、寂しかった」

「ああ、妹さんが『ついていっていいよ』って?」

「…………………………………………」

「ノイさん、俺の目を見て正直に答えなさい。妹さんに許可とったんだよな? あんた半獣の国の偉い人だよな? 妹さんが国の代表になっても、代行で影武者なんだよな? そういう立場の人が国を無断で離れたらけっこうまずいと俺は思うんだけど、そのへん、問題なくクリアして、今、俺と同じ馬車で人間族の街に向かってるんだよな? そうだよな?」

「…………………………考えてなかった」

「後先考えろ!」

「……考えるより、感じたままの方が、うまくいくかな、って」

「感じるな! 考えろ! どうすんだよ!?」

「………………困る」

「俺だって困るわ!」


 なぜ姉のノイが『影武者』とか『代行』で、妹の方が偉い人なのか、気になっていたんだが。

 謎が解けた気がした。


 いや、俺の感覚だとさ。

 普通、姉と妹とか、兄と弟とかだったら、年長者が代表になるべきじゃないかなと思ってたんだよね。

 でも半獣の国は、さも当たり前みたいに妹のが偉い立場にいるじゃん?

 そういう文化の国なのかなと思って、スルーしてたんだけど。


 ようやくわかった。

 妹が国家代表の理由に納得だよ!

 ノイに任せたら国が滅ぶ!


 俺は大きくため息をついた。

 そして、たずねる。


「……馬車を引き返して、国に戻るか?」

「…………いい。妹はきっとわかってくれる。世界一だから」

「本当にいいんだな?」

「…………大丈夫」

「そうまで言うなら、止めないよ」

「……帰ったら怒られるから、いやだし」

「やっぱり引き返せ!」

「やだ」

「子供か!」

「…………子供だにゃあ」

「誤魔化されねえぞ!」



 なんて。

 子供の教育みたいなことをしているうちにも、半獣の国は遠ざかっていく。

 ポイントオブノーリターン。

 引き返すタイミングは逸したようだった。



 かくして半獣の国に拉致された事件は終わる。

 俺は預言者というものの重要性を知って。

 後先考えない系の猫獣人のお供を得た。


 セカンドライフはスタートから色々あったが――

 総合して。

 順調な滑り出しと言っても、いいんじゃないだろうか?

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