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これは君の物語  作者: まぁまぁ
血の夜会事件
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第二十五話 後始末Ⅰ

「魔のモノ」は人を食事として見ており、また特にその悪感情に反応することが分かっている。

妬み、嫉み、殺意、絶望、恐怖、諦め、執着。

そんな感情の流れに反応し、その感情を発する人間を好んで襲い喰らう。

だが、そんな魔が発生するメカニズムは実はよく分かってはいない。

幾星霜もの昔、人がかつてこの大陸を支配していた時に突如「天敵」として現れ、人を襲い始めた。

圧倒的な力の前にただただ狩られるばかりだった。

だが巨大な力を持つ「神獣」が、それより前に人とともに在ったからこそ人は文明を保持しえたのだ。


北のハイウルフ帝国。

それは人が力を合わせて築いた大帝国だ。

だがその大帝国をもってしても常に魔には脅かされ続け、近年では「神獣」と「契約」できるものが減ったために、その傾向は顕著だった。


だがそれであってに魔が結界を破って国内に侵入を果たしたことは帝国建国以来、始めてのことで早急な調査が急務となったのだ。


そのためヴァンハール旗下の騎士団は分散して魔の骸や結界の破損ヶ所など調べる運びとなった。


簡単ではあるが隊を二分し、一個中隊は結界の確認。

もう一隊である副長のマリウス率いる隊はシルヴェストが止めをさした魔軍の残骸を探索。

シルヴェストは一旦、屋敷に帰還し、貴族や皇太子を帰還させる手筈であった。


そしてそれは順調に進んでいた、なぜなら一番厄介だと思っていた貴族たちが、

魔が排除されたと知るや、そそくさと帰って下さったからである。

シルヴェストが思わず「そんなに急がずとも良いでしょうに」と嗤いながら嫌がらせを言うほどに彼等の逃げ足は早かった。

彼等にしてみても脅威が去り、皇太子殿下も何時でも逃げられる段取りとなっているのだから忌まわしい場所に留まる謂れなど無いのであって、その行動は当たり前のことだったのだ。


だが…人が動き出して幾分か経った時に、ヴァンハール伯爵領の庭でつんざめくような悲鳴が響いた。

それを屋敷内で人に指示を飛ばしていたシルヴェストは眉を寄せて舌打ちを零し、聞いていた。


「ったく、何だってンだ」


すばやく端にいたルフィス皇太子に視線を向けると、皇太子は人好きのする笑みを浮かべた。

抱っこしているレクトフィリアの細い手首を持って「いってらっしゃい」とでもいうように数回振る。

レクトはされるがままジッとシルヴェストを見ていて、シルヴェストはハァっとため息を零すと、後ろ髪をクシャッと掻き上げた。


「見てくる」


そして一言二言側に居た、屋敷の家令に指示をし、足早に庭へ向かい、壮麗な2階のダンスホールの窓から庭へ俊敏に飛び降りた。

彼の夜会服がふわりっと揺れる後ろ姿を、やはりレクトフィリアはジッと見つめていた。


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