外の世界は『断片化』だらけ。モーターグレーダーでデフラグします
ダンジョンの最深部から、地上へと続く「管理者専用ポータル」を抜けた俺たち。
だが、そこで目にしたのは、かつて俺が歩いたはずの穏やかな王都の風景ではなかった。
「……何よ、これ。世界が『セクタエラー』を起こしてるみたいじゃない」
リゼが絶句し、手元の端末――今や世界の全ログが見える管理者用コンソール――を叩いた。
視界に広がるのは、魔力のノイズが物理的な歪みとなって現れた、グニャグニャに波打つ大地。
ある場所は隆起し、ある場所は不自然にえぐれ、道としての機能を完全に失っている。
「管理者権限が放置されたせいで、世界の魔力供給が『断片化』しちゃってるのね。データがあちこちに散らばって、地形の読み込みが追いついてないんだわ」
「要するに、ハードディスクの整理不足ってことか。……なら、やることは一つだな」
俺はスキルの光を地表へと放ち、新たな重機を呼び出した。
「重機召喚――【モーターグレーダー】。世界のデフラグを開始する」
現れたのは、長いホイールベースの中央に、巨大な鋼鉄の刃を備えた美しい重機だ。
地面をミリ単位の精度で平らに削り上げる、道路工事のスペシャリスト。
「リゼ、断片化した魔力の座標をマーキングしろ。その歪み、俺が全部平らに削ってやる」
「了解、マスター! 地形データの最適化ルート、一括送信するわ!」
俺は操縦席に座り、いくつものレバーをピアノを弾くような手際で操作した。
中央のブレードが角度を変え、波打つ大地へと突き立てられる。
ギュギュギュギュギュ……ッ!
凄まじいエンジン音と共に、モーターグレーダーが荒野を疾走する。
不自然に隆起していた岩盤が、ブレードに削り取られて魔法の塵へと変わり、えぐれていた穴へと吸い込まれていく。
俺が通り過ぎた後には、まるで定規で引いたような、真っ直ぐで完璧にフラットな「道」が残された。
『うおおお、見てるだけでスッキリする整地作業!』
『「世界のデフラグ」って表現、しっくりきすぎるww』
『同接八十万人突破! 管理者になった主、もうやりたい放題だな!』
配信画面には、カオスだった世界が、幾何学的な美しさを持って再構築されていく映像が流れていた。
整地が進むにつれ、重機の振動が大地を通じて世界の「基板」へと伝わり、滞っていた魔力の流れが劇的にスムーズになっていく。
「……地形の読み込み速度、爆速になったわ! マスター、そのまま王都までこの『高速道路』を繋げちゃって!」
「ああ、工期は最短で終わらせる。……誰にも邪魔させないって言ったからな」
だが、俺たちが「デフラグ」を進めるその先。
新しく平らになった地面に、巨大な影が差した。
それは、世界の管理者交代を検知して「外部ネットワーク」からやってきた、この世界の『外側のルール』を知る異世界の訪問者たちだった。
「……ふぅ。現場の安全確認、ヨシッ。……さて、リゼ。招かれざる『ゲスト』のお出ましだぜ」




